2017年10月4日 更新

秋の七草で古き日本の風情を楽しもう

日本で古くから愛されてきた秋の七草。現代の花と比べると決して派手さはありませんが、どこか心に染み入るものがありますよね。万葉集から当時の日本の秋の風情を読み解いていきましょう。

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尾花とはススキのことです。これは今でも野原でよく見られるイネ科の多年草ですね。お月見には欠かせない植物という印象です。


人皆は萩を秋と言ふよし我れは尾花が末を秋とは言はむ ・・・ 万葉集 巻10 2110

秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも ・・・ 万葉集 巻10 2242

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ ・・・ 万葉集 巻10 2270


ススキは万葉集では尾花のほかに「花すすき」「草(かや)」「み草」という言葉で詠まれています。風にそよぐ様子に秋を感じてるのは今も変わりませんね。これは幽玄さや侘び寂びの世界にも繋がっています。

葛花

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葛花とはクズのこと。マメ科のつる性の多年草です。非常に繁殖力が強い植物で、放っておくと野山の平地や木々がクズで覆い尽くすされてしまうほど。古くからクズの根から葛粉を取ったり葛根という生薬を作ったりしていました。夏から秋にかけて房状の花が咲き、香りもいいです。クズという名前は大和国の国栖(くず)から来たとか。


真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る ・・・ 万葉集 巻10 2096

我が宿の葛葉日に異に色づきぬ来まさぬ君は何心ぞも ・・・ 万葉集 巻10 2295


万葉集では一面のクズの葉が風で裏返った様子が白波のようだとか、葉が紅葉していく様子などが綴られてます。厄介な面もある植物ですが、古の人々は一面に広がったクズの葉に美を見いだし風情を感じたんですね。

なでしこの花

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秋の七草のなでしこは、当時から日本に自生していたカワラナデシコだと推測されます。ナデシコ科の多年草で、夏から秋にかけてが花の時期。ピンクや白の花があり、花びらの先端に細かく切れ込みがあるのが特徴です。


秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑしやどのなでしこ咲きにけるかも ・・・ 万葉集 巻3 464

なでしこが花見るごとに娘子らが笑まひのにほひ思ほゆるかも ・・・ 万葉集 巻18 4114


万葉集の後の時代である平安時代には「大和撫子」なる言葉が出てきているくらいですから、なでしこの花がそのまま愛する人(女性・女の子)のイメージなのでしょうか?花とともに思いを綴った歌が多いです。

をみなへし

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をみなえしはオミナエシのこと。オミナエシ科の多年草です。私が子どもの頃は日当たりのいい野原で本当によく見かけましたが、最近は数が減ってきているようです。全草を乾燥させたものや花を乾燥させたものを生薬として使います。


我が里に今咲く花のをみなへし堪へぬ心になほ恋ひにけり ・・・ 万葉集 巻10 2279

をみなへし咲きたる野辺を行き廻り君を思ひ出た廻り来ぬ ・・・ 万葉集 巻17 3944


をみなえしは万葉集の原文にはいずれもをみなえしという読みで「佳人部為」「美人部師」などとも表記されています。きっと美しい女性の代名詞だったんでしょうね。想いを寄せる女性になぞらえて詠んだ歌が目立ちます。

藤袴

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フジバカマはキク科の多年草です。夏から秋にかけて薄いピンク~藤色の花を咲かせます。この植物はアルカロイド系の毒を持ちますが乾燥させると香りがいいことから、焚いて衣服に香りを付けたり匂い袋にして利用していました。


なに人か来てぬぎかけし藤袴来る秋ごとに野辺をにほはす ・・・ 古今和歌集

秋風にほころびぬらし藤袴つづりさせてふきりぎりす鳴く ・・・ 古今和歌集


藤袴を詠った歌は、万葉集には冒頭で紹介した2首しかありませんが、平安時代になると藤袴の香りからそれを身にまとっていた女性を連想する歌が数多く出てきます。藤袴は、秋の香りであり、その香りは愛しい人の香りだという流れですね。そこはかとない想いが伝わってきます。

朝顔の花

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