秋本番! 植物園に出かけよう!(神代植物公園編)

この時期、お勧めなのが、植物園です。都心やその近辺には、植物を観賞できる大規模な公園が数多くあります。手軽にお出かけできて、お金もかからない、いわばガーディナーにとっては「行楽の超穴場」です。今回は、その代表格のひとつ「神代植物公園」へ、ふらりと「お出かけ」してみました。

はじめに

神代植物公園の温室で咲くハス

仏教の世界ともかかわり深いハス。桜と同様、どこかこの世以外とのつながりをもっているのでは・・・と思わせるような・・・。この花には、そんな神聖、神秘的な趣があります。
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いつしかかなり寒さを感じる季節になりました。とはいえまだ、行楽にはベストなシーズンですね。でも、遠出するとなると、渋滞に、はまったり、それに、何処へ行っても、人、人、人・・・だったり・・・。癒しを求めて行ったはずの地が、逆に疲れてしまいそうです。

そこで、考案したいのは、あえて、いわゆるシーズンオフである「植物園」へ出かけてみる・・・というのはどうでしょうか? この時期は、人も少なく、のんびり巡れます。さらに、ただ単に、ゆっくりのんびりできるだけでなく、あなたの新しい「ガーデニングライフ」へのアイディアを広げるヒントが沢山詰まっています。今回はそんな中のひとつ、『神代植物公園』を取り上げてみたいと思います。

「神代植物公園」とは

神代植物公園内

なんとなく、綺麗な一角があったので撮ってみました。コキアやアロエなど身近な植物から出来ているので、マイ・ガーデニングのご参考にいかがでしょう? 奥にちらっと見えているのが温室です。
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都心から少し離れた、木々が生い茂る武蔵野の大地の一角にこの「神代植物公園」はあります。すぐお隣は、蕎麦などで有名な深大寺があります。こちらは、観光地としても有名で、連日沢山の人が訪れています。それにしても同じ「じんだい」なのに全く当てられている漢字が違うという実に不思議ミステリーな場所です。
ここは、もともとは、都の街路樹などを育てる場所として使われていました。戦後に緑地として公開されたのち、昭和36年に都内唯一の植物公園、「神代植物公園」として開園しました。都内に桜の名所などで有名な公園は沢山ありますが、「植物公園」を名乗るのがここだけだそうです。

今まで何度も都内の色々な公園に訪れましたが、そういう視点で考えてみたことはありませんでした。都内の桜の名所は、その時期、何度も足を運んだのに、ここだけが「植物公園」なのだそうです・・・なんとも想定外です(笑)。

神代植物公園の温室前から景色

神代植物公園の温室前から景色です。手前がここで有名な「バラ園」です。バラは二期咲きのものが多く、この時期に咲いているものは、あまり多くありませんでした。もうしばらくたつと、本格的な秋咲きのシーズンを迎えるので、沢山のバラが見られます。
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まず、交通手段をご紹介します。1つめは、なんといっても、マイカーです。都心かその近くにお住いの方だと、ドライブとしては逆にちょっと近すぎて物足りないかもしれません。でもここ、神代植物公園は、駐車場が完備されているため、マイカーをお持ちの方、この時期の利用がおすすめです。臨時駐車場や第二駐車場などもありますが、この時期であれば、週末でも、正門入り口から近い第一駐車場が空いていることも多いです。

ただし、桜の名所であるので、他の都内の大きな公園もそうですが、桜の時期、4月頃は、大変混雑しています。たとえ、臨時駐車場でも、待ちがかなり発生するので、来園の際は、十分ご注意ください。

2つめは、バスです。JR三鷹駅から「深大寺」行のバスと京王線調布駅から「神代植物公園」「神代植物公園前」行のバスが出ています。隣り合っているとはいえ、「深大寺」から「神代植物公園」までは距離があるので、「深大寺」に寄る予定のない方は京王線調布駅からのバスがお勧めです。

また、京王線調布駅から出て「神代植物公園」を経由するバスは本数も多く、植物園の正門入り口などに停留所もあり、そういった便利さでも、こちらがおすすめです。たとえば、こちらであれば、本数が多いので、たとえ人気の桜の時期でも、バスを一本見送れば十分程度の遅れで到着できます。また、桜の時期は臨時便を増便しています。

