バラの庭を目指して!初めてのバラ栽培 第3回 バラの仕立て方のアイデアと夏場の管理

初めてのバラの栽培、今回はバラをより美しく見せるためのさまざまな仕立て方のアイデアをご紹介します。またこれからの暑くなる季節です。バラをどのように管理するかもご紹介します。

バラの咲く空間を素敵に見せるコツ

バラ「プリンセスシャルレーヌドゥモナコ」

5月6月は1年のうちで最もバラが美しい季節。今年初めてバラの苗をお迎えした方も多いのではないでしょうか。また、これからバラを育てようと思っている方もいらっしゃるでしょう。

今回は、まず新しく迎えたバラを使って空間をより美しく見せる方法についてお話します。

下記は「初めてのバラ栽培」のこれまでの記事のリンクです。参考にしてください。
バラを育てるにあたって、その品種がどれくらい大きくなるのかを把握しておく必要があります。

新しく仲間入りをした苗は、購入したての頃はそんなに大きくないかもしれませんが、バラは今が成長期。これからどんどん育っていきます。コンパクトに育つ品種ならそれほど必要ないかもしれませんが、ある程度枝が伸びる品種や大きく育つ品種なら、剪定して形を整えたり長い枝を誘引してより美しく見えるように仕立てていく必要があります。

また、バラの咲く空間を素敵に見せるには、色の組み合わせや他の植物を加えた全体の眺めをデザインするのも大事です。いくつかのアイデアをご紹介します。

小さなスペースには色数を抑えて変化をつける

小さなスペースにこそバラを飾りましょう。もちろん植物なので、ある程度の日当たりが確保できる場所という条件はつきますが、バラの花が1輪咲くと周りがとても華やいだ雰囲気になります。

小さなスペースだと、あの色もこの色もと欲張ってしまうとごちゃごちゃした感じになってしまいます。まずテーマとなる色を決めて、同系色で色数を絞ってまとめるといいですよ♪

バラを中心に、同系色の草花のプランターなどを一緒に。プランターの色も揃えて、形や大きさや高さで変化のあるディスプレイにすると、とってもオシャレな雰囲気になります。

花壇と一体化したバラ

バラは単独でも美しいですが、さまざまな草花と一緒に花壇で咲く姿もとても美しいものです。

手前に背の低い植物やミニバラを、その後ろに背が少し高めの植物を、後方に背の高いバラを持ってくるといいでしょう。草花の葉の色が明るめのものや斑入りのものを選べば重たい感じになりません。

ただこの場合、害虫被害を受けやすくなる場合がありますので、コンパニオンプランツなども用いるといいですよ。

スタンダード仕立てで変化をつける

バラのスタンダード仕立て

ちょっと変わった樹形をとお考えの方には、このスタンダード仕立てがおすすめです。

実はこれ、2つのパーツからできているのです。地面から伸びる1本の太くて長い枝の部分は台木といって土台となる部分(通常ノイバラなどを使用)です。そしてその先に株が広がる品種のバラの芽を接ぎ木します。園芸用のバラは、もともと丈夫なノイバラなどを台木としていますが、その台木に長いものを使ったのがスタンダード仕立てです。

上の方にボリュームが来るので視覚的にも変化あります。一株あればとても魅力的な空間作りができますよ。

バラの誘引のやり方

バラのタイプは次の4つに分けられます。

・ブッシュローズ ・・・ 木立ち性のバラで誘引しなくてもいいタイプです。剪定をして樹形を整えます。
・つるバラ ・・・ 枝を長く伸ばします。何かに誘引して育てます。
・シュラブローズ ・・・ ブッシュローズとつるバラの中間体のようなタイプです。誘引したり、剪定して形を整えたりします。
・ミニバラ ・・・ 小型のバラです。樹形もコンパクトにまとまります。

ここで誘引を行うのはつるバラとシュラブローズです。

<誘引をする理由>
1番の理由は枝が長く伸びるからです。これらのバラは放っておくと伸び放題になってしまいます。でもそれだけではありません。

バラは通常枝の先に花を付けます。そのまま上に伸ばすと枝数は限られるので花数もそんなに多くはなりません。さらにつるバラやシュラブローズだとてっぺん付近だけしか花が咲かなくて見た目も今ひとつになってしまいます。

