2017年3月22日 更新

美しい緑豊かな田園風景の中で生活した子供がつけた【3つの足跡】の話

田舎で育った子供の行動や気持ち。自分の歴史にしっかりと足跡を残します

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美しい緑豊かな田園風景の中で生活した子供がつけた【3つの足跡】の話

○○に足跡を残す。なにかに業績として貢献した時に、使われる言葉ですね。

ここでは、自分の歴史に3つの足跡を残した小学生の話をします。田舎で育った小学生の行動。それにともなう気持を、赤裸々につづります。田舎の子供は、虫や葉っぱや土で遊んで鼻をほじっているだけじゃないのです。
Free photo: Grasshopper, Animal, Insects, Trees - Free Image on Pixabay - 1505079 (380)

ロケーション

のどかな田園風景が広がり、春から夏にかけては、ケロケロと可愛いカエルの合唱が聞こえてくる緑豊かな土地柄にある、一軒家です。サラリーマンの4人家族。家のそばをローカルな電車が通ります。

線路沿いには、春にはつくし・菜の花・たんぽぽなどなどが咲き誇り、秋の夜空には月がくっきり輝きます。主人公は、土に住む生物・カエル・ダンゴムシ・かまきり・トカゲはお友達!の子供です。

足跡その1

小学生の登校の時間帯、線路の隣にある畑に、いつも一人で作業しているおじいさんがいました。大根や葉物・ネギなど綺麗な「うね」の列を作って育てていました。朝は暑くても寒くても7時30分ごろには畑にいるのです。下校の時にもいつもいて、黙々と何か作業をしていました。

一応、先生に言われた通り「おはようございます。」とあいさつすると、「おう。」とか言ってくれたり、くれなかったり、朝はそのおじいさんを確認してから登校する毎日でした。

その線路わきのおじいさんの畑の横の農道をはさんで、大きな田んぼがあり、そこは機械で全ての作業をしている様子でした。家族経営なのか、あっという間に田植えや草取り、稲刈りなど効率よく済ませています。

秋に稲の収穫が終わると、田んぼに綺麗な「おだがけ」が出来上がり、子供ながらにその景色を「校長室の前にかざってある(ミレーの落穂ひろいの)絵と似てるじゃん!すごい綺麗!」と毎年感動して見ていました。

「おだがけ」が出来上がり1か月くらいすると、田んぼには金色に輝くきれいな円錐形の山が置かれるのです。
その正体は…?
たい肥だったのです。

山が出来て、何日間かあたり一帯に漂うあの香りが、この円錐形の金色の山から発せられていたことを後になって知ることとなります。

ある日、友達との約束がなく、宿題もかた付けて暇な時間が出来た時…。無性にあの山が気になって外に出てみました。細い砂利道の農道を、乗れるようになったばかりの自転車を走らせ線路のわきまで来てみると…いつもいる畑のおじいさんは居ませんでした。

「よおし!」と思いました。あたりを見回しても人影はありません。人の敷地に入ってはいけないことは知っています。危険を犯してあの綺麗な円錐形の山に近づきました。
どうしても気になるのです。

※山が出来てから何日もたっているので、表面は乾燥して固まっていて香りは感じませんでした。

なんのためにここに置かれているのだろうか?この山の正体を確かめてみたくなりました。小枝でつついてみても「ポキッ」と折れてしまうし、小学校の白いバレーシューズでちょっと踏んづけてみても少ししかへこみません。

その日は見つかったら大変!という気持ちがあり、そこまでで止めて急いで家に帰りました。

何日か経ち、友達との約束もなく、今日は下校の時あの畑のおじいさんも見かけなかった…。
私は、おやつもそこそこに田んぼに到着して、この前の時の様に周りの人影を確認しつつ綺麗な円錐形の山に近づきました。

そこで、先日確認済みの山の硬さを超える力で、綺麗な山をぐっと踏み込んでみました。ひざを曲げて思いっきり踏み込んだその瞬間、中はふわっとやわらかく、バレーシューズはかなり奥までめり込みました。靴が脱げました。

同時に強烈に匂ってきたあの香り…。

この時「たい肥」だと知ったのです。
私は自分がとんでもない事をしてしまったのに気が付きました。
…そして「たい肥」にめりこんだ靴。

目的を達成した感動は無く、どうしよう?くつ怒られる。だけど証拠を残して帰れない。の2つの証拠隠滅・罪の重さがのしかかってきました。

結局どうしたか?

もう一度ぬげたバレーシューズに足を入れ「ぶちゅっ」という音とともに靴を黄金の山から抜きだしたのです。

「物」がしたたり落ちました。

家までの農道はとがった砂利が敷いてあります。車のタイヤのあとの平らな部分を見つけながら、はだしでぴょこぴょこ歩いて帰路につきました。

片手には強烈に香る茶色のバレーシューズを持って。

靴あと残るその山をわき目に、もう、絶対に、田んぼの中に出来るあの山には足跡を付けてはいけないのだという秘密が、心に刻み込まれました。

黄金色の山の正体も知りました。心に一つの知識を蓄えたことに満足感もあり、罪悪感もあり、その山が無くなるまで(※田んぼにまかれるまで)、登下校のたびに複雑な気持ちの何日かを過ごしました。

足跡その2

Free photo: Footprint, Tracks In The Sand - Free Image on Pixabay - 762244 (402)

