桜の鉢植え(旭山)に挑戦! 

春の花といえば、何といっても桜。でも、一般の桜の木は、大木となるので、広い庭がないと、なかなかガーデニングという訳にはいきません。そんな中、桜には小ぶり(鉢植え)でも見事に沢山の花をつける栽培品種がいくつかあります。今回はその代表的なものの一つ、「旭山」に挑戦してみました。

桜の鉢植え。まずは育て方から…

<旭山の花>

樹木などの植物の中には、いわゆる「わい化」と呼ばれる「あまり大きくならなくても、花を沢山着ける」ものがあります。今回、挑戦したのは、その桜の「わい化」品種の中でも、昔からあり、メジャーな栽培品種「旭山」です。園芸店や通販でも、比較的安価な鉢植え用のものや、何年もかけて育てたと思われる、やや高価な盆栽じたてのものまで、多数ありますので、まずは、チェックしてみてください。

<鉢植え用の旭山(購入時)>

写真は、私の購入した株です。大船のフラワーセンターで購入しました。台木に「旭山」が継がれている「接ぎ木苗」であることが分かります。高さ40cm位で、枝の先に花芽が付いているのも見えます。「旭山」は、一般に、サトザクラといわれる大島桜系の栽培品種で、染井吉野のような五枚の花弁をもつ一重ではなく、花弁が10-20枚位の花です。いわゆる「八重桜」ほど花びらの枚数が多くなく、明らかに一重ではないことから「半八重」といわれるタイプに分類されます。花は「染井吉野」よりも大きく、色も染井吉野よりも濃い赤の美しい花を咲かせます。

最初の春、やっと咲いた!

写真は4月2日の様子。見事に咲きました。まず、準備したのは、素焼きの鉢です。これに根の土をくずさないようにして、赤玉土7、腐葉土3の混合比率の用土を用意し、追加して植え替えました。鉢は日中、特に日当たりのいいところに置きます。水は表面が乾いてきたら、底からだくだく溢れるくらいたっぷりとあげます。

上の写真が三月八日ですから、約一か月でこの状態になりました。

3度目の春。花数も、ぐっと増える! 

<旭山(3年目の春)>

根が回ってきたので、軽く土を落とし、補充して一回り大きな鉢に植え替えました(年末頃作業)。結果、春には写真の様に元気いっぱい咲いてくれました。ちょっと右側の突出した枝がバランス悪いようですが、花付きもここが一番いいので、怖くて切れませんでした。昔から園芸用語で「桜切るばか、梅きらぬばか」という格言があります。要約すると、「梅は切って(剪定)して育てるものだが、桜は、切るとだめになるよ」という意味です。理由は、「桜は切ったところから、菌がはいったりして、腐ってしまうから」らしいです。

桜、プチ情報「自生種と栽培品種」

<大島桜(自生種)>

桜は、古来から日本人に愛され、現在では300を超える品種が存在します。その中で、自生しているものを「自生種」、人の手によって作り出されたものを「栽培品種」といい区別しています。日本にある「自生種」は、その特徴から10程度に分類されています。これに対し「栽培品種」は、そのほとんどが「大島桜」という自生種がベースになっているという特徴があります。
たとえば、「ソメイヨシノ」。これはこの「大島桜」と「エドヒガン」という関東に主に自生する桜からできたものと言われています。ざっくりいうと、花が大きく、数多くつくことが特徴の「大島桜」と、「花が咲き終わってから、葉が出る」ことが特徴の「エドヒガン」。それぞれの特徴の、いいとこどりをしたのが、「ソメイヨシノ」という訳です。

身近な桜を見てみよう!

この公園の「シンボルツリー」な桜

もし、将来的に本格的な桜を庭に植えるとしたら、どんな桜がいいでしょうか? 考え方は無限にあるかもしれませんが、その一つとして「育てやすい品種」を選ぶという方法があります。では、どんな品種が育てやすいのでしょうか? 私は、公園や寺社、城址など「公共の場によくある桜」をお勧めします。

その公園などにある桜が、苗木ではなくて、大きく立派に成長した木であれば、そして、その木があなたのお家の近くにあれば、それは、その地でちゃんと育ったという実績があるということです。つまり、気候的にも「実績がある」ことになります。そんな「身近な桜」を丹念に見てゆけば、あなたの「桜の選び方」に、おおきな弾みがつくと思います。ちなみにここに掲載している写真は、全て、私が自ら撮ったもので、我が家の近所の公園や工場で咲く桜たちです。

まずはこれ、「染井吉野」

<染井吉野>

特に説明は要らないかもしれませんね。日本中、どこでもある桜で、いわゆる日本の桜の代名詞的存在です。でも、この「どこでもある」がキーワードで、栽培品種の中でも特に病害虫に強いとか、生命力が強く枯れにくいなどの特徴があります。

<染井吉野(並木)>

そういえば、「染井吉野」で、ふと思い出したことがあります。屋久島へ旅行に行ったとき、公園風になっている小さな駐車場に、この染井吉野の苗木が植えてあったのですが、なんと、4本のうち、3本は、根元からちぎれて、ほとんどの部分が無くなっていました。たぶん、屋久島は、台風が多いので、それにやられたのでしょう。私が訪れたのも、台風シーズンでした。ちなみに樹木の中で、桜は枝が折れやすいと言われています。つまり、台風の多いところで栽培するには、この桜は向いていないのかもしれませんね。

