使う楽しみがある庭!梅を収穫して梅酒や梅シロップ、梅干を作ろう

生活の場として庭を楽しみたい方におすすめなのが、収穫の楽しみがある庭。毎年たくさんの実をつけてくれる果樹は、収穫してさまざまなものに加工する楽しみもあります。その中でも、梅シロップや梅干などに使える「梅」の育て方や使い方をご紹介します。

「実のなる木」を育ててみよう

via Kaoru Sakamoto
「実のなる木」があると、育てて眺めるだけでなく、収穫して食べる楽しみが味わえます。
簡単に育てられて収穫も楽しいのは、キウイや柿、キンカン、ユズ、夏ミカン、ブルーベリーなど。中でも、梅酒や梅シロップ、梅干、ジャムなど使い道が広くおすすめなのが梅です。

毎年、梅の実を買って梅酒や梅干を作っている方も多いのでは?
庭に1本梅の木があると、毎年2~3kgほど梅を収穫できることも。作るものによって収穫時期を少しずつずらし、1カ月近くにわたって梅酒や梅干作りの作業が続くのも楽しいもの。

苗木を植えてから実がたくさん収穫できるようになるには少し時間がかかりますが、いったん収穫できるようになると、あまり手をかけずに毎年多くの実をつけてくれます。興味のある方は、ぜひ育ててみてください。

梅の基礎知識

梅はバラ科の落葉高木。中国原産で、奈良時代にはすでに日本に伝わって栽培されていたと考えられています。樹高は10mほどになるものもありますが、庭木で育てる場合は剪定により2~3mほどに抑えることが多いようです。

梅の花には、白やピンクのほか、赤に近い濃いピンク、複色などがあり、香りがあるので、花を楽しむために庭に植えることも多い花木。花の後は、5月下旬~6月にかけて実をつけます。
耐寒性・耐暑性ともに強く、無農薬でも育てられるので、家庭での栽培に向いています。

梅の魅力は、早春に咲く美しい花と収穫して楽しめる実ですが、花や樹形を楽しむためのウメを「花ウメ」、実を収穫するための品種を「実ウメ」と呼んでいます。よく「南高梅」という名前の梅の実を耳にしませんか?南高梅は実ウメの品種の一つです。

他にもいろいろな品種がありますが、その地方でよく育っている品種は気候に合っていて育てやすいのでおすすめです。
せっかく庭で育てるのだから、花も枝ぶりも実も楽しんでしまいましょう。

梅の育て方

苗木を選ぶ

種をまいて育てることもできます。実際に、梅の木の周りには、自然に落ちた実の種から生えた小さな芽(実生の芽)が生えてくることもあります。これを気長に育てても良いですが、実がなるまで時間がかかるので苗木を買ってくるのが現実的です。

苗木は、幹がまっすぐに伸びた健康そうなものを選びます。病気などがなく、接ぎ木した部分がしっかりしているものを選びましょう。鉢植えで花が咲いている苗を購入する場合は、虫食いがないかなどよくチェックしてください。

植え付け時期

植え付けの適期は落葉期。この頃に苗木を買って植えるとよいでしょう。花が咲いている苗は、しばらくそのまま花を楽しみ、花が終わってから植え付けます。

植え付け場所

日当たりの良い場所を好みます。
いったん植えた木を移植するのは大変なので、十分なスペースがあり、枝を広げても邪魔にならない場所を選びましょう。他の植栽がある場合は、木の下が夏の間日陰になることも考慮して植え場所を選んでください。

用土

水はけ良く肥沃な土を好むので、植え付け場所にあらかじめ堆肥を多めにすき込んでおきます。

鉢植えの場合は、水はけのよい土を用意しましょう。赤玉土と腐葉土または堆肥を2:1程度で混ぜた土を用意し、大きめの植木鉢(8号程度)に植え付けます。

植え付け方法

梅だけでなく、他の木にも共通の植え付け方法です。

まず、根鉢よりも大きめに植え穴を掘り、堆肥をすき込んでおきます。次に、土を少し埋め戻し、穴の中央を少し高めにしておきます。
そこに、向きをよく考えて苗木を置き、位置を決めたら土を戻し入れます。接ぎ木部分が土の上に出るように気をつけましょう。