ここで、下の方にも枝を付けさせて花を咲かせる必要があります。バラの枝を横あるいは斜め方向に固定することで下の方の葉の付け根からも脇芽が出てくるという性質を利用して誘因によって花をたくさん咲かせるのです。

誘引によっていろいろな仕立て方ができます。最終的に自分のバラをどのように仕立てたいのかイメージしてみてください。

オベリスク仕立てのやり方

バラ「アンジェラ」

冬、オベリスクに巻きつけたところ
オベリスクは4本の支柱からなる園芸グッズでバラの栽培によく利用されます。わが家のつるバラ「アンジェラ」を例に、オベリスク仕立てのやり方を説明しましょう。作業は、葉や花のない冬に行うとやりやすいですよ。

1. 枝の伸びたバラを枝を横に広げた状態にし、株が中心になるようにオベリスクを立てる。
2. 下から順番にビニールタイなどで枝を留めながらオベリスクの外側をらせん状に巻いていく。
3. 枯れ枝や細すぎる枝はカットする。

バラ「アンジェラ」

5月花が咲きだした頃
春になると冬に葉が落ちた箇所から新芽が出てきてこんなにたくさん葉が出てきます。写真は開花し始めた時のもので、下の方にも花がちゃんと付いているでしょう。このあとさらに多くの花が咲きました。

新しい枝はある程度伸びたらオベリスクにらせん状に誘引しますが、新枝は折れやすいので私は暫くそのままにして枝が固くなってから巻きつけています。

このほかオベリスクは、ブッシュタイプの大型のバラの支柱代わりに用いたりもします。

憧れのバラのアーチ仕立て

バラ「ピエールドゥロンサール」

バラのアーチ、憧れますよね。しかしつるバラやシュラブローズならどの品種でもいいかというと、実は他の誘引に比べて条件が多いのがアーチ仕立てなんです。なので、品種選定にあたっては次の点に注意しましょう。

・アーチの大きさに合う品種を選ぶ。
・枝がしなやかで扱いやすい品種を選ぶ。
・病害虫に強い品種を選ぶ。

仕立て方は、シュート(太い枝)をアーチの外側の面にS字になるようにくねくねと留めていきます。内側に枝が入るとアーチの下を人が通れなくなるので外側にゆるめに留めていきましょう。作業は1年中可能ですが、新しい枝は折れやすいので春から秋まではゆるめにカーブさせながら誘引し、冬になって葉が落ちたら本格的に誘引しましょう。

フェンスに這わせる

バラをフェンスに這わせる

お家の外から見た時に一番目に付くのがフェンス。フェンスいっぱいに咲いたバラの花はとても見応えがあります。フェンス仕立ては大きくなる品種向き。太い枝を扱うので、作業は冬場、葉と花のない時期に行います。作業手順は次の通りです。

1. 作業の前に枯れた枝や3年以上経った古い枝、細い枝を切る。
2. その年伸びたシュートをなるべく地面と水平になるようにビニールタイなどで留めながら誘引していく。その時シュートとシュートの間隔は詰めすぎないように。

枝を真横に誘引することにより、春にはたくさんの花を付けます。

壁面に這わせる

バラを壁に這わせる

壁面誘引は大きくなるつるバラ向きの仕立て方です。当然、枝を固定するために錆びない針金やフックのようなものを使わないといけないので誰でもというわけにはいきませんが、壁いっぱいにバラが咲いた光景は壮観です。

壁を痛めたくない場合は壁の前にトレリスを立てて使うのも一案です。この場合はフェンスと同じ仕立て方をします。

バラの夏場の管理

これからの季節、気温が上がり、梅雨時には雨も多くなってきます。バラにとっても今までどおりの管理の仕方では厳しくなってきます。

これから夏にかけてバラを栽培するに当っての注意点を説明していきます。

水やりと肥料

まずは水やり。バラの水やりの基本は、土の表面が完全に乾いていたらたっぷりと。なので土がまだ湿っている場合はあげないでください。特にこれから気温が上がってくると過湿は禁物。根腐れの原因となります。

土が乾いていたら午前中の涼しい時間帯にたっぷりとあげます。鉢植えの場合は、鉢底から水が流れ出るまであげてください。

また日中気温が上がって乾きが激しい時に枝がしなっとしていたら、すぐには水をあげずに夕方以降、気温が下がってからあげましょう。

花を咲かせたあとのバラは体力をとても消費しています。それを補うために肥料は6月の始めに1回、7月の始めに場合によってはもう1回、元肥(鉢植えは置き肥)をあげます。暑さが本格的な時期はあげません。化成肥料の液肥は成長期に使い、暑くなるこの時期はしばらくお休みです。

