料理にもガーデンにも使えるハーブ。ローズマリーの育て方と楽しみ方

料理やお茶に利用できるハーブ。中でもローズマリーはガーデンを彩るグリーンとしてもおすすめです。常緑で大株にも育つローズマリーの種類や育て方、利用方法などをご紹介します。

ローズマリーの基本情報

ハーブとして知られるローズマリーは、シソ科マンネンロウ属の常緑低木。松のような葉と青い花、ピリッとした香りが特徴で、料理や薬用として利用するほか、緑化樹としてハーブガーデンだけでなく庭を彩るグリーンとしても用いられます。

ローズマリーの自生地は地中海沿岸地域。海辺の崖地などで育ちます。乾燥した土地で咲く青い小さな花がまるで海の波のしずくのように見えることから、ラテン語で「ロスマリヌス(海のしずく)」と呼ばれていたことが、ローズマリーの名前の由来だと言われています。

ローズマリーには殺菌作用のある成分が含まれており、古くから空気の浄化や病気の感染予防、魔除けにも用いられてきました。
また、集中力や記憶力を高めるハーブとしても知られ、古代ローマではローズマリーの花冠を被って集中力を高めていたのだとか。

ローズマリーには血行促進作用や抗酸化作用があるとされ、ハーブティーや抽出液は美容にも使われます。

ローズマリーの性質は?

ローズマリーの自生地である地中海沿岸地域は、一年を通して温暖。冬は雨が降りますが、夏は乾燥して強い日差しが降り注ぎます。そのような地域に自生するローズマリーも乾燥に強いのが特徴です。

乾燥した地域で育つ植物なので高温多湿に弱いのかと思ってしまいますが、ローズマリーは日本の夏の気候にもよく順応し強健。耐寒性・耐暑性ともに強く、すくすくとよく育ちます。
乾燥しがちなベランダでは夏も元気に育つ力強さが魅力。庭に植えるとさらに大株に育ちます。種類によって樹高は異なりますが、立ち性では2mほどになるものも。
害虫や病気にも強く、あまり手をかけずに育てられるハーブです。

どれを選ぶ?ローズマリーの種類

ローズマリーには茎がまっすぐに立ち上がる立ち性タイプと、這うように茂るほふく性タイプがあります。立ち性とほふく性両方の性質を持った中間タイプもあるので、植える場所や目的によって選びましょう。

立ち性

すっと上に向かって伸びる枝が特徴の立ち性タイプ。枝分かれしながらこんもりとした樹形に育ち、低木ながら樹高2mほどになるものも。
株が若いうちはまっすぐ立ち上がるように育ちますが、徐々に枝が横に張り出すように育ち、そこから若い枝が立ち上がります。
鉢植えにも庭植えにも使いやすく、生垣にもおすすめ。庭のフォーカルポイントに使ってもいいですね。
さまざまな品種があり、花の色や樹形も異なります。好みのものを選びましょう。
・マリンブルー
強健で育てやすい立ち性ローズマリー。濃い青色の花が咲きます。

・トスカナブルー
立ち性の代表的なローズマリー。薄紫色の花が咲きます。花壇の縁取りや生垣にもおすすめ。

・マジョルカピンク
ピンク色の花が咲く立ち性ローズマリー。葉が小さく枝はしなやかなカーブを描きます。

・オフィキナリス
ローズマリーの基本種。白に近い淡紫色の花が咲きます。

ほふく性

こんもりとした丸い茂みを作るほふく性タイプ。クリーピングローズマリーとも呼ばれます。
ほふく性と言ってもツタのように壁を這い上るというわけではなく、茎がしなやかに曲がりながら絡まって育ち、グラウンドカバーにも使えます。石垣などに沿って植えると、石の上を覆うように這いながら茂ります。
・プロストラータス
ほふく性で水色の花が咲くローズマリー。高いところに植えると垂れ下がって這うように育ちます。
半耐寒性で、生育最低気温は−5℃程度。

ローズマリーの育て方

苗を買ってきたら?

店頭で売られている苗は黒いビニールポットに入っています。ほとんどが3号サイズと言われる直径9cmほどのもの。ポットの裏から根がはみ出しているものや、ポット自体を触った時にカチカチに固いものは根が回ってしまっている状態。ビニールポットのままだと成長も悪いので、苗を買ってきたらまず植え替えましょう。

地植えにする場合はそのまま植え付けますが、鉢植えで育てる場合は一回り大きな鉢に植え替えてあげましょう。おすすめの鉢は、テラコッタや素焼きの鉢。プラスチックの鉢の場合は、過湿にならないように水はけのよい土を使用します。

水はけのよい土に植え付けます。水がたまるような場所は避けましょう。レイズドベッドなどもおすすめです。
庭に植える場合は、弱酸性をきらうので苦土石灰などで調整をしてから植え付けます。根をしっかりと張れるように、腐葉土をすき込んで深く耕しておきます。
鉢植えの場合は、ハーブの培養土を使用するとよいでしょう。

置き場所

日当たりの良い場所で育てましょう。真夏の強い日差しのもとでもよく育ちます。
半日陰でも育ちますが、花も楽しみたければ日当たりの悪い場所は避けたほうがよいでしょう。

