秋になったら楽しみたい和の植物。どんなものがある?

春・夏は華やかな花に目が奪われますが、秋は和の雰囲気も味わいたいということ、ありませんか?和の花は、お月見などの行事や紅葉にもぴったり。庭植えだけでなく、ミニ盆栽や和の寄せ植えでも楽しみたい和の植物をご紹介します。

秋は和の雰囲気の植物がおすすめ!

和の草花を取り入れてみよう

秋の庭を彩る和のイメージがある植物。植えられるのは、灯篭が置いてあるような純和風の庭ばかりではありません。
春の柔らかい色合いや、夏のビビッドな色合いの花にそろそろ飽きてきた…という場合にも、和の植物でぜひガラッと印象を変えてみてはいかがでしょうか。

和風の植物と線の美しいグラス類の寄せ植えを玄関前にひとつ。それだけで、ぐっと季節感あるおしゃれな雰囲気になります。
ミニ盆栽で楽しんでもいいですね。

和の植物がおすすめな理由

古くから日本で育てられていた植物は、日本の気候に合っているため初心者さんでも育てやすいものがたくさん!また、紅葉した木々にも馴染みやすい雰囲気の植物が多く、秋らしい季節感を出しやすいという点でもおすすめです。

和の植物は華やかさという点では物足りないかもしれませんが、和の植物の楚々とした雰囲気って、とても味わい深いもの。自然な風情があるので、ナチュラルな雰囲気の庭にもよく馴染みます。華やかな花の背景に使ってもいいですね。

あまり手をかけなくても育てやすい宿根草が多いので、ぜひ取り入れてみてください。

ホトトギス(杜鵑草)

ホトトギスは、ユリ科ホトトギス属の多年草。白地に濃い紫色の斑点がはいる花の模様が、ホトトギスという鳥の模様に似ていることから名付けられました。30種ほどの品種のうち、日本に自生するのは約10種。山林などの湿った日陰に生えているため耐陰性があります。
代表的なのは紫色の斑点がある花ですが、白色や黄色の花をつける品種も。いずれも山野草として人気があります。

開花期は8月~9月。花は下の方から何段にも連なるように咲くので、長い期間楽しめます。明るい日陰で育てましょう。

宿根草なので冬に地上部が枯れ、春になると新しい芽を出します。株分けは3月頃。挿し木でも増やせます。アジサイなど低木の足元に植えると豪華な印象。秋の寄せ植えにもおすすめです。

ところで、ユリ科のホトトギスは、ルリタテハの幼虫の大好物。葉を食べられていたら葉の裏をチェックしましょう。トゲトゲのある黒い毛虫が丸まって隠れているので、丸坊主になる前に駆除します。

フジバカマ(藤袴)

フジバカマは、キク科ヒヨドリバナ属の多年草。中国~日本にかけての東アジア原産の植物で、万葉集では山上憶良の「秋の七草」の歌にも登場し、その後古今集などでも詠われています。
このように、かつては日本の秋の野を彩っていたと考えられますが、環境の変化により、残念ながら純粋なフジバカマは現在、準絶滅危惧種に指定されています。

フジバカマは、ギザギザのある切れ目のある葉が対生し、茎の先に赤紫色の小さな花が房のように固まって咲きます。
日当たりの良いやや湿り気のある場所を好み、地下茎でよく増えるので、どちらかというと増えすぎに注意。鉢植えの場合は根詰まりしやすいので毎年植え替えます。

フジバカマの花自体にはあまり香りはありませんが、乾燥させた茎や葉には香りがあり芳香剤として使われたのだとか。花の咲いた後は、摘み取って乾燥させ香りを楽しむと良いですね。

シュウメイギク(秋明菊)

すっと伸びた茎の先につくコロンとしたつぼみ、丸みを帯びた花がかわいらしいシュウメイギク。中国や台湾原産のキンポウゲ科アネモネ属の多年草です。花びらのように見える部分は、実は萼片。開花期は9月~11月頃です。

一重咲きの白や薄いピンク色が一般的ですが、他にも華やかなローズ色などがあり、八重咲きの品種はコスモスによく似た花が咲きます。濃い緑色の葉を持ち、和にも洋にも似合う優雅な姿が魅力。

冷涼な気候を好むので、夏は株元に直射日光が当たらない場所に植えましょう。
耐陰性が強く明るい日陰でも育つので、シェードガーデンにもおすすめです。

ハギ(萩)

万葉集にも詠まれ、秋の七草として知られるハギ。マメ科ハギ属の低木です。別名ミヤギノハギ(宮城野萩)とも言われる種類は、長く伸びた茎が枝垂れて紫色の花をつける姿が優雅。一般的にハギと言われて思い浮かべるのは、このミヤギノハギの姿だと思います。

ハギには、ヤマハギなど枝が枝垂れない種類もあります。「ハギ」とつくものには他にも「センダイハギ」などがありますが、こちらは黄色い花が立ち上がるように咲く多年草。低木のハギとは異なります。

日本の気候に合っていて、耐寒性・耐暑性ともにあり、初心者さんでも簡単に育てられ、野趣があるのが魅力。秋の風情を味わいたいという人は育ててみては?

