2017年3月22日 更新

被災地に咲く水仙への想い|東日本大震災での絶望と希望

東日本大震災の被災地に咲く希望の花「水仙」。全国から集められた水仙の球根を、特別な想いで届けてくれた柳生真吾さんのスイセンプロジェクト。このプロジェクトに参加した体験をもとに、水仙が結んだ花の縁を紹介します。

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大津波に襲われた被災地に咲く水仙

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2011年3月11日、東日本大震災により、筆者が住んでいた岩手県大船渡市も大きな被害を受けました。被災した当時は、あまりにも変わり果てた町の姿に、言葉を失い愕然としたのを記憶しています。

「これからどうすれば良いのだろうか」「もとの生活に戻れるのだろうか」そんな思いとは裏腹に、どうしようもない日々だけが過ぎ去っていくばかり。大津波でなぎ倒された桜の木がもの悲しげに見え、その枝についた蕾が膨らみ始めていたことにさえ気付かず、ただただ虚しく避難所での生活が続いていました。

ガーデニング好きの目に映る景色は灰色

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自宅周辺はほぼ壊滅状態。ガーデニングが大好きで、種蒔きから育苗まで手掛けていた筆者にとって、ほとんどの苗が津波で流されたこともショックでした。幸いなことに、我が家は半壊で済みましたが、その片付けには途方もない労力と時間がかかりました。目に映る景色も、まさに灰色だったような気がします。

全ての気力を奪うような大惨事だったにもかかわらず、崩れ落ちた家屋の下からは、鮮やかな黄色の水仙が凛と咲いていました。この水仙の健気な姿を目にしたときは、本当にとても不思議な気持ちでした。

「あの大津波にも負けずに咲いている」
当時を振り返ってみると、被災された多くの人たちも、同じように感じたそうです。

水仙の姿に勇気をもらう

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花には、言葉では表現しきれない「力」が秘められていると、ガーデニングを始めた頃から感じていました。どんなに辛い環境でも、時期が来れば周囲にかまうことなく咲く。そんな姿には、とても勇気をもらいます。被災地に咲く水仙は、まさにその象徴のようなものでした。

そして、そんな気持ちが届くかのように、柳生さんが動き始めます。全国の花好きさんの気持ちと、柳生さんの熱意がリンクされた瞬間だったのかもしれません。まさかあんなに多くの水仙の球根が届くなど、その当時は想像もしていませんでした。

柳生真吾さんとスイセンプロジェクト

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柳生真吾さんのことは、ガーデニングが好きな人なら皆さんご存知でしょう。NHKの趣味の園芸でもおなじみの有名な園芸家さんです。柳生さんの熱意で動き出したスイセンプロジェクトは、東日本大震災で希望を失いかけたたくさんの人々に、多くの勇気を届けてくれました。筆者も、その一人です。

参考ページ:【八ヶ岳俱楽部】
http://www.yatsugatake-club.com/cgi-bin/dayori/20110417222944&cateno3=1-020.html

我が家のように重機が入ってこない地区の瓦礫撤去は、手作業での片付けでしたので、とてもとても気が遠くなるような日々。そんな毎日を過ごしていると、「誰かが自分たちのために何かをしようとしてくれている」など、思い描いている余裕もなかったのです。

いつ電気が復旧するのか?いつ水道が復旧するのか?そんなことばかり考えて毎日を過ごしていると、どんなにガーデニングが大好きだったとしても、気分が擦れてきていました。そのことに気が付くと、ますます自分に嫌気が指し、どうしても前向きになれず絶望感が増すばかり。

震災の影響からなのか、「もうガーデニングなんかやめよう」そんな気持ちにさえなったことを、今でも覚えています。でも、柳生さんのスイセンプロジェクトは、そんな気持ちを察するかのようなタイミングで、筆者を奮い立たせることになりました。

花が好きだったことがきっかけで繋がったご縁、まさに「奇跡」だと今でも感じています。

柳生さんとの初めての会話

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柳生さんと初めてお会いしたのは、2011年11月1日に釜石市の甲子仮設で行われた、テレビ岩手「5きげんテレビ」&「スイセンプロジェクト」での球根を植えるボランティア活動でした。震災前からお世話になっているガーデニングの先輩たちからのご支援もあり、少しずつ元気を取り戻していた頃、タイミングよく参加させてもらったのです。

参考ページ:【Green Fields】
http://g-fields.blogspot.jp/2011/10/5.html

釜石市と大船渡市は隣接していましたし、仮設住宅の人たちと一緒に球根を植える作業は、ボランティア活動とは言え、なんだかとても前向きな気持ちになれて励まされました。もともと、花壇ではない場所の土を掘り起こし、それから水仙の球根を植える作業は、皆さんなかなか骨が折れたと思います。

全国の花好きさんが、ご自宅のお庭から掘り起こして送ってくださった大切な水仙の球根を、被災された人たちが、それぞれの思いで丁寧に丁寧に植えていきました。被災地に届けられるまでの真心は、遠く離れた地であっても「確かに伝わっている」と感じられながらの作業でした。

「来年の春、元気に咲いてくれますように」そんな思いで夢中になって球根を植え進めていると、たまたま隣に来た柳生さんが声をかけてくれたのです。

「この近くに住んでいたの?」

ちょっとビックリしましたが、「いいえ、隣の大船渡市から来ました」と答えると、「ご自宅は大丈夫だった?」と聞かれたので、「半壊でした」と答えました。すると、まっすぐこちらを向いて「そうか」とだけ言い、深くうなずいていたのがとても印象的でした。

寒い日でしたね、柳生さん。秋刀魚が豊富に獲れる三陸でも、あまり食べたことがない珍しいレシピでしたが、参加した人たちと一緒に食べた「秋刀魚パエリア」は美味しかったですか?
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