五感で楽しむガーデニング~香りを楽しむ植物を植えてみよう

キンモクセイの花の香りが漂ってくると秋が来たのだと感じます。他にも、花や葉から心地よい香りがする植物は多いもの。色や姿だけでなく、花の香りに癒されるガーデニングも素敵ですよね。よい香りを楽しめる植物をご紹介します。

植物の香りの正体

植物、特に花には良い香りがするものが多いですよね。
美しいだけでなく、香りも楽しめる植物を使ったガーデニングは魅力がいっぱい!

咲いたばかりのバラに近付いて優しい香りを感じるとき、春を告げるハゴロモジャスミンの強くて甘い香りが庭を包むとき。あるいは、針葉樹の森に足を踏み入れた時のようなすがすがしいすっきりとした香りを胸いっぱいに吸ったとき。
植物の香りは人をリラックスさせ、幸せな気分にしてくれます。

香りには、甘い香りやすがすがしい香りなどさまざまな種類があります。さらに、同じバラでも、品種によって香りが強いものやあまり香りがしないものなどがあり、香りがよい品種の中でも香りの強さには個体差があるようです。

花や葉に香りがあるのは、植物の生き残り戦略のひとつ。受粉のために必要な虫をおびき寄せたり、病害虫から身を守ったり、さまざまな働きをしていると言われています。

この香りの正体は、芳香成分と呼ばれる香りのつぶ。リモネンやゲラニオールなど、1000種類ほどの成分が知られています。これらの香りの成分を集めて凝縮したのがアロマテラピーで使われる精油です。

実際の花や葉の香りは、精油よりももっと穏やか。心地よいと感じる香りの花をガーデニングに取り入れてみましょう。

香りと記憶は結びついている?

またその季節が巡ってきたことを教えてくれるのが花の香りです。

ところで、香りを嗅ぐと、前の記憶がふとよみがえることがありませんか?
この現象は「プルースト効果」と呼ばれるもの。

香りを感じる嗅覚は、感情や記憶に関わる脳の部分につながっているのだとか。そのため、ある香りを嗅ぐと、以前同じ香りを嗅いだ時の感情や記憶がよみがえるそうです。
これは、視覚や触覚などにはないもの。香りというのは特別なものなのです。

ガーデニングに取り入れたい!香りのよい植物

キンモクセイ

生垣や庭木によく利用されるキンモクセイ(金木犀)。やや暗い緑色の葉を持つモクセイ科の常緑樹で、刈り込みなどをしなければ樹高5~10m程に育ちますが、通常は剪定をして高さを押さえながら育てます。

キンモクセイの良さは、何と言っても花の香り。9月下旬~10月上旬頃にかけて、強い香りがするオレンジ色の小さな花を木いっぱいにつけます。キンモクセイから少し離れた道を歩いていても気付くような強い香りが特徴です。

キンモクセイの花は、その香りの良さから食用にも使われます。「桂花(けいか)」というのはキンモクセイのこと。漢方薬や桂花陳酒(白ワインにキンモクセイの花を漬け込んだもの)、お茶、お菓子などにも利用されています。

とても丈夫な木で、地植えでも鉢植えでも楽しめます。ぜひ育ててみては?

ジンチョウゲ(沈丁花)

淡い桃色や白色の小さな花が丸い形に集まって咲くジンチョウゲ。中国原産のジンチョウゲ科の常緑樹です。
秋に咲くキンモクセイと同様に、春のジンチョウゲの香りはなじみが深いのではないでしょうか。花のない時期は地味な印象ですが、花の香りの高さが好まれて庭木や生垣、玄関脇などによく植えられています。

3月~4月頃に咲く花の染み入るような甘い香りは、離れた場所からもわかるほど。半日陰でもよく育つので、エントランスなどに植えると花の時期は香りで出迎えてくれます。
枝先一面に花や蕾がつく姿はかわいらしい印象。樹高1mほどでこんもりとまとまるので、鉢植えでも十分育てられます。

