庭作りに欠かせない宿根草とは?育て方のコツを知っておこう

庭作りで人気の宿根草。一度植えると毎年花を咲かせてくれる姿は嬉しいものです。宿根草にはさまざまな種類がありますが、基本的な育て方にはある程度共通点があります。宿根草の育て方のコツを知っておきましょう。

植物の分類の仕方を知ろう

自然分類と人為分類

植物の分類にはさまざまな方法があります。

バラ科バラ属などの分類は、同じ「種」を一つのグループにした自然分類というもの。植物分類学に基づき、花や葉の形など特徴の似たものごとに分類します。

一方、普段よく使われるのが人為分類と呼ばれるもの。園芸的分類や実用分類とも呼ばれます。
これは、一・二年草や多年草など、ガーデニングでよく使う分類法。ラン類や多肉植物、観葉植物、ハーブといった分類も人為分類です。
人為分類では、栽培方法や栽培目的、性質の違いなどによって植物を分類します。
「科」や「属」といった分類と、「宿根草」「多肉植物」などの分類を合わせて知っておくと、植物の性質を知り育て方を理解することにもつながるので覚えておくといいですね。

木と草花

園芸で使う植物は大まかに「木」と「草花」に分けられます。
■本木類
いわゆる「樹木」です。常緑樹と落葉樹があります。
草と木の違いは、形成層と呼ばれる木質部があるかどうか。中には年輪のない木もありますが、年輪を作りながら大きく成長するのが木だと考えることができます。
■草本類
幹ではなく茎を作って成長する植物です。形成層がないので木のように太くなることはありません。生育の仕方によって一年草と多年草があります。

一年草と多年草、宿根草とは?

■一年草・二年草
1年~2年サイクルで、発芽して成長し、やがて開花、種子を作って枯れる植物です。生育できない期間を種の状態で乗り切る植物が一年草・二年草だと言えます。ただ、現生地では多年草でも、日本で育てる場合は気候条件の違いで一年草に分類されるものもあります。
■多年草
多年草とは、数年かけて生育し開花を繰り返す草本類(草花)。生育に合わない時期を過ごす方法により、球根類と宿根草に分けられます。

宿根草とは、生育に適さない季節になると地上部が枯れるか一部が残り、生育できる気候になると新しい芽を出し成長を続ける多年草。常緑性のものと冬に地上部が枯れる落葉性のものがあります。

球根類は、多年草の中でも球根部に栄養を蓄えて生き残る植物です。

宿根草の性質

宿根草とは、地上部が枯れても根が残り、再び芽を出して何年もかけて成長する植物のこと。冬の間葉が枯れて春に再び芽を出す植物が多いですが、冬に枯れるものだけではなく、夏の間に地上部が枯れ、早春に再び芽を出すものもあります。
そのため、いったん植えると何年もの間花や葉を楽しめるというのが良い点です。

宿根草の成長の仕方

宿根草は、成長に適した季節がやってくると休眠から覚めて芽を出し成長をはじめ、やがて花を咲かせます。その後、生育しにくい季節になると葉を落として地中の根と株元の芽や葉の一部が残ります。地上部が枯れても根が枯れるわけではなく、再び成長に適した季節になるのをじっと待っています。
葉を落とさない宿根草にも成長期と休眠期があり、休眠期には成長を止めてその季節をやり過ごします。

育ち方は種類によって異なります。ギボウシのように年々大株になっていくものや、ラムズイヤーやジャーマンアイリスのように芽の出る位置をずらしながら成長するものなどさまざま。
オダマキのように2~3年で枯れてしまう宿根草もあり、寿命も植物によって異なります。

宿根草の育て方

植える場所

植物によって好む環境は異なります。
日光が大好きな植物は日当たりの良い場所に、夏の暑さが苦手な植物は落葉樹の下に、半日陰で生育する植物は日の当たり過ぎない場所に植えましょう。

日当たりと同時に大切なのが、土の状態です。乾燥した環境を好む植物をジメジメした場所に植えてしまうと上手く育たず枯れてしまいます。同様に、水を好む植物を乾燥する水はけのよすぎる場所に植えるとやはり上手く育ちません。

水はけの悪い土の場合、植え付け場所をあらかじめ耕して土にパーライトなどを混ぜておきます。腐葉土などをすきこむときに一緒に混ぜておきましょう。
周りより低い場所はジメジメしやすいので、土を盛って周りと同じ高さにしてから植えつけます。乾燥を好むラベンダーなどは、レイズドベッドのように少し高くした場所に植えつけるのも良い方法です。

環境が合わない場所に植えた宿根草は、植えた直後は何とか育っていても、やがて消えてなくなってしまうもの。一度植えると長く楽しめるのが宿根草の良さですから、植える場所は最初によく考えておきましょう。

水やり

水やりの基本は、土が乾いたら与えること。時間は朝のうちが最適です。
鉢植えの宿根草の場合、置き場所や季節によっても水やりの頻度は変わってきます。
葉が茂る成長期には早く土が乾くため水やりの回数も増えますが、休眠期には水をさほど必要としないので土がなかなか乾きません。
いつも土が湿っている状態よりも、土が乾いてから水をあげるほうが根がよく育ちます。植物にも環境に順応する能力があるので、多少スパルタ気味に育てたほうが、うっかり水やりを忘れた!という時にも枯れずに頑張ってくれるような気もします。なんとなく毎朝水やりをするのではなく、土の状態を見て調整するといいですね。

気をつけたいのが、地上部が枯れている間の水やりです。根は生きていますから、カラカラに乾いてしまうと本当に枯れてしまいます。時々水やりをしながら春の芽を待ちましょう。

