清楚で上品な庭に!和の雰囲気を持つ植物の魅力~春・夏~

イングリッシュガーデン風の華やかな庭も素敵ですが、日本の気候に合った和の雰囲気を持つ植物にも捨てがたい魅力があります。育てやすく、庭に上品な彩を与えてくれる和の植物をご紹介します。

実はナチュラルガーデンにも合う!和の植物

和の雰囲気の植物。確かに、華やかなバラと比べたらちょっと地味かもしれません。でも、純和風の庭だけでなく、シェードガーデンを彩る植物としても、華やかな花の引き立て役としてもとても優秀。なにより、日本の気候によく合っているので育てやすいのが魅力です。

庭をしっとり上品に演出してくれる和の植物ですが、例えば、和の雰囲気がある濃紫色の鉄線(テッセン)も、八重咲のピンクのクレマチスになると一気に洋風に。同じ百合でもカサブランカとササユリでは、イメージが大きく異なりますよね。

和の植物は自己主張が強すぎないものが多いので、組み合わせる植物によってイメージが大きく変わります。意外とよく合うのがナチュラルガーデン。野の花のようなイメージで組み合わせてみるとよいのでは?
ぜひ取り入れてみてくださいね!

蛍袋(ホタルブクロ)

ホタルブクロは、キキョウ科ホタルブクロ属の多年草。古くから日本に自生する大型の山野草です。冬は地上部が枯れますが、春になると芽を出します。カンパニュラの仲間で、5月下旬~7月頃に大きめの釣鐘状の花をつけます。
色は紫色やピンク色、白色など。夏の暑さがやや苦手なので、落葉樹の下などに植えてもいいですね。半日陰でもよく育ちます。

山野草と聞くと栽培が難しいのでは?と思いがちですが、ホタルブクロは地下茎でどんどん増え、株分けも簡単。病気にもなりにくく丈夫なので初心者さんにもおすすめです。
華やかなバラの庭にも、和の庭にもすんなりと溶け込みます。

海老根(エビネ)

もともと、日本の山野によく見られるラン科エビネ属の植物であるエビネ。そのため、山野草として観賞用の鉢に植えたり、茶庭のような和の庭に植えたりする楽しみ方が一般的でした。最近では交配種による華やかな色合いの園芸品種が手に入るため、他のナチュラルな草花と一緒に庭に植えて楽しむのもおすすめです。

一見地味なようですが、ランの仲間というだけあり、よく見ると花の一つ一つがちゃんとランの顔をしています。明るい半日陰でもよく育つ華やかな色合いのエビネは、洋風の花ともよく馴染みます。

春咲きと夏咲きの品種がありますが、代表的なのが春咲きのジエビネ。草丈30cmほどでえんじ色と白の落ち着いた色合いの花が咲きます。かつて里山などで群生していたのもこのジエビネです。春咲きの品種の花期は4月頃から。下のほうから順に咲いていき、1カ月ほどの間楽しむことができるのも魅力です。

「エビネ」という名前は、バルブ(偽鱗茎)という球根のようなものがこぶのようにつながって成長し、それがエビの背中のように見えることから付けられたもの。連なったバルブの先端から葉が出ています。植え付けや一回り大きな鉢に植え替える際は、根をほぐさずにそのまま植えましょう。

都忘れ(ミヤコワスレ)

ミヤコワスレは、日本に自生するキク科ミヤマヨメナ属の多年草。正確にいうと、ミヤコワスレというのはミヤマヨメナの園芸品種。古くから品種改良されてきた植物です。
茶花としても用いられるので和のイメージがありますが、ピンクや淡い紫色などの品種もあり、ナチュラルガーデンにもおすすめです。

ミヤコワスレは、植え場所が合えば毎年たくさんの花を咲かせてくれます。夏だけ半日陰になる落葉樹の下のような場所がベスト。といっても、夏の直射日光と乾燥に気をつければ、あまり場所に悩まなくてもよく育つので初心者さんでも簡単に育てれられます。開花期は4月~6月頃。

擬宝珠(ギボウシ)

ギボウシ(ホスタ)は、ユリ科(キジカクシ科)ギボウシ属の多年草。洋風の庭でもおなじみですが、実は、原産地は日本を中心とした東アジア。日本の林の中などで自生しているのをよく見かけます。

ギボウシは美しい葉を持ち、葉の観賞価値が高い植物。6~8月頃に長い花茎を伸ばし、薄い紫色の花をつけます。斑入りや濃い緑色など、色や形もさまざまな葉を持つ多くの園芸品種があり、半日陰を好むのでシェードガーデンにもおすすめ。冬は地上部が枯れますが、植えっぱなしで大株に育ちます。

紫陽花(アジサイ)

梅雨の時期に咲くアジサイ。日本に自生するアジサイ科(又はユキノシタ科)アジサイ属(又はハイドランジア属)の落葉低木です。鎌倉の明月院をはじめ、たくさんのアジサイが植えられた通称「あじさい寺」も多く、古くから日本人に親しまれてきたことがわかります。

西洋アジサイと言われるものはヨーロッパに自生していたわけではなく、日本からヨーロッパに伝ったアジサイが品種改良されたもの。原産地は日本なのです。

アジサイには、ガクアジサイと手毬のような形に咲くアジサイがあります。山の風情が溢れるのはガクアジサイではないでしょうか。一方、華やかな魅力があるのは手毬咲きのアジサイです。