水やり

乾燥を好むため、土の表面が完全に乾いたら水やりをします。過湿は根腐れのもとになるので注意。冬は乾燥気味に育てます。

水を与える時はたっぷりと、鉢底から水が流れ出るのを確認しましょう。しっかり根を張っている地植えの場合は、特に水やりの必要はありません。植え付け後しばらくは、萎れないように水やりをして管理します。

肥料

植え付け時に元肥を入れ、あとは春と秋に緩効性肥料などを与えます。もともと肥料分の少ない環境で育つため、どちらかというと肥料は控えめにしましょう。

普段のお手入れ

枝の途中で剪定すると、脇芽がたくさん出てこんもりと育ちます。
ローズマリーは木なので、最初は緑色の茎もだんだん木質化していきます。枯れあがってきた枝や細くて弱い枝などは時々剪定しましょう。混みすぎている枝も剪定してしまってかまいません。

植え替え

ローズマリーは生育旺盛。鉢植えの場合、1年もたつと根詰まりしてしまいます。なんとなく元気がない、鉢の底から根が出ているというときは植え替えのタイミング。根詰まりすると水切れしやすくなり生育も鈍ってくるので、1~2年に1回は植え植え替えをしましょう。

植え替えの時期は4~5月頃か10月頃。もともとローズマリーは植え替えを嫌うので、根鉢を崩さずに、一回り大きな鉢に植え替えます。根が回りすぎて固まっている場合は、固まった根をほぐして少し取り除いてから植え替えます。植え替え直後は日陰で管理。1週間ほどしたら徐々に日なたに移しましょう。

庭植えの場合、植え付け直後のまだ根が張っていない状態だったら植え替えもできますが、根が張っているものを移植するのはおすすめできません。樹形が崩れて木質化した部分が目立ってきたら、株の更新をしたほうがよいでしょう。

株の更新

株の更新には挿し木やとり木がおすすめ。大きくなると樹形が崩れてきやすいので、4~5年を目安に株を更新するとよいでしょう。

とり木はとても簡単。伸びたローズマリーの枝の途中をU字にした針金などで土に留めつけておきます。土についている枝から根が出てきたら親株から切り離して育てましょう。

挿し木の時期は、5~6月と10月頃。やや木質化している元気のいい枝を10cm程度の長さに切り、土に挿す部分の葉を取って1時間ほど水を吸わせます。挿し木用の用土に挿し、1カ月ほど日陰で管理してください。乾燥気味にすることで、水を求めて根が出ます。
根が出たか、途中でつい挿し穂を引っ張って確かめたくなるかもしれませんが、じっとがまん。新芽が出てきたら根が出ている合図です。ハーブ用の培養土などに植え付けましょう。

ローズマリーを常緑樹として植える

ローズマリーはガーデンの植栽としても優秀です。あまり手がかからず放任でも育つため、忙しくて庭木の管理が大変という人にも向いています。

常緑低木なのでグラウンドカバーにしたり、並べて植えて生垣にしたり。ちょとした目隠しとしても利用できます。また、乾燥や日差しに強いのでベランダガーデンにもおすすめです。ただ、蒸れには弱いので、風通しの良い場所で育てましょう。

ハーブティーで楽しむ

「若返りのティー」と呼ばれるローズマリーのハーブティー。血行促進作用や集中力を高める作用があるとされ、頭をすっきりさせたい時に飲みたいハーブティーです。

お茶に使うのは、ドライにした葉の部分。伸びてきたら収穫し、室内の風通しの良い場所に下げておくとドライハーブになります。ハーブティーは刺激的な香りがしますが、味はそれほどクセがありません。レモンバームなど他のハーブとブレンドするのもおすすめです。
ドライハーブを保存するときは、湿気ないように乾燥材を入れた密閉容器に入れるか、冷凍保存します。早めに使い切りましょう。

妊婦さんや高血圧の方は、量に気をつけて体調をみながら使用してください。長い期間連続して飲むのはやめましょう。

ローズマリーを料理に使う

ローズマリーはお料理で出番が多いハーブ。肉料理やジャガイモ料理などに使うほか、トーストやピザにパラパラと乗せてオリーブオイルをかけて焼く、焼き菓子に使うなどの利用方法もおすすめです。

鉢や地植えで育てていると、いつでもフレッシュハーブを使えるのが嬉しいですよね。ローズマリーの葉をガーリックと共に炒め、ジャガイモにまぶしたり、オーブンで鶏肉を焼くときに添えたりして使いましょう。ポイントは、香りが強いので控えめに使用すること。
最後に一枝、飾りとして添えると見た目もおしゃれ!ぜひいろいろな料理に利用してみてください。

お風呂に入れる

ローズマリーをお風呂に入れると血行促進効果が期待できるそう。ハーブティーを入浴剤代わりにすることもできます。

クラフトを作る

剪定したローズマリーの枝をくるっとまるめてリースにしたり、束ねて吊り下げスワッグにしたり。針葉樹のような葉を持つローズマリーは、クラフトの材料としても利用できます。そのままドライになるのを楽しみましょう。

ローズマリーのある生活を楽しもう

見ても良し使っても良しのハーブ、ローズマリー。育てやすいハーブなので、初めてハーブを育てる人にもおすすめです。ハーブという概念にとらわれず、香りの生垣などガーデンの植栽としてもぜひ使ってくださいね。