基本を押さえれば難しくない! 胡蝶蘭を翌年も咲かせるコツ

冬のこの時期、室内で一際目を引く胡蝶蘭! 見た目も豪華で花持ちもよく、贈答用としても断トツの人気を誇る鉢花です。1鉢あればお部屋がぱっと明るくなりますよね。しかしせっかく素敵な胡蝶蘭を手に入れたものの、育て方がわからなくて枯らしてしまう人が意外と多いんです。今回は胡蝶蘭の開花株を手に入れてから翌年花を咲かすまでの育て方のコツをご紹介します。

胡蝶蘭とはどんな植物?

胡蝶蘭

花の少ないこの時期、胡蝶蘭はお花屋さんや園芸店でとても目立つ存在です。胡蝶蘭の美しく咲き揃った花の前で足を止めて見入ってしまった経験をお持ちの方も少なくないと思います。胡蝶蘭は、贈り物としても断トツの人気を誇り、一鉢あるとお部屋がとても華やかになりますよね。

そんな胡蝶蘭を気に入って購入したり、プレゼントで頂いたりすることもあるかと思います。でも暖かい場所に置いて水さえきちんとやればいいと思って育てると、だんだん元気がなくなって、ついには枯れてしまうなんてこともよくあるんです。そのような訳で胡蝶蘭は、栽培の難しい植物だと思われています。

実は胡蝶蘭は、そんなに栽培の難しい植物ではありません。洋蘭の中でもとても丈夫で簡単に花を咲かせることができるんです。せっかく手に入れた胡蝶蘭。正しい栽培方法を知って翌年も花を咲かせましょう。

蝶なの? 蛾なの? 名前の由来

胡蝶蘭とはどんな植物なんでしょう?
原産地はインドやスリランカ、フィリピン、マレーシア、パプアニューギニア、台湾、中国南部などの東南アジア地域とオーストラリアの北部といった熱帯地域。樹木などに着生し空気中から水分を吸収する着生ランの一種です。

蝶のような花の形から日本では胡蝶蘭と呼ばれます。学名はPhalaenopsis(ファレノプシス)といい、これは「蛾のような」という意味です。

胡蝶蘭は単茎性のランです。単茎性とは、他の多くのランのように新しいバルブをつけて増えるのではなく、1つの株が成長していくもの。成長といっても大きくなるわけではなく、葉と根を更新していくのです。なんと胡蝶蘭の寿命は50年もあるそうですよ。

胡蝶蘭の品種は?

胡蝶蘭にはランの中でもとりわけ品種が多く、15.000種以上もあるとのこと。そのため特定の品種名で分けるというよりはサイズや色で分類する場合が多いです。

サイズで分ける場合は、花のサイズが11~15cmが大輪、3~6cmのものが中輪、2~4cmが小輪となります。

色は白系、ピンク系、黄色系、赤系、グリーン系、ブルー系があります。

初心者の方なら小輪のピンク系が花芽が付きやすくてオススメですよ。

贈り物として人気があるのには理由がある

胡蝶蘭は見た目の豪華さ、花持ちの良さなどから贈り物として大変人気があります。開花株は1年を通して流通していますが、本来の花期である冬の開花株なら、条件にもよりますが2ヶ月ぐらいは花を楽しめます。

また「幸福が飛んでくる」という花言葉からお店などの開店祝いなどとしてよく贈られます。

育てやすくて病害虫が少ないのも魅力ですね。

胡蝶蘭の開花株を手に入れたら

今では1年中開花株が入手できる胡蝶蘭ですが、手に入れるのに一番のオススメ時期は本来の花の時期である冬です。何故冬かというと、その後の成長などを考慮して一番自然な形で栽培ができるからです。

なので冬に開花株を手に入れたらということで説明していきます。

快適な状態にするためにはラッピングは取る

素敵なラッピングを施された胡蝶蘭は、そのまま飾りたいところですよね。ですがこのラッピング、通気性や排水性のよい環境を好む胡蝶蘭にとっては邪魔そのものなんです。これが原因で調子を崩すことだってあるんです。家に持って帰ったらラッピングはすぐに取ってしまいましょう。

冬場に絶対守ってもらいたい温度条件

原産地を見てもわかるように、胡蝶蘭は日本よりも暖かいところで育つランです。好む温度は15~25℃と、洋ランの中では高め。冬場の温度管理には細心の注意が必要です。

できれば1日中15℃以上に保ちたいところ。これなら冬の間も成長が止まらずに良い状態を保てます。集合住宅の中層階以上なら夜間でもこの温度は保っているところが多いようですね。