農家の方の芸術性にはいつも感嘆しています。

綺麗な「おだがけ」を作ることや、効率よく作業するための工夫が地面の上に表現されていて、その芸術性の高さに尊敬の念を持っています。

まさしくアートです。

機械化が進んで美しさも一様になっていますが、その無駄のない美しさに見とれてしまいます。
線路のわきの畑のおじいさんの畑にもそれを感じていて、子供ながらに「きれい!すごいな!」と思っていました。

ある日、農道がアスファルトに舗装されました。それにより、おじいさんの畑と農道の間に30センチほどのすき間が出来てしまったようでした。

ある日、登校の時間にそのすき間が綺麗なグレーのコンクリートで埋められているのを発見しました。左官作業も得意なようで、見事に美しく滑らかに仕上がっています。つるんとむき卵のような表面です。

私はそれを見て…。

友達との約束をなしにして、夕方、一目散に帰ってきました。

そして、あたりを見回しバレーシューズでためらいもなく、ぐぐっと踏み込んでみました…。

この感触は前にも…?

わたしはなぜ、綺麗な物に足跡を残したくなるんだろう?その足跡は、自転車で通っていた高校を卒業して家を出るまで毎日見ることとなりました。

※おじいさん、ごめんなさい。やってしまいました。

足跡その3

Free photo: Cosmos Field, Cosmos Wind - Free Image on Pixabay - 950004 (381)

実家の裏庭が200坪ほどの空き地で、父が趣味で大きな鳥小屋を建てて、そこで孔雀や金鶏鳥・銀鶏鳥など珍しい鳥を育てていました。孔雀のエメラルドグリーンの羽や、金鶏鳥のゴールドに輝くとさかは見応えがあります。

これらの種類の鳥は、珍しい鳥らしく、鳴き声も珍しいのです。
「くえーっっ!」とよく通る大きな声で朝夜鳴くのです。

その鳴き声はとても奇妙で、あたり一帯に響きわたります。田んぼをはさんだ向こう側の家の同じクラスの男の子に「くえーっっ。」と山のこだまのように真似をされて、いつも複雑な思いでした。

※孔雀が羽を広げたところは、玉虫色の模様が中国の偉い人が着ている洋服の刺繍の様でとても美しく綺麗です。

その鳥小屋を囲むように、毎年コスモスの花が咲くのです。

はじめは、白・ピンク・赤の3種類の色が咲いていましたが、毎年白・赤の色が減っていって、何年かたつと中間色のピンク色ばかりの花畑になりました。繊細な茎が長く伸び、風でゆらゆらする花の高さは背丈をゆうに超えていたと思います。

そのコスモス畑の向こうに、一本の細い川が流れていました。

川と言っても、生活排水を放流したり、農業用水路として使っていたのかもしれません。舗装はされておらず、泥で出来た溝に深さ50センチぐらいの水っぽい物がゆっくり流れている感じでした。

大きくてきれいなコスモスをかき分け、花畑を通り抜けると出てくる小川だと思っていました。

ある日、4歳違いの姉と珍しく一緒に遊んでいました。
小川のそばまで来ました。姉はいつも私の見張り役で、私が無謀なことをするといつも自分が怒られることを心得ているので、私の行動に目を光らせています。私もそれを知っていて一緒の時はいい子でいました。

4歳も年が離れていると、身長もだいぶ違います。
姉はけっして無理な挑戦をしないのに、その時はためらいもなくその川を「ぴょ~ん」と飛び越えたのです。

そして、「玲ちゃんもおいで!」(※私の名前は玲子)と、言うではないですか!

私は自分が姉に認められて、飛ぶという責任を任せられたことにうれしさでいっぱいになりました。何のためらいもなく同じ様に「ぴょ~ん」と飛びました。

…失敗です。

浮かれた私は、足のコンパスの長さが違うことに、全く気が付きませんでした。
反対側の土手に足を滑らせ、よろけて見事に小川だと思っていた「どぶ」に片足がのめり込んでしまいました。

なんだかおかしくて、ゲラゲラ笑った記憶があります。それは、今日の失敗は姉も関与していることなので、安心していたのかもしれません。
のめり込んだ足を引き抜くために、差し出してくれた姉の手は、暖かくて大きなものでした。

姉はけっして人の失敗をゲラゲラ笑うこともなく、慈悲深く対処してくれたのです。この時、わたしは姉に尊敬の念を持ったのでした。

はまった足の先に履いていたバレーシューズは、やはりのめり込んで脱げたので、もう一度、足跡の穴に足をすべらせ、靴を救出!
「ぶちゅっ。」という音を立てて。
振り返ると、かなり深い足の形の穴が…。

靴を引き抜いたこの時、あたりに漂った香りでこの小川が「どぶ」だということに気が付いたのです。姉に手を引かれ、ぴょこぴょこ歩いて大きなピンクのコスモス畑をかきわけて家に帰りました。
片手にはべっとりこげ茶色の香り付きバレーシューズを持って。

小川と呼んでいた「どぶ」の足跡はその時以来確認していません。その後コンクリートで舗装されたようです。横のあぜ道は犬の散歩をする方が通ります。穴を見つけて「子供が落ちた危険。」と農業委員会に通報してくれたのでしょうか?

3つの事件で、結局、私は誰からも怒られることはありませんでした。
Free photo: Cosmos, Autumn, Tabitha - Free Image on Pixabay - 950003 (382)

大人になって思うこと

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