ハゴロモジャスミン

3月~4月頃に強い香りの白い花を咲かせるハゴロモジャスミン。モクセイ科の常緑性つる植物で、原産地は中国南部。きれいな緑色の葉とピンクの蕾、白い花が美しい植物です。花がたくさん咲くとむせるような強い香りがするので、好き嫌いがあるかもしれません。

ハゴロモジャスミンは、毎年春になると花の咲いた鉢植えが出回ります。つるが伸びるので、フェンスやトレリスなどに絡ませながら育てると葉の美しさも楽しめます。もちろん鉢植えでも育てられるので、ぜひ良い香りを楽しんでください。

「ジャスミン」という名のつく植物はどれも良い香りがします。ジャスミンティーに使用されるのはマツリカ(茉莉花)と呼ばれる品種。ハゴロモジャスミンは育てやすい園芸品種です。

同じくジャスミンという名前がついていますが、黄色い花の咲くカロライナジャスミンはまったく別の品種で、正確にはジャスミンの仲間ではありません。

クチナシ(ガーデニア)

クチナシ(ガーデニア)は、日本原産のアカネ科の常緑低木。光沢のある明るい緑色の葉を持ち、耐陰性が強く育てやすいので庭木や生け垣などによく利用されます。
6月頃に咲く花は、厚みのある白い花びらがとても上品な雰囲気。強くて甘い香りが特徴で、キンモクセイ、ジンチョウゲとともに三大香木と呼ばれています。

クチナシの実は栗きんとんの色付けにも使われるのでご存知の方も多いのでは?花のあとにできるオレンジ色の実は染料や漢方薬として用いられます。

クチナシにはいくつかの品種がありますが、庭でよく使われるのは八重の花が咲くガーデニア(オオヤエクチナシ)と呼ばれる品種。こちらは日本原産のクチナシとは異なり、染料になる実はつきません。

クチナシの葉はオオスカシバの幼虫の大好物。あっという間に丸坊主になることもあるので、見つけ次第駆除しましょう。

ライラック

ライラックは、初夏に香りの良い花を咲かせるモクセイ科の落葉樹。
ライラックは花の香りだけでなく、たわわに咲く美しい花の姿や明るい黄緑色の葉も魅力です。

耐寒性がとても強いのですが、夏の強い西日に当たると弱りやすいので、どちらかというと冷涼な地域向き。
最近は樹高1mほどの矮性種も出ています。鉢植えでも育てられるので、夏は風通しが良い半日陰に移動させるとよいでしょう。もちろん、地植えにもおすすめです。

バラ

もしバラに香りがなかったら、これほど世界中で愛されることはなかったのではと言われています。遠くからわかるような強い香りではありませんが、花に近付くと、まさに「バラの香り」としか形容しようのない華やかでみずみずしい香りにうっとりしてしまいますよね。

バラの香りには、鎮静効果やリラックス効果があるのだとか。その効果はラベンダーを上回るとも言われています。

バラは古くから香水として利用されてきました。有名なのはダマスクローズ。ブルガリアなどで栽培される香水の原料となるオールドローズで、古典的なバラの香りです。
バラの香りはティーやフルーティー、スパイシー、ミルラなどに分けられます。芳香の良さで知られる手に入りやすい品種は、ティファニーやガートルード・ジェキル、パパメイヤン、グラハムトーマス、ニュードーン、ナエマなど。

品種によりさまざまな香りを持つバラ。強い香りを持つものからかすかな香りまで、実に個性的です。ぜひ好みの香りを探してみてください。

ラベンダー

シソ科のハーブ、ラベンダー。アロマテラピーや化粧品などでも使われることが多く、今や身近な香りのひとつなのではないでしょうか。

ラベンダーは花だけでなく、葉にも香りがあります。すがすがしいフローラル系の香りは、気持ちをリラックスさせる効果も。花の香りが自然に漂ってくるというよりは、風が吹いたり触れたりすることで香りがします。