しかし住環境によっては夜間の温度がそこまで保てない場合も多いと思います。その場合は最低温度が7℃を下回らないように管理してください。この7℃というのは胡蝶蘭が活動を停止する温度で枯れないための最低ラインです。

特に夜間の窓辺は冷えるので、鉢を部屋の真ん中や、高いところに移動するだけでもかなり違ってきますよ。工夫してみてください。

胡蝶蘭の好む日光量

植物の成長には日光が不可欠ですが、好む光の量は植物によって異なります。胡蝶蘭は光は好きなものの、直射日光は苦手。レースのカーテン越しの光がちょうどいいんです。

窓辺に置く場合は、曇りや雨の日はガラス越しで、晴れの日はレースのカーテン越しに日に当てましょう。うっかり直射日光に当ててしまうと、葉焼けをおこしてその部分が枯れてしまいますよ。注意してください。

枯らしてしまう原因は間違った水やりのタイミング

胡蝶蘭は温度管理さえしっかりしていれば、元来とても丈夫なランで、病害虫で枯れるということも滅多にありません。それなのに枯らしてしまう人が多いのは何故でしょう?

それは水をやり過ぎてるからです。原産地では胡蝶蘭は大きな樹木に着生しており、根はむき出しの状態です。なので、鉢の中で常に湿った状態だと根腐れを起こしてしまうんです。

水は「完全に乾いてからやる」を徹底してください。特に水苔に植えている場合は、根元が乾いてても鉢の中にはまだ水分が残っていますので、根元が乾いてから2日くらい待ってあげます。私がやっているより確実なチェック方法は、鉢の底の穴から水苔を触ってみることです。もし乾いていれば水をあげます。

美しい株を保つために湿度は大事

上の水やりの項目では根が常に湿った状態はダメと書きましたが、胡蝶蘭自体は湿度を好みます。

湿度を上げる方法でオススメなのが葉水です。毎日、葉の表と裏、それに露出した根に霧吹きで水をかけてあげてください。

葉水は株の状態を良くするとともに病害虫の予防にもなります。

ついやってしまう肥料に関する間違い

胡蝶蘭はよほど高温栽培をやっている場合は別ですが、基本、冬には肥料を与えません。冬は活動を低下させている休眠期ですので、そもそも余分な栄養は必要なく、下手に与えると根腐れの原因となります。

花を2度咲かすことについて

胡蝶蘭の花期は年に1回です。花が終わったら早めに花茎を切ります。しかし、実はバラなどで切り戻しをして2番花が楽しめるように、胡蝶蘭でも2番花を楽しむことができるんです。

やり方は、咲き終わった花茎を根元からではなく下から3節目より少し上を切ればいいのです。するとそこから新たな花茎が伸びてきて花を付けてくれます。2番花は1番花ほどはたくさんは咲きませんが、株の状態がよく元気な葉が5枚以上ある場合は試してみてもいいと思います。

ただし葉が4枚以下の場合や株に元気がない場合は、株自体が消耗するのでやらないようにしてください。

胡蝶蘭の植え替え

花が咲き終わった胡蝶蘭は、株によって異なりますがだいたい2年に1度くらいのペースで植え替えを行います。植え替えの適期は成長期である4~6月。

植え替えの手順を写真を交えながら説明しましょう。

こんな株は植え替えが必要

植え替えが必要なのは次のような株です。

・2年以上植え替えていないもの
・植え込み用土が古くなってたり腐っていたりするもの
・一つの鉢に複数の株が植え込んであるもの
・成長して鉢が窮屈になっているもの

植え替えを行う手順

植え替え 準備するもの

まず次のものを準備してください。

・用土
・鉢
・消毒したハサミ
・割り箸
・マグアンプK(バーク植えの場合)

用土はバーク又は水苔どちらでもいいです。水苔植えのものをバーク植えに、バーク植えのものから水苔植えに変えることもできます。

バーク植えをする場合はバーク自体が水はけが良すぎるので、鉢は必ずポリポットを用います。

水苔植えする場合は、鉢は必ず素焼きのものを使いましょう。また使用する水苔は、前もって水に戻しておきましょう。

花茎が残っている場合は元から切っておきましょう。

植え替え 古い鉢から株を取り出す

まず根を傷つけないように鉢から丁寧に取り出し、周りについている水苔やバークをほぐしながら全て取り除きます。

次に腐っていたり折れて栄養が行かなくなっている根を消毒したハサミで切って取り除きます。触ってブヨブヨと柔らかい根は腐っていますよ。株を裏返してよく見ながらやってください。

