2018年10月1日 更新

イングリッシュガーデンを巡る旅 ~ヒドコート・マナー・ガーデン Vol.2 ~

数ある英国の庭園の中でも、世界中の園芸ファンにその名を知られており、かつ人気の高いガーデンのひとつである、ヒドコート・マナー・ガーデン。裕福なアメリカ人、ローレンス・ジョンストンが1代で築き上げ、現在ではナショナル・トラストが管理するこの庭の歴史と魅力をレポートします!

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『ROOM』ととけ合う風景

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ヒドコート・マナー・ガーデンの特徴である『ROOM』は、垣根や石壁などを壁代わりに利用して区切り、ひとつひとつの部屋のように造られています。

『ROOM』の壁、つまり垣根や壁の向こう側に見える景色や、次の『ROOM』への入り口から見える風景は、訪れた人々に次の庭はどのようなものかを想像させる見せ方です。

これは優れたアート作品と同じように、鑑賞する人にも想像力を奮起させる、非常に芸術的な庭のつくり方と言えるでしょう。

ヒドコート・マナー・ガーデンは、その広大なひとつの庭園の中に、いくつものビジョンを持つ小さな庭があちこちに点在しています。

そしてそれぞれの『ROOM』が空や大地の景色ととけ合い、そのひとつひとつが見る人を触発し、驚かせ、また感嘆させてくれるのです。
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ローレンス・ジョンストンの庭造りは家から庭に向かって進められており、まず主要な散歩道と、その周りを彩る景色を描き出すことからスタートしています。

彼はデザインと植栽ができるだけ左右対称になることに注意していました。これによって花の咲く季節によってその風景がしだいに変化していく様を現実にすることができました。

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ローレンス・ジョンストンはまるで優れた画家のように、理想の風景を頭に思い浮かべることのできる芸術家であり、それを実現させる才能がありました。

それはおそらく、若い頃に母とともにヨーロッパを旅行したときに見た風景から、そして彼が1914年以前にイタリア北部に滞在した際に見た景色から得た着想ではないかと推測されています。

というのも、この美しく整えられたレイアウトはイタリアのルネッサンス式庭園の伝統を感じさせるものであり、彼はイタリア式庭園をイギリスでつくり上げることが夢だったのだろう、と言われています。

ローレンス・ジョンストンが庭園について書き残したものがないために、この推測は想像の域を出ませんが、仮に本当のものだとするとその理想は実現され、いまの時代でも見る人々を魅了してやまない作品として残されています。

当時のヒドコート・マナー・ガーデンの評価

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ローレンス・ジョンストンのそのシャイで人見知りの性格からなのか、当時のヒドコート・マナー・ガーデンは、園芸家にしかその存在を知られていませんでした。

彼は慈善事業のため年に2~3回ほどガーデンを公開していたそうですが、そのことをあまり歓迎してはいなかったようです。彼のあまり人づき合いを好まない性格からすると、それは当然のことであったのかもしれません。

彼が庭造りを始めて20年もの年月が過ぎた1930年、『カントリー・ライフ』誌にヒドコート・マナー・ガーデンについての記事が2度にわたり掲載されました。

そこでは『並外れて優れた庭園 ー 20年も前にこの完璧なレイアウトを完成させており、それは今もなお、素晴らしい状態で維持されている。』と絶賛されています。

また、1934年には当時の著名なガーデンデザイナーであったラッセル・ペイジがラジオ放送でこの庭園について、『この場所は他のどの庭よりも私を魅了した……ジョンストンはマナーハウスの庭園のレベルを超え、大胆かつ予想もつかない植栽法を用いて庭を完成させた』と褒めたたえています。

ナショナル・トラストの管理下へ

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1930年代には一般の人々にもその存在を知られるようになってきたヒドコート・マナー・ガーデンですが、1922年よりヘッド・ガーデナーとしてローレンス・ジョンストンとともにガーデンを造り上げてきたフランク・アダムズが1939年に亡くなります。

その影響もあるのか、あるいはほぼガーデンが完成したためなのか、1940年代にはジョンストンのヒドコートでの庭造りの時間は少しずつ減っていきました。

ローレンス・ジョンストンは、年老いた母が過ごすために南フランスに購入したセール・ド・ラ・マドンヌの荘園で過ごす時間が長くなり、1943年にはヒドコートを売りに出す決心をします。

1948年にはジョンストンは南フランスへ移住、ヒドコート・マナー・ガーデンはナショナル・トラストの管理で運営されることになりました。
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この記事を書いたひと

Hazuki Akiyoshi Hazuki Akiyoshi