新宿発ー華麗なる菊の世界!

日本人に古来から愛されている菊。実は毎年、新宿御苑で大規模な展示会が開かれています。今回はそんな「菊」をテーマにその魅力に迫ってみたいと思います。

新宿の大庭園、新宿御苑

(写真)大作り花壇

一本の株から500本近い菊の花を育てる技法が使われています。
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新宿御苑とは、東京ドームが軽く10個入ってしまう、面積約18万坪という広大な土地を持つ環境省が管理する国民公園です。

新宿御苑と菊

新宿御苑は、高遠藩の城主、内藤氏の江戸屋敷に始まります。その後、明治39年に皇室の庭園になりました。また、明治元年に皇室の紋章として菊が定められ、宮内省で皇室を中心として「菊花拝観」が明治11年に赤坂離宮で行われました。

その背景から昭和4年、新宿御苑でこの「菊花壇展」が定着しました。
新宿御苑の東側を中心に7か所、菊花壇として設けられています。それでは、実際に上の池周囲に設けられた花壇を見ていきましょう。

懸崖作(けんがいづく)り花壇

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野菊が断崖の岩の間から垂れ下がっている様子を模しています。新宿御苑独特の青竹を用いた上家(うわや:仮設の屋根)と鮮明な菊の色の調和が観賞のポイントです。ちなみに、手前の小川や岩も新宿御苑の造形を生かしたものとなっています。

懸崖作(けんがいづく)り花壇(部分)

花の小さな小菊を滝が流れるかの如く演出しています。
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伊勢菊丁子菊嵯峨菊花壇

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伊勢菊、丁子菊、嵯峨菊花壇は、その名の通りこれらの菊を集め、展示しています。写真はその中の嵯峨菊で「箒作(ほうきづくり)」に仕立てられています。

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写真は丁子菊(ちょうじぎく)です。「一六(いちろく)作り」という仕立て方になっています。この花壇は、三種の地方色溢れる古典菊を配色よく植えこんであるのが特徴です。

丁子菊(ちょうじぎく)

インフォメーションセンターに置かれている解説用の生け花
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大菊花壇

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大菊(おおぎく)とは菊を代表する一品種を指しています。花の中央を花弁がくるみこむように丸く大きく咲く特徴があります。「手綱うえ」と呼ばれる神馬の手綱模様に見立てた新宿御苑独自の様式を持つ植え方で、39品種311株の大菊を黄色、白、紅の順番に植えつけています。また、全体の花が揃っており、美しさとともに高い技術も伺えます。明治17年より作り始めています。

肥後菊花壇

古くから肥後(熊本)地方で愛され作られてきた肥後菊は、一重咲きの古典的な菊です。主に武士の精神修養として発達してきたという経緯があります。その栽培方法、飾り方などは秀島流という熊本で確率された厳格な様式に基づいています。新宿御苑では昭和5年から作り始めました。

一文字菊(いちもんじぎく)菅物菊(かんものぎく)花壇

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一文字菊(いちもんじぎく)は花弁数16枚程度一重咲き、大輪の菊です。花の形から「御紋章菊」とも呼ばれます。管物菊(くだものぎく)は、その名の由来のように筒状に伸びた花弁が放射状に開く大輪の菊で、別名糸菊とも呼ばれます。新宿御苑では大正十四年に作り始めています。

江戸菊花壇(えどぎくかだん)

江戸菊花壇

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江戸菊は、その名のとおり、江戸時代に江戸(東京の意味)で発展した古典菊の一つです。新宿御苑の菊花壇の中でも、最も古い歴史を持っており、花の咲き始めから様々に形(ものによっては色も)が変化していく特徴があり、そういった「花の変化」を観賞します。作り始めは明治11年です。

大作り花壇(おおづくりかだん)

大作り花壇の一番手前にある株
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初冬に出る芽を一年かけて枝数を増やしていきます。一株からなんと、数百に花を半円形に形よく仕上げていく方法で、「大作り」と呼ばれています。これも新宿御苑独自の様式で、全国各地で見られる千輪づくりのさきがけとなっているそうです。

新宿御苑の場合は、毎年、3つのこの巨大な株がお目見えします。

菊の基本事項

キク科の半常緑多年草。菊と言った場合、通常はイエギクとよばれる栽培品種のことを指します。ここ新宿御苑御苑でもそうですが皇室の紋としても定められており、品格の象徴となっています。もともとは中国が原産で、薬用や食用として二千年も前からつかわれていました。日本では8、9世紀ごろ、平安時代から鑑賞用として栽培され始めました。
<種類>
まず、花の大きさから、「大菊」「中菊」「小菊」に分類されます。
〇大菊・・・直径18-20cm。大輪であり、「三本仕立て」と呼ばれる一輪一株で一つの鉢に三本を植える仕立て方で楽しまれることが多いようです。

〇中菊・・・直径9cm以上-18cm未満。もともとは江戸菊限定の呼称でしたが、現在は洋菊なども含まれます。

〇小菊・・・直径9cm未満。和菊に使われる呼び名で、ミニ盆栽などで楽しまれます。
<花の形状による呼称>
〇一文字・・・一重咲き。別名「御紋章菊」とも呼ばれます。それは皇室の紋になっていることに由来します。
〇菅物(くだもの)・・・くだ状の花弁が火花を散らしたように放射状に広がっているものを指します。その大きさ(管の太さ)によって、「細管」「間管」「太管」という名称に分かれます。

新宿御苑の基本事項

開園時間 : 9:00-16:00(閉園は16:30、夏場は、延長されることもあります)
休園日  : 毎週月曜日(月曜祝日の場合はその翌日)、また、年末年始
特別開園 : 春:3月25日~4月24日(桜の季節です。新宿御苑は、都内、都心では屈指の桜の名所です)、11月1日~15日(この”新宿御苑菊花壇展”です)この期間は休まず開園します
入園料:一般200円、小中学生50円 年間パスポート(有効期限一年)一般2000円、高校生1000円、小中学生500円。※桜の季節は、入場券の購入も含めて大渋滞します。このパスポートがあると2,30分も掛かる入場が一瞬で通過できます。桜の時期を含め、何回も訪れる方には、非常にお勧めです。

駐車場:大木土門横にあり、利用可能時間は8:00~20:00(普通車は3時間まで500円、以降30分ごとに100円)