2017年10月4日 更新

秋の七草で古き日本の風情を楽しもう

日本で古くから愛されてきた秋の七草。現代の花と比べると決して派手さはありませんが、どこか心に染み入るものがありますよね。万葉集から当時の日本の秋の風情を読み解いていきましょう。

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秋の七草とは?

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日本の秋を感じるものとして古くから愛されてきた秋の七草。今回はその秋の七草を通して古(いにしえ)の秋の風情とはどんなものだったかを考えてみたいと思います。

そもそも秋の七草とはどんな植物で、いつごろから言われ始めたのでしょうか?一番古い記述と思われるものが万葉集にあります。

秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花 ・・・ 万葉集 巻8 1537 

山上憶良が詠んだ有名な歌ですね。秋の野原に咲いている花を指折り数えてみれば7種類の花があるという内容で、これが秋の七草の始まりなんです。

ではその7種類の花とは何なのでしょうか?これについても山上憶良が詠んでいます。

萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花 ・・・ 万葉集 巻8 1538

すなわち、萩の花、尾花、葛の花、ナデシコの花、オミナエシ、フジバカマ、朝顔の花ということなんです。尾花というのは今で言うススキですね。最後の朝顔の花というのは、今のアサガオではなく桔梗です。同じ名前なのに現代とこの歌が詠まれた奈良時代初期とでは全く違う植物をさすというのは驚きですね。

春の七草との違い

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一般的には七草と言えば、秋の七草よりは春の七草が頭に浮かんでくる人の方が多いんじゃないでしょうか?

春の七草も非常に歴史が古いものです。記録に残っているものでは、室町時代に左大臣、四辻善成が書いた源氏物語の注釈書「河海抄(かかいしょう」の中で「せりなずな 御形はこべら 仏の座 すずなすずしろ これぞ七草」と詠んでいるものがあります。七草とはセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(大根)だということですね。

春の七草と言えば、七草粥!正月7日にその年の無病息災を祈って七草粥を食べる習慣は現在でも年中行事として残ってますが、元々は平安時代に貴族の間で始まったもの。それが江戸時代になって一般民衆に広まったとか。

一方で秋の七草はどうでしょうか?そもそも秋の七草の七草粥なんて聞いたことがありません。実際に萩は茎が固くて噛み切れないですし、ススキの葉は口の中を切ります。かろうじて葛は食用に適してますが、ナデシコはカワラナデシコなら大丈夫ですが他の品種は有毒です。オミナエシは臭いがきつく、フジバカマとキキョウも有毒成分を含みます。とても七草粥なんて作れるものじゃないです。

万葉集に見る秋の七草の世界観

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食のためとか年中行事ではないとすると秋の七草とは何のためのものなのでしょうか?

それは最初に紹介した歌「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花」の中に込められていると思うんです。この歌、なんとなく秋の野に出て見つけた花々に心が高揚している様子が見えてきませんか?

何故心が高揚するんでしょう?それには先ず秋の七草の花々が一斉に咲く時期というものを調べる必要があります。

秋の七草の全てが咲き揃う時期を調べてみると9月下旬~10月いっぱいとなるみたいですね。最近の研究では奈良時代や平安時代は、現代以上に気温が高かったようなんです。実際、当時の貴族の家は柱だけで壁がありませんでした。なのでひょっとしたら10月に入ってから11月の初頭ぐらいの間だったかもしれませんね。通常、立冬が現代の暦で11月8日頃。感じとしては冬になる直前に一斉に咲いているんでしょうか?

その時期ともなれば朝晩も冷え込み、やがてやって来る厳しい冬の足音が聞こえてきます。そんな時期に見た野の花たち。現代の花と比べると決して派手さはありませんが、山上憶良を始めとする当時の人達は、ひっそりと咲く花々の無垢な姿に心に染み入る何かを感じたのではないでしょうか?

それでは秋の七草の一つ一つの花を歌を交えながら見ていきましょう。

萩の花

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マメ科の落葉低木であるハギは、初夏から10月いっぱい赤紫色の小さな蝶形花をたくさんつける植物です。野山などで比較的簡単に見られます。


さ雄鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまで置ける白露 ・・・ 万葉集 巻8 1598

明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ ・・・ 万葉集 巻8 1557

秋萩の咲たる野辺にさを鹿は散らまく惜しみ鳴き行くものを ・・・ 万葉集 巻10 2155


さすが山上憶良が一番最初に持ってきた植物だけあって万葉集では秋の七草の中で萩を詠んだ歌が断トツで多く、その数は何と142首!花の最盛期が収穫の時期と重なることから豊穣の秋を思い起こさせる植物として、また女性を表すものとして人恋しさや、露や月などともに美しくてどことなく寂しげな秋の風情をより引き立てるものとして歌に詠まれています。

尾花

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