この時期、ここで大きく目をひいたものの一つ・・・ダリア

ダリアーマドレーヌムーン

大輪で、「ビオニー咲き」または、「ボール咲き」、「デコラティブ咲き」にも近いと思われる白い花。いかにも、ダリアといった風格があり、なかなかです。
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正門から入り、右手へ進んでゆくと、ダリア園があります。ここではこの時期、沢山のダリアを観賞することができます。
「ダリア」というと、私にとっては、単に派手な花のイメージが強いという印象でした。しかし今回、見学してみて、その花のバリエーションが非常に多いということに気づかされ驚きました。そんな点からも「ダリア」の人気が非常に高い理由の一つであるようです。

これから、実際に見てきた花を写真で紹介しますが、まさに、想像を絶するような沢山のバリエーションに富んだ種類があります。単純に分類しても、花弁の数、花の色、大きさ、咲き方、そして、花弁の形まで、文字通り、千差万別なものがあります。
今回、ここ(夏秋神代植物公園)で、見られたものは、写真に収めたものの、ごく一部にすぎませんが、バリエーションとして代表的なものがいくつかあったので、ご紹介します。

ダリアの基本情報

ダリア ー テスブルックオードリー

一見ぱっと見だと一重の「マーガレット」のようですが、よくよく見ると、内側にもう一回り小さな花びらがあります。つまり「二段咲き」です。ダリアの世界では、この咲き方を「コラレット咲き」と言うそうです。
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元々、ダリアはキク科の植物で、南米、メキシコからグァテマラに自生しています。その特筆すべきは、花の大きさ、草丈、花の形、そして色など、変位の幅が大きいことで、最大の特徴です。そんなことに関連するのでしょうか、古代アステカ文明では、神聖な花とされ、庭で栽培されるなど、古くから長く愛されてきたという経緯もあります。
ヨーロッパでは、南米メキシコシティの植物園からスペインのマドリード植物園に種が送られてきたのがきっかけで栽培が始まりました。「ダリア」の名前は、当時のマドリード植物園の園長が植物学者「アンドレアス・ダール」の名にちなんで名づけられたそうです。

ダリア - 紅さんざ

和名のついている花です。大輪で、花の咲き方は、平たい花弁がびっしり中心まで、しかも整然と並ぶタイプの「デコラティブ咲き」です。
「ダリア」は花を観賞する植物の中でも群を抜いて、『華やか』なものといえると思います。分類法は様々あるかもしれませんが、例をいくつか、ご紹介いたします。

1.大きさ(花の直径)による分類

まず、何といっても花の大きさや、株の背丈に大きな変位があります。花の大きさで分類すると、下記のようになります。

・極小(3cm以下)
・小(3-10cm位)
・中(10-20cm位)
・大 (20-26cm位)
・巨大(26-30cm位)
・超巨大(30cm以上)
2.花の形による分類

ダリアには花の大きさだけでなく、様々な、しかも変わった「花の形」があり、それがこの花の大きな特徴となっています。
・シングル咲き・・・一般の花と同様な一重の咲き方です。

・コラレット咲き・・・内側に小さな花弁が別にもう一重重なる二段咲き。上記写真の「テスブルックオードリー」がこれに当たります。

・ビオニー咲き・・・花弁が二~数段になって咲く咲き方。上記写真の「ダリアーマドレーヌムーン」がこれに当たります。

・デコラティブ咲き・・・平たい花弁が中心までびっしり、しかも整然と並ぶ咲き方です。上記写真の「紅さんざ」がこれに当たります。

・オーキッド咲き・・・花弁が内側にまるまって、半円となる咲き方。下記写真の「ミッドナイトスター」がこれに当たります。

ダリア - ミッドナイトスター

ミステリアスで官能的な名前にぴったりな花です。こちらは、花弁が内側に巻き込まれ、半管状になるという、やはりダリア特有の咲き方です。「オーキッド咲き」という名前がついています。
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温室で見られたもの・・・スイレン

ここ、神代植物公園の大きな特徴のひとつは、大温室があることです。今回は、水連が見られました。
水連は、大きく分けて、熱帯のものと温帯のものに分類されます。温帯のものは、日本でもよく見られるもので、(たとえば、上野公園など有名ですね)熱帯のものは寒さに弱く、ここ、神代植物公園のように温室で育てられています。

熱帯水連「ブルーインデアンゴッデス」

温帯スイレンにはあまりない紫色の花。熱帯スイレンの特徴である葉の先のぎざぎざも見て取れます。
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※ 熱帯水連と温帯水連の違い
ここ、温室で育てられているスイレン(スイレン科スイレン属の植物)は日本などでよくみられる温帯のスイレンにはない、青や紫の花をつけるものがあるそうです。熱帯のスイレンの特徴は、水面から10cm程度立ち上がって花をつけるのに対し、温帯のスイレンは水面に浮くように花をつけます。