地植えの宿根草の場合は、根付くまでは鉢植えと同じように水やりが必要ですが、しっかり根付いた後は基本的には水やりの必要はありません。ただ、気温の高い夏に雨が降らない日が続くなど、土が乾燥する場合はたっぷりと水を与えてください。

肥料

宿根草に肥料を与える時期は、新芽を出す前と成長期、花が咲いた後(お礼肥)です。休眠期には肥料を与えません。

宿根草は長くじっくりと育てたいので、緩効性肥料が最適。
植え替え頻度の高い鉢植えの場合は緩効性化成肥料を使うことが多いと思いますが、地植えの場合は化成肥料よりも、土を良い状態に保ちやすい有機肥料がおすすめです。有機肥料は分解されて栄養分として吸収されるまでに少し時間がかかります。成長期に入るころに与えるとよいでしょう。

液体肥料は即効性があるので、次から次へと花を咲かせる一年草や室内で育てる観葉植物に向いている肥料。宿根草でも花が咲いている時期や早く効き目を出したいときに与えることがあります。

なお、暑い日が続く夏の時期など、新芽の動きがなく株が弱っているような状態では、肥料は与えないほうが安全です。

花が終わった後はどうしたらいい?

咲き終わった花を摘み取るのは一年草と同じです。花期が長いものは、花がらをまめに摘み取るとより長く楽しめます。
ただ、切り戻しをしながら春から秋まで咲き続けるような一年草とは異なり、宿根草の多くは花の咲く時期が決まっています。咲き終わったら株に負担をかけないように摘み取り、翌年のために株を充実させます。

株を充実させるのに大切なのは、葉の存在。光合成をすることは、植物にとって生存のために必要なことです。根が栄養分を吸い上げるのも葉があってこそ。成長に必要な栄養分を作り出す葉を大切にしましょう。

休眠期の宿根草のお世話

休眠期の宿根草は、葉が枯れていたり、葉があっても成長が止まっていたりという状態。そのため、特にお世話をする必要はありません。
自然の中の宿根草は、冬の寒い時期は落ち葉が厚く積もっていたり、枯れた葉が株元に重なっていたりするはずです。庭植えや鉢植えでは、枯れた地上部を切り取り、寒さから守るために腐葉土などでマルチングを行うといいですね。春になったらそのまま土にすき込んでしまえば肥料にもなります。

休眠期の宿根草でやりがちな失敗が、水のやりすぎなどではないでしょうか。
例えば、クリスマスローズは冬が成長期で夏は休眠している状態。高温多湿のこの時期に水をやり過ぎると根が傷んでしまいます。元気がないからと肥料を与えてしまうと、さらにダメージが大きくなります。

休眠期には必要最低限の水やりだけで、あとはそっとしておきましょう。

宿根草の株分けと植え替え

何年も植えっぱなしの宿根草。大株になりすぎて形が乱れてきたり、中心部が枯れ込んできたりすることも。最初に植えた場所からだんだん動いて、他の植物を侵食してしまう植物もあります。
なんだか庭が荒れて見える…と思ったら、株分けと植え替えをしましょう。株分けは宿根草を増やしたい時にもおすすめです。

鉢植えの宿根草も、植え替えをしないと根詰まりして育ちが悪くなってきます。この場合も株分けするか、一回り大きな鉢に植え替えましょう。

株分けや植え替えの時期

株分けや植え替えの時期は、花後や休眠期に入る前の葉が枯れ始めた頃か、成長期に入る前に行います。植物にもよりますが、10~11月頃か、2月中旬~3月頃が適期です。

株分けの方法

地植えの宿根草は根鉢をやや大きめに掘り上げます。
ギボウシなど丈夫な植物は株の近くで掘り上げても大丈夫。シャクヤクやキキョウなど根を傷めたくない植物は丁寧に掘り上げましょう。

株分けの際は、手で根鉢を割くように分けます。ハサミを使ってもかまいません。この時、分けた株に新しい芽がついている状態にしておきましょう。

株分けの際は、根が減った分、地上部の葉も減らして蒸散のバランスを取ります。落葉性の宿根草は、地上部を地際から切り落として植え付けます。

植え付ける場所はあらかじめ軽く耕して腐葉土を混ぜておき、植え付け後はたっぷりと水をあげてください。

宿根草を庭に取り入れるコツ

宿根草は、一度植えたら何年も花を楽しめるのですが、地上部が枯れている時期は庭が寂しく見えてしまうもの。
宿根草を取り入れた庭を作る際は、常緑性のものと落葉性のものを組み合わせ、さらに一年草のスペースも確保すると、冬の間、庭全体が枯れているという状態を避けられます。

花の咲く時期が異なる植物を組み合わせると、一年を通して何かしら花が咲いている庭に。一方、バラの開花期などにいっせいに咲くような植物選びをすると華やかな景色を楽しめます。

植え付けの際は、その植物が成長する姿を考えて、苗と苗の間隔を十分取っておきましょう。花が咲いた時の草丈も考慮して配置を決めます。

常に花を植え替える一年草のスペースと宿根草のスペースを分けたほうが手入れは楽ですが、自然にこぼれ種で増える一年草の場合は宿根草と混ぜて植えてもいいですね。

宿根草を楽しもう

宿根草と一年草を組み合わせたローメンテナンスの庭は、忙しい人にもおすすめです。一度植えてしまえば、しばらくは一年草の部分のみ植え替えれば季節によって違う景色を楽しめます。
宿根草が大きく育ってきたら、株分けや植え替えの作業が出てきますが、種を植えて育てて…という作業よりはとても簡単。手間も時間もそれほどかかりません。
ぜひお気に入りの宿根草を見つけて植えてみてください。