最も香りが良いと言われるのはイングリッシュラベンダー。ただ、夏の暑さに弱く高温多湿の夏越しが難しいので、涼しい地域以外では耐暑性のある品種を選ぶとよいでしょう。品種によって香りもだいぶ異なります。

ラベンダーは香りだけでなく、花も葉も美しいので花壇や鉢植えにおすすめです。雨が当たりにくく水はけのよい場所を好みます。風通しと日当たりのよい場所で乾燥気味に育てましょう。

ミント

やはりシソ科のハーブであるミント。さまざまな種類があり、香りもそれぞれ異なります。ペパーミントやスペアミントなど、食品や歯磨き粉にも使われる、スーッとするすっきりとした香りが特徴。日本ではハッカと呼ばれて使われていました。

ミントは庭に植えるとあっという間に庭中に広がってしまい、地植えは嫌われることが多いのですが、芝生や踏み石の間から顔を出しているミントは多少踏んでも大丈夫。雑草取りの時にミントの爽やかな香りが漂ってくると、なんとも言えないリラックスした気持ちになるものです。

ミントの鉢植えがあると、切り戻しを兼ねて切った枝を生けて部屋に飾ることができて便利です。鉢植えを窓辺に置いておけば、風が吹くたびにかすかなミントの香りが漂います。

オーデコロンミントやアップルミントなど、香りの特徴がそのまま名前についている品種が多いので、好きな香りを楽しんでみては?

スイセン

ヒガンバナ科の球根植物、スイセン。地中海沿岸部原産の植物で、世界中に多くの品種があります。日本では奈良時代に中国から伝わったとされる二ホンスイセン(日本水仙)が栽培され、自生地も多くみられます。
冬に咲く日本水仙や、2月~3月頃に咲く黄房水仙、春に咲くラッパスイセンなどがあり、香りも品種により異なります。

水仙の花を部屋に飾ると、部屋が良い香りで満たされますよね。
特に香りが強いのが、日本水仙や黄水仙(ジョンキル)など。グリーン系の爽やかさと甘さのある強い香りが特徴です。品種改良された種がとても多く、ラッパスイセンの中にも最近は香りの強い品種があるようです。

群生しているとよい香りが漂ってくるので、スイセンの香りを楽しみたいときは、ぜひ場所を決めてたくさん植えてみてください。

ヘリオトロープ

ヘリオトロープはムラサキ科の多年草あるいは低木。
ペルー原産のキダチルリソウと呼ばれるコモンヘリオトロープは、春~夏にかけて、濃い紫色をしたバニラのような甘い香りの花をつけます。香水の原料としても用いられることから、別名「コウスイボク」とも呼ばれます。
耐寒性はあまり強くありませんが、室内で冬越しすれば翌年も楽しめます。

同じヘリオトロープという名前でも、ヨーロッパ原産のヘリオトロープは一年草。香りがそれほど強くない代わりに、花が大きくガーデニング用に売られているのをよく見かけます。
香りを楽しみたい場合は、ぜひキダチルリソウのほうを育ててみましょう。

ニオイバンマツリ

南米原産のナス科の低木、ニオイバンマツリ。英名はブルンフェルシア。名前に”ニオイ”とついていることからもわかるように、ジャスミンのような甘い香りの花が咲きます。

開花期が長いうえに、花の色が白から紫に変化するため2つの花色を楽しめるのも良いところ。
半耐寒性ですが、寒冷地以外だったら冬越しもできます。鉢植えで楽しめるので、寒冷地では冬は室内に取り込むといいですね。

実や種には毒があるので、誤ってペットや子供が口にしないように注意しましょう。

癒される香りでガーデニングを楽しもう!

他にも、ストックやスズラン、ヒヤシンスなど香りの良い花にはさまざまなものがあります。季節の訪れを感じ、幸せな気分にしてくれる香りを楽しむ花、ぜひ庭や寄せ植えに取り入れてみてください。