八重紅枝垂れ、台風にも強いかも・・・

<八重紅枝垂れ>

そこで、近所の公園にも、よくある「台風にも強い」桜を探してみました。たとえば、この「八重紅枝垂れ」はどうでしょう? とはいえ、本当に台風に強いか実証したわけではありませんが、柳などと同様に桜にもこの様な「枝垂れ型」の栽培品種がいくつかあります。その中でもこの「八重紅枝垂れ」は、よく公園などに植えられています。

一般論ですが、この「枝垂れ型」は、強風でも枝がやわらかく、しなるため、折れにくいと言われています。たとえば、現存する樹齢百年以上の桜の古木は、この「枝垂れ型」のものが多いことでも、その証拠になりえるかと思います。

私の個人的な意見ですが、この「八重紅枝垂れ」は、「ソメイヨシノ」のように、1クローン、つまり、栄養繁殖によって育てられたものだと思います。根拠は、花の形に大きな特徴がある点です。大正ロマンのランプシェードを思わせるような、波打った花弁は、この「八重紅枝垂れ」独特のものだと思われます。

ちなみに、この「八重紅枝垂れ」、京都の平安神宮のものが有名です。・・・というよりも、ここのものが「八重紅枝垂れ」という栽培品種の原点なのかと思われます。京都から仙台に送られた桜が、再び、この平安神宮へ里帰りした話も感動的です(今回は、このお話は割愛しますが・・・)。

<八重紅枝垂れ(全景)>

この桜は日本の自生種である「エドヒガン」の「枝垂れ型」です。桜が「枝垂れ型」になるのも、「八重咲」になるのも、ともに確率的には、何万分の一だそうです。つまり、この「八重紅枝垂れ」という栽培品種は、「染井吉野」と同様、一本の木から、挿し木や接ぎ木によって広がったオンリーワンのDNAを持つ栽培品種と推定されます。

<八重紅枝垂れ(近景)>

この桜の原種は、「エドヒガン」という種類の桜です。先ほどもちらっと出た百年、数百年と生き続けている日本の「長寿」の桜のほとんどが、実は、この「エドヒガン」です。樹齢1000年を超えるといわれる福島県三春の『滝桜』もこのエドヒガンです。広いお庭があって、桜をやりたいという、ガーディナーにはおすすめの栽培品種かもしれません。

自然な感じを大切にしたい人むけ・・・山桜

<山桜(近景)>

<山桜その2(別の公園の山桜)>

先ほど、『この公園の「シンボルツリー」な桜』として紹介した「山桜」の近景です。「山桜」は、「エドヒガン」と同じく、日本の「自生種」の一つです。つまり、「染井吉野」や「八重紅枝垂れ」など、人工的に作られ、増やされる「栽培品種」とは対義語的な存在です。

なので、「山桜」がある公園は、元々、そこにあったものを、あえて切らず、残したものがほとんどのようです。自生する「山桜」の特徴は、その株ごとの豊かな個性にあります。花の大きさや形、新葉の色、葉と花のタイミングなど、まさに十人、いや、十株十色です。

この木の様に「公園に咲く山桜」は、もともと、その森にあった木をそのまま残して公園に取り込んだという形のものが多い気がします。その証拠に、公園事、いや、同じ公園内でも同じものはなく、個性豊かな山桜として楽しむことができます。
たとえば、この2つの山桜を比べてみましょう。上の桜は、花柄、小花柄(花から枝までの柄の部分のこと)が共に長いタイプ(下の桜と対照的ですね)。新葉が黄色に近い茶色(下の桜は赤に近い色)、花は染井吉野位の大きさで、花弁が反り返る特徴があります(下の桜は逆に花弁が、まんまるで、内側にまるまる傾向がある)。よく、じっくりと観察してみてください。面白いでしょう?

「八重桜」が好きな方はこちらがおすすめ! 

<関山(かんざん、せきやま)>

色々な「桜好き」に聞いた感じでは、少数派かもしれませんが、「八重桜が好き~♪」という人もいます。そんな方に、是非、お勧めなのが、この「関山(かんざん、せきやま」です。皆さんも、確認してみると、分かるかと思いますが、結構、身近な公園にも植えられている、「メジャーな八重桜」です。

<関山(接写)>

この桜の特徴は、色が濃いこと、樹形が特殊であることなどが挙げられます。「樹形」は、下が大きく、上がすっとした形で、専門家の間では「ワイングラス型」とも言われています(ぶっちゃけ、私はそうは思いませんが・・・)。そして、さらに「色が濃いこと」が生かされて、食材として、用いられることも多いようです。

最後に

マンション住まいの著者は、どうしても「ベランダ・ガーデニング」に重きを置いてしまいがちですが、羨ましいことに、大きな庭をお持ちの方は、本格的な「桜の木」を含む、ガーデニングができます。そんな、「ベランダ派」「お庭派」の両方に通用するものがご提供できたらと思い、一生懸命、考えてみました。いずれにせよ、「桜を愛する」人たちは、素敵です。これだけは間違いないでしょう。