知れば知るほど深い!【苔の生態】

「苔」には独自の生態があり、それを知ることで育てやすくなります。全国至る所でみかけるコケですが育てるとなると難しいです。生態についてと、「盆栽」に使用する際におすすめのコケを選んでみました。美しい画像も必見です!

苔の生命力の強さ

文明が滅び、地球上から人間がいなくなったら…?
人間が存在していなかった時代の自然環境に、何年で戻ることが出来るのでしょうか?

真っ先に、建物はコケの緑で覆われ、旺盛なつたの葉が絡まっていくことが想像できます。人間が滅びると、たった5年で、地球の地表と建物はコケや植物で覆われます。

その20年後には、建築物が倒壊し始め、地球はもとの緑豊かな生態系を取り戻す、と言われています。植物の生命力恐るべし。

強く、静かに、着々と子孫を増やしていく。神秘的にも見え、得体の知れない不気味さも感じる…。しかし、人間の手で育てようとすると簡単に消えてしまう。

適応する環境に胞子がたどり着けば、いとも簡単に地表を覆い、緑豊かな絨毯を広げてくれる。コケは知れば知るほど興味深いものです。

自然界の中では至る所で見かける、生命力が強いコケ。でも、自分の手で育てようとすると、生えて欲しくないゼニゴケがはびこってしまったり、白色にミイラ化したり、チリチリに葉が巻いてしまったり…。

コケがしっかりと自分に合った土地に胞子を着地させないと生育できない性質があります。いずれにしても、苔の生育には温度と湿度の管理が重要になってきます。生態を知れば盆栽の下で繁殖させることに成功します。

苔の生育方法

苔は光合成をする植物ですが、体の本体に繊維管(根から養分を取り込む器官)はなく、根の様に見える部分は、「仮根」と呼ばれ、ほとんど水分を吸い上げる力はなく、体を支えているのみの機能です。

コケの生育環境を整えるのには、空中湿度を高めることが大切です。自然界でも、流れる滝のそばや森や林の中など空中湿度が高い所で良く育ちます。養分の取り入れ方は、雨が降った時に、体の表面から養分・水分を取り入れています。

苔の分類

苔は、蘚類、苔類の大きく2形態に分類されます

蘚類(せんるい)
直立型で、盆栽の下草によく使われるのはこの形態です。スギゴケ・タマゴケなどに代表される蘚類は見た目が樹木を思わせる様な趣で胞子嚢をのばし受粉を待つ姿は風情があり下草として重宝されます。胞子嚢を伸ばすのは蘚類です。

苔類(たいるい)
這うように広がります。ジャゴケ・ゼニゴケなど、じめじめした場所に広がる厄介な苔です。見た目が海藻に似ていて、地表をすき間なく覆ってしまうため、土の通気性が悪くなり、見た目も悪く駆除するのが困難です。
※苔類の中に角が生えたような突起を出すツノゴケ類がありますが、盆栽では他の苔類と同様に使われません。

苔の繁殖方法とは?

蘚類は、朔柄(さくがら)を伸ばし先端から胞子を飛ばします。コケの胞子は紫外線やかなりの低温、乾燥にも強いことが知られています。
胞子の大きさは、20マイクロメートルほどです。小さく肉眼では見えません。風に乗り、時には成層圏でも見られるほど高く広範囲に飛散します。受精の時期にはコケの胞子がたくさん飛散していると考えられます。「日照」「気温」「湿度」と自分の生育環境にあった場所にたどり着くことが出来た胞子のみが繁殖することが出来るのです。

盆栽に使用するコケ

ヤマゴケ「アラハシラガゴケ」

こんもりと丸く茂る美しいコケです。「景色盆栽」によく使われます。

・直射日光は苦手で日陰を好みます。
・空中湿度が高い環境。
・地表は、水はけが良い場所。
・山の木の根元などで見かける。都会ではあまり見かけない。
コケは色や形などさまざまな物があります。盆栽の土の表面を覆うのには、日照に強く乾燥に耐える種類の苔を選ぶのが適当です。見た目も風情があり、小さな鉢の環境に最適とされる直立性のスギゴケ・スナゴケ・這う性質を持つハイゴケの3種類について解説します。
砂苔(スナゴケ)