また、もう一つの大きな特徴は、葉に切れ込みがあるのが、熱帯スイレンで、切れ込みのない丸い葉が温帯スイレンということで見分けられます。

熱帯水連「ニンファニア・ギガンティア・アルバート・デ・レクタンク」

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※蓮(ハス)と水連(スイレン)

最近、植物の世界で、明らかになってきたことの一つとして、「蓮(ハス)と水連(スイレン)」があります。ここまで、あまり意識していませんでしたが、最新の研究では、この二つ、実はかなり違いがあるようです。

蓮のカタク(中心がハチの巣のようなもの)

ここ、神代植物公園、蓮も沢山あったのですが、こちらはすでに花が終わり・・・。カタクが見て取れます。
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まず、蓮の特徴は、花が終わると、カタク(中心がハチの巣のようなもの)ができますが、水連はこれがありません。葉の特徴としては、撥水性があり光沢がないのが蓮で、逆に光沢があるのに撥水性がないのがスイレンです。根はご存じ蓮は「レンコン」になりますが、スイレンは種類が多く、連根状にはならないそうです。
じつは、ここ、神代植物公園、このような「蓮」も沢山展示しています。しかし、先ほど説明した「温帯」のものであり、時期的に花は全くなく、わずかに「実」の跡(カタク)が残されるのみでした。ちなみに「蓮」の花期は7、8月です。

神代植物公園の「変化朝顔」

神代植物公園の「変化朝顔」

花も変わった形ですが、葉にも注目です。
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江戸時代に大ブレイクした「変わり朝顔」。何年か前に聞いた情報では、その珍しさゆえ、「投機の対象になる」という理由で、植物園(ここ、神代植物公園だったかは覚えていない・・・)で、鍵をかけて、厳重に管理している様子を紹介していました。

でも、今は・・・。後で調べて分かってきたのですが、数こそ少ないようですが、堂々と販売されているようです。とはいえ、「珍しいもの」であることには違いがないので、写真に収めてみました。

神代植物公園の「変化朝顔」その2

こちらも花より、葉の形が印象的です。残念ながら、具体的な品種名は分かりませんでした。
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最後に

ダリア

残念ながら名前を失念してしまいました。
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今回、神代植物公園を中心にレポートしましたが、私にとって、一番ショックだったのは、ここが、「都内、唯一の植物公園である」ということです。個人の趣味として、桜が好きで、桜の時期には、都内で色々な所にお出かけしています。

たとえば、都内で植物がみられる大きな場所、新宿御苑、小石川植物園、小金井公園、砧公園、国営昭和記念公園、多摩森林科学園など、毎年多数の『公園』系を訪れていますが、その中で、唯一の植物公園がこの「神代植物公園」なのだそうです。

それはさておき、この時期の『神代植物公園』の植物たち・・・。ダリアの種類の幅が大きいことに驚き、美しい、そして珍しい熱帯スイレンの花を見て、やはり珍しい(というか初めてみた)変わり朝顔などを見ることができました。どれも出かける前には想像すらしていなかったものばかりで、まさに「百聞は一見に如かず」といったところでしょうか。

「秋の日は釣瓶落とし」ということわざどおり、一気に昼間の時間が短くなりました。午後になると、日差しも一気に夕方になってしまいます。なので、ここ神代植物園ももちろんですが、他の植物関連施設も、お出かけは午後よりも午前中がお勧めです。

★その他情報(これからの季節の花など)

温室で咲くスイレン

こちらも名称失念・・・。なので、紹介枠からもれてしまいました。美しい花なので、枠外でありますが、こちらでUPします。
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<神代植物公園 基本情報>
開園時間  午前9時30分ー午後5時(最終入場は4時まで)
休園日   毎週月曜(月曜祝日の週は、火曜日)、12月29日ー1月1日の年末年始
無料公開日 5月4日(みどりの日)、10月1日(都民の日)

入園料金  一般:500円 団体:400円 65歳以上:250円(団体だと200円) 
中学生:200円(団体だと160円) 小学生以下、都内在住の中学生、身体障害者手帳持参者とその付添人は無料
温室のものは、ほぼ一年中見られるように調整されている(というよりも、その名の通り一年中同じ気候を保っていると言った方が正解)ようですが、野外のものは当然、見られるものが細かく季節ごとに変わってきます。ザックリですが、参考になるかと思いますので、挙げておきます。
・キク(11月~12月なかば)
・ロウバイ(1月~2月いっぱい)
・クリスマスローズ(1~3月)
・椿(1月~4月)
・梅(1月なかば~3月なかば)
・フクジュソウ(2月上旬~2月いっぱい)