2017年10月16日 更新

イングリッシュ・ガーデンを巡る旅~スモールハイス・プレイスを訪ねて~

魅力的なガーデンが数多く点在するケント州。ここにあまり名は知られていないけれど、小さく素朴なガーデンを楽しめる、スモールハイス・プレイスがあります。英国を代表する女優であったエレン・テリーの生涯と、味わい深い彼女の自宅やシアター、そしてガーデンをレポートします!

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スモールハイス・プレイスとは

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スモールハイス・プレイスは、ケント州テンダーデンに位置しています。
この家の持ち主であった当時の英国を代表する女優、エレン・テリーが晩年を過ごした自宅はかつて、『ポート・ハウス』と呼ばれていました。

これはスモールハイスが、イースト・サセックスとケントを流れる約35マイル(約56キロ)の川であった、リバー・ローザの前方に位置し、ここに非常に繁栄していた造船所があった事が由来しています。

スモールハイスのハイス(Hythe)は古い英語で、『上陸する場所』という意味だそうです。
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最初にスモールハイス・プレイスを見て驚くのは、長い歴史を思わせる木造の建物と、その歪んで(?)いるかのような家の造り。

家の周囲にはナチュラルさいっぱいの花壇が取り囲み、壁につるバラが優しく可憐に這わせてある穏やかな風情はとても素敵です。

ガーデンとともに自宅内部も一般公開されており、エレン・テリーにまつわる展示物を見ることが出来ます。

建物内部に入ると思ったよりも小さく感じられる事にびっくり。
天井は低く、また床はギシギシと音を立て、この家が古い歴史を持ち、造られてから随分と時間を経ている事が分かります。

このスモールハイス・プレイスは、1947年よりナショナル・トラストが管理しており、建物は1950年5月、イングリッシュ・ヘリテッジによりグレードⅡに指定されています。

造船業としてのスモールハイスの歴史

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スモールハイスは今でこそ穏やかな農業地帯としての風景を眺める事が出来ますが、かつてはテンダーデン、そしてライを繋ぐ重要な通路であった川、リバー・ローザがありました。

スモールハイスは、200人ほどのコミュニティとして発展し、彼らの殆どは造船業についていたそうです。

1410年にヘンリー4世のために100トンの船『マリー号』が造られ、そして1414年には1000トンを超える船『ジーザス号』がヘンリー5世によって造船が命じられています。

15世紀を通して、スモールハイスは成功した造船所としてあり続けましたが、16世紀になるとリバー・ローザの川底は泥でいっぱいになり、また、その他の地域でも新たな造船所が造られた事もあり、景気は陰りを見せ始めます。
Free photo: River, Boat, Water, Wooden Boat - Free Image on Pixabay - 2146747 (6404)

最後に作られた大型船は、1546年、ヘンリー8世の命によって造られた『グレイト・ギャリオン号』となりました。

その後、1636年、大型台風がリバー・ローザの上流にあったダムを破壊し、主流の川の流れは水路が逆戻りしてしまいます。

それでも鉄や木材で出来た貨物のための通路として使われていたリバー・ローザは、増え続ける沈泥のために、大きなものはスモールハイスまで辿り着く事は出来なくなりました。

その結果、港や造船所としての活気は衰え、18世紀の終わりには、小さな船だけが航行するようになったのです。
そして20世紀の初めを最後に、海からスモールハイスへの船での航行は終わりを告げました。

恋愛と演劇、ふたつの世界を情熱的に生きた、エレン・テリーの生涯

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1899年にこの家屋を購入し、その後亡くなる1928年までこの家に住み続け、死後にメモリアル・ミュージアムとして今も公開されているスモールハイス・プレイスの最後の住人、エレン・テリーはヴィクトリア朝を代表する女優として知られています。
本名デイム・アリス・エレン・テリー、通称エレン・テリーは、1847年、イギリスはコベントリー出身。

両親はともに喜劇俳優であり、11人いた兄弟・姉妹のうち5人は俳優に、そして2人は劇場の経営に携わったという演劇一家に生まれています。
エレンが9歳、1856年にロンドンのプリンセス・シアターにて行われたシェイクスピアの『冬物語』のマミリアス役でデビュー。その後も数々の舞台で活躍し続ける、女優としての人生が始まります。
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この記事を書いたひと

Hazuki Akiyoshi Hazuki Akiyoshi