ちょっと値段が高めですが、有機液肥はおすすめです。私は、薄めの有機液肥を成長期は2~3日に1度、夏場も週1回と雨が続いたあとに株全体にかけています。これをやり始めて株の状態がよくなり花数が増え病気の発生率がかなり下がったように感じます。興味のある方はぜひ試してみてください。なお、液肥は必ず水をやった後に与えてください。

花が終わったら切り戻す

バラ「ポールネイロン」

青い線の箇所で切り戻す
初めてのバラ栽培では、最初のシーズンの蕾は取って株の充実をはかることをおすすめしていますが、開花株を購入したら花はなるべく早めに切りましょう。

切り戻しを行うと、切り戻した一番上の葉の付け根から芽が出てきます。切り戻すところは、元気な5枚葉のついたところで葉が株の外側に向いてついている場所のすぐ上です。株全体の枝の高さを見ながらバランス良くなるように切ってください。上の写真だと青い線を入れた箇所で切り戻しました。

ベーサルシュートが出てきたら・・・

バラのシュート

青い線の箇所で切り戻す
5月から6月にかけてはバラのシュートが伸びてきます。シュートとは新しく伸びた太い枝のこと。株の状態がいいと勢いよく出てきます。そのシュートの中でも根元から勢いよく出てくるのがベーサルシュートです。

ベーサルシュートは、次の世代の主枝になる大切な枝。1年後にはいい花をたくさん付けてくれる枝です。しかし放っておくと養分がそこに集中してしまい株全体を見た場合育ちが悪くなります。なので蕾が付く前に切ってしまいます。切る位置はほかの切り戻した枝と同じ高さのところ。

こうすることにより元気なベーサルシュートに芽がつき枝数を増やせ、さらに株全体に栄養が行き渡るようになります。

ただしベーサルシュートを切らないで育てる品種があります。それはつるバラの各品種です。つるバラは長く伸ばして誘引するため切る必要はありません。

梅雨時は要注意! 病害虫対策

バラハキリバチに切り取られたバラの葉

ただでさえ普段から病害虫が気になるバラですが、梅雨前や梅雨時は特に増えるので注意が必要です。この時期は一年のうちで1番害虫が多くなります。さらに黒点病とうどんこ病の発生率がぐんと上がります。

こまめに観察をして、症状が出ていたら早めに病害虫用のスプレーを吹きかけたりするなど対処しましょう。また雨による泥はねや密集による風通しの悪さ、花びらや葉が落ちたのをそのままにしておいたりするのも病気が伝染する原因となりますので気をつけましょう。

鉢植えの暑さ対策

バラ「ボレロ」

スリット鉢を大きな素焼きの鉢の中に入れた二重鉢
暑くなるとバラの消耗も激しくなります。特に鉢植えで育てる場合、暑さに対するちゃんとした対策を取らないと衰弱して枯れてしまうことがあります。いくつかの対策をご紹介します。

<涼しい場所に移動させる>
半日陰で風通しがいい場所があればそちらに移動させます。

<剪定をする>
枝が茂りすぎると風通しが悪くなり夏バテや病害虫の原因になります。株の中に風が通るように剪定しましょう。

<移動が難しい場合は日よけをする>
よしずや寒冷紗などを利用して日よけをすると多少涼しくなります。

<鉢底と地面との間に空間を作る>
夏の暑い地面の熱が直接株に伝わらないようします。鉢台やすのこ、レンガなどを利用して、鉢底の通風をはかります。

<二重鉢で直射日光からの熱を遮断する>
大きめの素焼きの鉢の中にバラの鉢を入れて二重鉢にします。これだけでも根元の温度がかなり下がります。外側の鉢は白っぽい色がおすすめです。

<鉢の周りにも打ち水を>
夜、水やりする時に、鉢だけでなく鉢の周りにも打ち水をして鉢の周辺も温度を下げましょう。

最初の難関である夏を上手に乗り切ろう

いかがでしたか?

この春からバラを育て始めた方にとって夏は最初の関門です。この記事を参考に上手に乗り切ってください。

次回はいよいよ待ちに待った秋の花を咲かせるための栽培管理について解説します。