ムラサキシキブ(紫式部)

細い枝に赤紫色の小さな丸い実がつくムラサキシキブ。日本原産のシソ科(又はクマツヅラ科)ムラサキシキブ属の落葉低木です。
花はピンク色で6月頃に咲きますが、見どころはどちらかというと鮮やかな色の実がついてから。切り花としても利用されます。

庭植えや寄せ植えによく利用されているのは、樹高が1m程になるコムラサキ(コシキブ)と呼ばれる種類。鮮やかな色の実が丸く集まり、何段にもなってつくので華やかです。
丈夫で育てやすく、鳥が落とした種から自然に生えてくることも。赤紫色の実がつく品種のほか、白い実がつく品種もあります。

日当たり~半日陰の場所を好み、乾燥は苦手。もともと明るい林の中に自生する植物なので、腐葉土などを多めに混ぜた土に植えるとよいでしょう。伸びすぎた場合は落葉期に剪定します。生育旺盛なので、鉢植えで育てている場合は、毎年落葉期に植え替えをしてください。

オミナエシ(女郎花)

スイカズラ科オミナエシ属の多年草。花が優雅で美しいとして女郎花という名前がついたとか。根は薬草としても利用されます。
秋の七草として知られ、生け花にもよく使われている花ですが、切り花で部屋に生けるとちょっと臭いが気になることも…。ただ、植えて楽しむ分には問題ありません。

オミナエシは株立ちで1m程に育つため、花壇では後ろの方に植えたほうがよいでしょう。性質は強健。もともと日当たりの良い草原で育つ植物なので、よく日の当たる場所で育てましょう。

黄色い小さな花が多数集まって咲く姿は、秋の庭に華やかさを添えてくれます。寄せ植えに使う時は、紫系の花の中に少しだけ混ぜるとお互いに引き立て合い、和の華やかさを演出できます。

コスモス(秋桜)

秋を代表する花と言えばコスモス。メキシコ原産のキク科コスモス属の一年草で、さまざまな園芸品種が手に入ります。
ピンクやクリーム色、白など明るい花色と風にそよぐ姿が、庭をたちまち花のあふれる野原のような雰囲気にしてくれます。
日当たりの良い場所を好み、初心者さんでも種まきで簡単に育てられます。ただ、早くに種をまくと草丈が伸びすぎて巨大化することも。風にそよぐイメージからは程遠い姿に育つので、夏に種まきをして育てるほうがよいでしょう。

■キバナコスモス
コスモスの仲間には、フレンチマリーゴールドのような花をつけるキバナコスモスという種類もあります。小型でオレンジ色や黄色の花が咲き、花壇や寄せ植えに向いています。あまり手入れをしなくてもよく咲くので、道路沿いの緑化や公共花壇などに利用されることも。

■チョコレートコスモス
コスモスの仲間で多年草のチョコレートコスモスは、チョコレートのような香りと深いダークレッドの色合いがシック。育てやすい品種も出回っているので、カラーリーフと合わせて寄せ植えや庭植えに取り入れてみては?

リンドウ(竜胆)

リンドウは、日本原産の植物。薬草としても使われるリンドウ科リンドウ属の多年草で、地域によって高山や草原、野山などで育つさまざまな種類があります。

笹のような葉をつけ、秋になると深い青紫色の筒状の花をつけます。青紫色の花が一般的ですが、最近ではピンク色のリンドウも。切り花でもよく見かけるのではないでしょうか。

リンドウは山野草なので、植え付けには山野草用の培養土がおすすめ。通気性のよい土を好みますが、乾燥は苦手。いったんひどく乾燥してしまうと回復が難しいので、水やり管理には多少注意が必要です。耐寒性・耐暑性ともにありますが、地面が凍るような場所は避けて植えます。

リンドウの花は日が当たると開きますが、日陰に置いておくと閉じたまま。夏は明るい日陰、それ以外の季節は日当たりの良い場所で、肥料を施しながら育ててください。

キク(菊)

古くから栽培されてきた、日本人になじみの深いキク(菊)。原産地は中国~日本にかけて。キク科の多年草です。大輪の菊を栽培するのは大変ですが、小菊と言われる種類は庭で気軽に楽しめるのでおすすめです。

秋に咲く小菊の花色は、黄色、紫、赤、オレンジ、ピンク、白などさまざま。花後の株分けや挿し芽で簡単に増やすことができ、庭の隅の日当たりの良い場所に植えておくと毎年かわいい花を咲かせてくれます。適度に肥料を与えると花付きがよくなります。

■ポットマム
小菊とも言えそうですが、ポットマムはアメリカで開発された園芸品種で、西洋菊と呼ばれます。こんもりと茂る矮性品種で華やかさがあり、鉢植えにすると豪華です。

ススキ(薄)

お月見に添える植物と言えばススキ。秋の七草に詠まれている「尾花」がススキを指し、生け花の花材としてもよく使われます。

ススキは、日本から中国にかけて自生するイネ科ススキ属の多年草。空き地や野原、高山まであらゆる場所で目にします。鑑賞用の園芸品種も多く、斑入りの葉をもつタカノハススキなどがよく栽培されています。
地植えにすると大きくなりすぎてしまうことがあるので、鉢植えや盆栽などで楽しむのがおすすめです。

性質は強健で生育旺盛。土質や植え場所はあまり選ばず、水やりは通常の植物と同様ですが、乾燥すると葉が丸まってくるので水をたっぷりと与えます。鉢植えは毎年植え替えてください。
秋の七草をはじめ、秋ならではの風情を楽しめる和の植物。和と言っても、中には華やかな花もあるので、いろいろな組み合わせを試してみてください。