土を埋め戻したら、土がダブダブになるまで水を入れ、棒でつついて隙間がないようにしましょう。しっかり根付くまでは支柱を立て、木が動かないように固定します。
埋め戻した穴の周りに土で土手を作り、水をたっぷりと与えます。

肥料

庭植えの場合は、落葉期の12月~1月頃に寒肥として有機質肥料を与えます。
鉢植えの場合は、花後に緩効性化成肥料を与えます。

開花

梅の開花は、2月~3月頃。梅の実はこの花の後にできるので、花がたくさん咲くように考えて剪定などのお手入れを行いましょう。

剪定

梅の木の剪定はとても大切。剪定をしないと徒長枝が伸び放題になって樹形が崩れ、剪定時期が遅れたり剪定方法を誤ったりすると翌年の花が少なくなってしまいます。

■冬の剪定

ひこばえや徒長枝、枯れた枝などを取り除きます。樹形を乱す枝や木の内側に向かって伸びる枝も剪定しましょう。この時期には花芽を確認できるので、花芽がついているけれど不要な枝は花が終わってから剪定してもいいですね。

■花後の剪定

梅の花芽分化は6月~夏頃にかけて。この後に強く剪定してしまうと翌年の花が少なくなってしまいます。
徒長枝には花芽がつきにくいので、不要な場合は根元から切りましょう。枝ぶりを考えて残す場合は、外芽の上で切ると次に外側に向かった枝が伸びて花がつきやすくなります。

梅の収穫時期

via Kaoru Sakamoto
梅の収穫時期は6月頃。梅雨の時期と重なります。梅雨の晴れ間に収穫しましょう。
梅酒や梅シロップに使う梅は、まだ青いうちに収穫します。梅干用には、もう少し熟してからがおすすめ。時期をずらして収穫するといいですね。収穫量が多すぎる場合はそのまま冷凍庫で保存もできます。きれいに洗ってから冷凍し、梅シロップを作るときなどに使用しましょう。

梅の実には毒がある?

「青い梅の実には毒があるから食べちゃダメ」と聞いたことがある人は多いのでは?
確かに、生の青梅は苦みや酸味が強くて食べるのは難しそうですが、毒があるのだったら、梅酒や梅シロップなどに使っても大丈夫なのか気になりますよね。

梅の果肉や種には、「青酸配糖体(アミダグリン)」という成分が含まれています。これは、青酸と糖が結合したもの。同じ「青酸」とついていても、摂取すると死に至る「青酸カリ」とは別物です。

ただ、この「青酸配糖体」も摂取すると呼吸困難や下痢などを引き起こし、体にとっては有害。含まれる量は若い梅の実ほど多く、特に種の部分には実の10倍ほど含まれているのだとか。
これは、梅が種を守るために身につけた生き残りの技。まだ柔らかい若い実が食べられてしまうのを防ぐために、食べると毒になる成分を持っているのだと考えられます。

実際に健康被害を引き起こすのは、梅をたくさん食べたとき。一度にそんなにたくさん食べることはないと思いますが、若い青梅を口にするのは避けたほうがいいですね。

青酸配糖体は、実が大きく育つにつれて少なくなっていきます。また、梅酒や梅シロップ、梅干などにすると分解されて、安心して食べられるようになります。

梅酒の作り方

通常はホワイトリカーで作りますが、日本酒や焼酎で作っても違った味わいになっておいしいもの。甘くしたいときは氷砂糖を多めにするなど、好みに応じて好きなお酒を使って作ってください。

材料

青梅 1kg
ホワイトリカー(または日本酒、焼酎など) 1.8L
氷砂糖(ロック) 600g~1kg
殺菌した口の広い瓶(3L程度)(熱湯で殺菌、またはホワイトリカーを入れて瓶を振って簡単に殺菌してもよい)