温暖化対策でビルの緑化が進められていますが、ビルの屋上の緑化に使用されています。日差しにも強く、乾燥にもよく耐えます。黄緑色のからだは、気温-20℃から70℃まで耐えることが出きます。踏みつけられることに対しては弱いので、屋外に植え付ける時には、人が歩かない場所を選んで植えます。

スギゴケは体から水分が蒸発するのを防ぐ機能はありません。乾燥すると成長を止め水分が補給されるのを待ちます。雨が降ると、養分・水分を補給して元の水分たっぷりの絨毯に戻り成長を始めます。この日照に強く、気温を適温に保つ性質を利用して屋上緑化に使用されています。

杉苔(スギゴケ)

苔庭と言えばスギゴケです。
1から育てるのが難しいのですが、順調に育てば年に3~5cm伸びます。
日差しを好みますが、乾燥に弱い性質です。水分が少なくなると、葉を閉じてしまいます。

秋に朔柄(作柄)と呼ばれる胞子を先端に付けた茎を地表に伸ばし、春の受精に備えます。作柄は花の様に見えます。乾燥すると茶色に変化し枯れた様に葉を閉じ丸まって見えます。こうした状態になっても水を与えると、瑞々しく美しくよみがえります。

クサゴケ

主に、朽ちた木の上で生育します。
クサゴケは、公園にある朽ちたテーブルの上などで見かけるのではないでしょうか?朽ちた木の表面を覆い湿度と温度を保ち、木の分解を助ける菌類の増殖を促します。

クサゴケは朽ちた木の腐食を促す菌類が派生させる二酸化炭素を吸収して生育します。共存関係を保っているのです。キノコなどの菌類が見られるのも、クサゴケが他の菌類を繁殖させ、共存している生態からなるものです。

這苔(ハイゴケ)

文字通り横に伸びるタイプの苔で、乾燥に強く、成長が早いのが特徴です。這性の茎は、10cmほどの大きさに育つこともあり、田のあぜ道・日当たりの良い草むらなど、全国いたるところで見られます。小さいシダ類を思わせる風情で、くすんだ黄緑色~緑色の葉が特徴です。日照・乾燥にも強いことからコケ玉作りに使用されるのは、このハイゴケです。

コケ玉をインテリアに

コケを身近に。コケ玉の作り方です。

・ケト土
・赤玉土
・腐葉土
・山砂
・木綿糸

ハイゴケ

①ビニール袋の中に土の材料を入れよく混ぜ合わせます。
※植物の根は空気が必用なのでケト土の様な粘土質の土はあまり好みません。まとまるぎりぎりの硬さで配合すると上手くいきます。

②材料の植物の土を綺麗に落とします。
※丁寧に根を切り落とさない様に注意しましょう。

③一つ一つの苗の根の間に新しい土をすき込み糸でくくります。

④その周りを残った土で包みます。
※この作業は手早く、根が乾かない様に作業の合間に苗にぬれタオルをかけておくと安心です。

⑤周りをハイゴケでおおい、木綿糸でくくります。
※取れやすい部分をしっかり糸で押さえます。

⑥バケツの水に浸して、苔玉の中まで水分をたっぷり含ませます。
※半日陰になる場所に置きます。

空中都市が建設された未来都市も素敵です。でも、人間のいないコケで覆われた自然豊かな地球にも魅力を感じます。

もし地球上に人間がいなくなったら…。
腐敗したものを養分として、人間が文明によって傷つけた地表を、静かに優しくコケが覆いつくす。
コケの花言葉「母性愛」の意味にうなずくことができます。