2019年1月31日 更新

イングリッシュガーデンを巡る旅 ~ パラム・ハウス&ガーデンズ Vol.1 ~

パラム・ハウス&ガーデンズは、ロンドンからも日帰りで行くことのできる場所、イギリス南東部のウェスト・サセックスにあります。広大な敷地に佇むエリザベス朝の大邸宅と美術館レベルのさまざまなコレクション、そして魅力にあふれたガーデン。今回はこの歴史あるパラム・ハウス&ガーデンズについてレポートをお届けします!

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のちに8代目男爵となったセシル・ビショップは彼の母が血を引いているという理由で、子息がいないためになくなってしまいそうであったズーチ家の男爵の爵位を受け継ぎ、12代ズーチ男爵となりました。

その後の1922年、第17代男爵夫人となったメアリーにより、パラム・ハウスとその当時の敷地3,733エーカーが売りに出されました。

そして実業家であったクライヴ・ピアソンが当時の価格20万ポンドで邸宅と土地を手に入れることとなったのです。

現在のオーナー一族、ピアソン家へ

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1922年にパラム・ハウスとその敷地を購入したクライヴ・ピアソンは、サセックス郡の第1コードレイ子爵であるウィートマン・ディキンソン・ピアソンの次男でした。

彼は父が持っていた世界中に顧客を持つ土木工事会社を継いで会長となり、1936年から1947年にかけては現在のブリティッシュ・エアウェイズの前身、BOAC(ブリティッシュ・オーバーシーズ・エアウェイズ・コーポレーション)の会長を務めています。

さらに、英国の列車運行会社、サザン・レイルウェイズの取締役も務めた経歴を持つ、才知にたけた大富豪のビジネスマンでした。
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クライヴ・ピアソンは1915年に結婚したアリシアとともにパラム・ハウスとその敷地を購入しました。

しかしこの地に320年を超える期間住んでいたビショップ家により邸宅の改装が幾度も行われていたにも関わらず、当時のパラム・ハウスには排水路もなく電気も通っておらず、屋根からは雨水が漏れているありさまでした。

夫妻は老朽化していたパラム・ハウスを建築家のビクター・ヒールに監督を依頼し、1920年代から1930年代にかけて大規模な修復と改装を行っています。

屋敷はビショップ家の時代に追加されたものが取り除かれ、元のエリザベス朝のかたちに再現され、さらにピアソン夫妻にとって住み心地の良いように配管や暖房、電気が設置されていったのです。
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クライヴとアリシアは邸宅の改装だけでなく、パラム・ハウスから失われていった数多くのコレクションを収集し始めました。

パラム・ハウスについての歴史に関連するもの、あるいはかつてパラム・ハウスに存在していたものを、オークションで買い求めていったのです。
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夫妻は美しい邸宅を蘇らせ、内部を美しい家具や貴重な絵画、芸術作品で埋め尽くしていきました。パラム・ハウスでは、アリシア・ピアソンが収集した国内では最も重要と言われる17世紀の刺繍のコレクションを鑑賞することができるのです。

またコレクションの中の特筆すべきものとして、パラム・ハウスにはスコットランド王ジェームズ6世、そしてイングランドとアイルランド、スコットランドの王としてはジェームズ1世の息子である、若き日のヘンリー・フレデリックの肖像画があります。
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ヘンリー・フレデリックはその当時、王位継承者としてとても人気のあった王太子ですが、1605年に18歳でチフスのために亡くなっています。

当時、彼はプロテスタントにとって最大の希望であると考えられていました。ロバート・ピークによって描かれた肖像画では、ヘンリー・フレデリックは馬に乗り、頭部には前髪しかなく、翼を持つ男性を連れて歩いています。

この男性はギリシア神話のゼウスの末の子どもと呼ばれることもある、「チャンスの神様は前髪しかない」ということわざで知られるカイロスを表しているのではないでしょうか。

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しかし王太子が亡くなったために元の肖像画とは違うものとなり、翼を持つ男性の姿は塗りつぶされ、ヘンリー・フレデリックが暗闇の中で一人、馬に乗っている姿となってしまったのでした。

この背後を塗り潰されてしまった肖像画は、長い間パラム・ハウスに掛けられていましたが、1980年代に展覧会のために絵を貸し出すように頼まれ、そこでX線によって背後に隠れた絵があったことが分かりました。

現在は元の姿に修復され、ナショナル・ポートレート・ギャラリーに貸し出されたこともあるこの肖像画は、パラム・ハウスのグレイト・ホールで鑑賞することができます。
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この記事を書いたひと

Hazuki Akiyoshi Hazuki Akiyoshi