植え替え 根を水苔で巻く

水苔植えの場合は鉢に入れる前に、根の周りに水苔を入れて鉢の大きさまで巻いていきます。(写真参照)
この時に力を入れて根を折らないように注意してください。

植え替え 新しい鉢に植える

水苔植えは、そのまま鉢に植えます。隙間に割り箸などを使って水苔を入れ込んでください。

バーク植えは、最初鉢底の部分にバークを入れてその上にマグアンプをひとつまみ入れてさらにバークを入れておきます。その上に胡蝶蘭を入れ、根の間にバークを入れていきます。隙間には割り箸などを使って入れましょう。

両方とも鉢の縁から2cmくらい下のあたりまで用土を入れます。

植え替え後は根が傷んでいて病気を発生させないために乾燥させる必要があります。1週間ほど水をあげないようにしてください。

季節ごとの管理

冬場の管理は「開花株を手に入れたら」の項目で説明しましたので、この通りに行えばうまく育つはずです。ここからはその後の季節の管理について説明していきます。

春の管理

冬場と管理は同じで、レースのカーテン越しの暖かい場所で管理します。日差しが徐々に強くなりますので葉焼けを起こさないように気をつけてください。遅霜などで寒くなる場合がありますので置いている場所の最低気温にも注意してください。

暖かくなってくると本格的な成長期に入ります。胡蝶蘭はあまり多くの肥料は必要ありませんが、洋ラン用の液肥などの肥料をさらに薄めてあげるとよく育ちます。

夏の管理

天候によって鉢の乾きがかなり違ってきますので注意してください。また高温多湿な夏は水苔が痛みやすいので通風に配慮します。冷房の風が直接当たらないようにしてください。

引き続き成長期ですが、あまりに暑いと夏バテをします。気温が高い時や元気が無い場合は肥料は控えます。

秋の管理

引き続き成長期です。この時期は花芽を付けるための栄養を蓄えていく時期ですので、気を抜かずに管理してください。

9月いっぱいまで定期的に薄めの肥料をあげてください。

花芽が伸びて開花まで

胡蝶蘭 花芽

冬から栽培を始めて、春、夏、秋と成長してきた胡蝶蘭は秋から冬にかけて花芽を形成し、やがて待望の花を咲かせます。

ここからは花芽が出てきて開花までの様子を説明していきます。

花芽を作るための条件

一般的に洋ランは、花芽をつけるにはかなりの条件をクリアしなければならないものが多いです。そうやって一生懸命管理してきても花が咲いてくれないこともしばしばあるんです。しかし胡蝶蘭は違います。気温と葉の数さえクリアすればほぼ確実に花を付けてくれます。

胡蝶蘭は気温が18℃の状態で一定期間置くと花芽が形成されます。栽培環境にもよりますが、大輪系だと12月ごろ、中輪や小輪系だと11~12月ごろに花芽ができるようです。

ただし葉の数が一定枚数ついていないと栄養不足で花芽がつかないこともあります。花茎が何本付くかの目安は、葉が4枚について1本といわれます。なので最低でも状態のいい葉が4枚必要となり、8枚以上なら2本の花茎が伸びてきます。

開花する時期の目安

胡蝶蘭 開花

胡蝶蘭の開花株は冬の早い時期から出回っているのに、家庭で育てるとその時期には花が咲かない場合があります。これは栽培環境の最低気温によって花の成長に違いが出るからです。

最低気温18℃以上で栽培すれば成長スピードも速く1月ごろに開花します。
最低気温15℃以上だと2~4月に開花します。
最低気温7℃以上だと5~6月の開花となります。

なお小輪系はこれよりも時期が早く咲きます。わが家では最低気温13℃で栽培していますが小輪系胡蝶蘭の花芽が伸びてきた写真の状態が1月始め、すぐ上の咲き始めが3月始めです。

胡蝶蘭 開花2

胡蝶蘭は大変花持ちがいいので1ヶ月以上の期間咲きます。上の写真はそろそろ咲き終わりに近い状態でだいたい5月の終わりごろのものなので開花開始から2ヶ月半たったものですね。花を楽しめる期間はだいたい3ヶ月くらいでしょうか。

香りについては、大半の胡蝶蘭は殆どありません。しかし中にはちゃんと香る品種もあります。写真の株もそうで、カトレアに似た香りがします。

胡蝶蘭の栽培は難しくない

いかがでしたか?

胡蝶蘭は病害虫も少なくて、気温に日当たり、水やりさえ間違いなくやれば翌年必ず花が見られ、洋ランの中でも育てやすい植物です。

この時期豪華に咲き揃う胡蝶蘭を手に入れたら、ぜひ翌年も花を咲かせてください。