青や紫、ピンク色の花がありますが、花色は土壌のPHによって変わります。酸性土壌だと青い花に、弱アルカリ性土壌ではピンク色の花に。そのため、品種が同じでも植える場所によって青になったり紫色になったりします。青いアジサイが多いのは、日本は酸性土壌が多いためです。

アジサイは半日陰の場所でよく育ちます。日本の気候に合っているためとても育てやすく、初心者さんでもほとんど失敗はありません。さまざまな園芸品種が出ているので、好みのアジサイを探してみてください。

著莪(シャガ)

アヤメ科アヤメ属の常緑多年草のシャガ。原産地は中国ですが、日本の林の中や里山などさまざまな場所で群生しているのをよく見かけます。
光沢のある細い葉を持ち、4月~5月頃に淡い紫色の小型のアヤメのような花を次々と咲かせます。

日当たりの良い場所でも育ちますが、明るい日陰や半日陰を好むので、シェードガーデンや日陰のアプローチ沿いなどにもぴったり。日陰のスペースの緑化にも使われます。

庭に植えるとどんどん根茎を伸ばして広がるほど丈夫です。種をつけないので、増やすときは株分けしましょう。

下野(シモツケ)

シモツケは、日本~中国にかけて自生するバラ科シモツケ属の落葉低木。山などでよく見かけます。
6月~7月頃に、小さなピンクの花が丸く固まって咲き、徐々に煙ったような花姿に変化。花の色はピンクが一般的ですが、園芸品種には白色や赤に近いピンクなども。

花は低木のシモツケとそっくりで葉の形が少々異なる多年草のシモツケソウという植物もあります。ピンク色の花のほかに白花や赤花などがあり、すっと伸びた茎の先についた花姿が優雅。シモツケソウとよく似た「京鹿の子(キョウカノコ)」という園芸品種は生け花にも使われます。

シモツケは、新緑から紅葉の時期までさまざまな顔を見せてくれるので、洋風の庭にもおすすめ。大きく育っても1mほどにしかならないほどよい茂みが、庭に立体感を与えてくれます。

桔梗(キキョウ)

秋の七草に数えられるキキョウ。日本~中国にかけて自生するキキョウ科キキョウ属の多年草です。古くから園芸品種が多く栽培されていたという記録があり、太い根は漢方薬にも利用されます。

キキョウは秋の植物のように思われがちですが、花期は意外と早く6月中旬頃~10月頃にかけて。暑さにも寒さにも強い、とても育てやすい植物です。

花の色は紫や白、ピンクがあります。水はけ・日当たりともに良い場所で育てましょう。株分けや種をまいて育てる以外に、挿し芽でも増やすことができます。

鳴子百合(ナルコユリ)

ナルコユリは、日本~中国にかけて自生するキジカクシ科ナルコユリ属(又はアマドコロ属)の落葉性多年草。アマドコロ(甘野老)とも呼ばれますが、実は、花屋さんなどで「ナルコユリ」として売られているものは、正確には「アマドコロ」。
ややこしいですが、本来のナルコユリは、葉が細長いので区別がつきます。アマドコロもナルコユリも、葉の形が少々違うものの風情は似ているので、ここでは一緒にしてみました。

ナルコユリの魅力は、白い線が入る涼し気な葉。5月頃に咲くスズランのような花はあまり目立ちません。群生させてグラウンドカバーとして扱うのがおすすめです。

芍薬(シャクヤク)

シャクヤクは一見すると木のようにも見えますが、ボタン科ボタン属の多年草。冬に地上部が枯れて春にまた新しい芽が出る、耐寒性の強い宿根草です。原産地は中国北東部。よく茂った葉の中から伸ばした茎の先につく、大輪で豪華な花が魅力です。

シャクヤクはもともと漢方薬の薬草として中国から伝わり広まりました。その後、鑑賞用として栽培されるようになり、江戸時代には150種もの園芸品種が作られていたとか。

シャクヤクには、一重咲きや手毬咲き、金しべ咲き、バラ咲き、八重咲きなどさまざまな品種があります。ヨーロッパのシャクヤク(ピオニー)は八重咲で華やかなものが多いのに対し、日本では比較的すっきりとした花が多いようです。

花期は5月~6月頃。水はけ・日当たりの良い場所で栽培しましょう。

笹百合(ササユリ)

ササユリは、ジャパニーズリリーとも呼ばれる日本原産のユリ。ユリ科ユリ属で、学名は”Lilium japonicum”。かつてユリと言えば、ササユリを指していたようです。

華やかなイメージのカサブランカなどとは異なり、うつむき加減に咲く淡いピンク色が美しい、清楚な雰囲気が魅力。ササユリという名前の通り笹のような葉を持ち、6月~7月頃に2~3輪の花をつけます。

栽培のポイントは、毎年花後に球根を掘り上げて、10月~11月頃に違う場所に植え付けること。花後にできる実の中の種を採って増やすこともできますが、花が咲くまで何年もかかります。

栽培が難しいのでガーデニング上級者向きですが、興味のある方は育ててみては?球根は通販などで購入することができます。
ここに挙げた植物のほかにも、テッセンやダイアンサス、ツボサンゴ、シランなど、春から夏にかけて咲く和の雰囲気を持つ植物はまだまだあります。野の花の風情を取り入れてみたいときなどにも使ってみてはいかがでしょうか。