作り方

1.青梅を水で洗って汚れを取り、布巾などで水気をよく拭き取る。竹串でへた(なり口)を取り、この部分にも水気が残らないように拭き取っておく。梅を傷つけないように丁寧に。

2.乾いた清潔な瓶に1の青梅と氷砂糖を交互に入れる。

3.ホワイトリカーを注ぎ入れ、冷暗所に置いておく。

4.瓶を時々ゆすって氷砂糖が均等に溶けるようにする。3か月ほど経てば完成。梅は1年ほど経ったら取り出す。

梅シロップの作り方

via Kaoru Sakamoto
お子様にもおすすめなのが梅シロップ。水で割れば夏の飲み物にぴったり。簡単に作れて料理にも使えるのでおすすめです。梅は一度凍らせるのがポイント。少量ずつ作れるので、梅が余ったら冷凍庫に入れて置き、好きな時に作ってもいいですね。

材料

青梅 1kg
砂糖(三温糖、きび砂糖、氷砂糖など) 600g~1kg
殺菌した保存瓶

作り方

1.青梅を水で洗って汚れを取り、布巾などで水気をよく拭き取る。竹串でへた(なり口)を取り、この部分にも水気が残らないように拭き取っておく。梅を傷つけないように丁寧に。

2.水気を拭き取った梅をポリ袋などに入れて、半日以上冷凍庫で凍らせる。

3.乾いた清潔な瓶に2の青梅と砂糖を交互に入れる。梅が砂糖から出ないように、梅の隙間を砂糖で埋め尽くすような感じで。梅をフォークでつついて穴をあけると果汁が出やすくなる。

4.冷暗所に置き、果汁が出始めたら1日1~2回、砂糖が全体になじんで溶けるように瓶を揺する。

5.1週間ほどで出来上がり。飲むときは水や炭酸水で3倍程度に割って。2カ月ほど保存できる。

ジッパー付きポリ袋で簡単にできる梅干の作り方

via Kaoru Sakamoto
梅干を作るのって、なんだか大変そう…と思っていませんか?ジッパー付きポリ袋を使って冷蔵庫で作る方法なら、簡単で場所も取らず、少量でも作れます。ぜひ挑戦してみてください。

材料

青梅 1kg
塩 130g(梅の重さの13%)
氷砂糖(細かいもの) 100g(梅の重さの10%)
ホワイトリカー(35度以上のもの) 50㏄(梅と容器の殺菌用)
ジッパー付きポリ袋

作り方

1.青梅を水で洗って汚れを取り、布巾などで水気をよく拭き取る。竹串でへた(なり口)を取り、この部分にも水気が残らないように拭き取っておく。梅を傷つけないように丁寧に。

2.ガラスか琺瑯のボウルに梅を入れ、ホワイトリカーと塩、半量の氷砂糖を加えて全体を混ぜる。

3.ジッパー付きポリ袋に2を移す。ボウルに残った塩や氷砂糖、ホワイトリカーなどもすべて入れる。

4.全体を平らにならして(梅が重ならないようにして)軽く空気を抜いて口を閉じ、密封して冷暗所へ。(冷蔵庫の野菜室など)

5.2~3日経って梅酢が出てきたら、残りの氷砂糖を加える。かびないように、毎日上下をひっくり返し、袋を揺すって塩と梅をなじませる。

6.7月下旬~8月頃に土用干しを行う。晴天が続く日にざるなどに梅を並べ、風通しの良い場所で3日間天日干しする。上下返してまんべんなく。しわしわして梅干らしくなってきたら白梅干の出来上がり。
梅酢は清潔な容器に入れて日光消毒し、冷蔵庫で保存。お酢として使える。
■梅干は、半年ほどおくと味がなじんでおいしくなります。梅酢も混ぜ寿司や酢の物などに使えて便利です。早めに使い切ってください。