コテッジガーデンの魅力を知ろう! そのヒストリー&レイアウト篇

ナチュラルで優しい雰囲気がいっぱいのコテッジガーデン。英国を代表するガーデニング・スタイルとも言われ、多くの人々を魅了し続けるスタイルです。今回はその歴史、そして基本のレイアウトをご紹介します。

イギリスの庭園、と聞くと真っ先に思い浮かべるのがコテッジガーデン。その人気は非常に高く、古くから世界中で愛されているガーデン・スタイルです。

でもコテッジガーデンのイメージは何となく分かっていても、本当はどんなもの? と思う事もあるのではないでしょうか。

今回はコテッジガーデンの歴史、そしてその魅力、またレイアウトの基本をお伝えします。

コテッジガーデンの歴史

イギリスでのコテッジガーデンの始まりは14世紀と言われています。この頃ヨーロッパでは黒死病、ペストが大流行し、イギリスでは総人口の約1/3が亡くなりました。

この時代に食料不足を補うため、田舎に住む労働者たちは領主に借りていた土地の一区画を使い、そこに畑を耕し、この頃は主にカブやキャベツなどを栽培していました。

畑では鶏が歩き回り、中世の重要な家畜であった豚は小さな囲いで飼われ、その汚物や家庭内のゴミを肥料にしていたために土地は肥沃であったのです。

ハーブや花を一緒に植えるスタイル

イギリスではヘンリー八世が1536年に修道院を解散させる前までは、修道会は薬草による治療法の普及を熱心に行っていました。

農民たちは修道士たちから薬草の栽培方法や治療法を習い、畑に野菜の他、スミレやマートル、ノコギリソウやベトニーといったハーブや花も一緒に植えるようになります。

これらのハーブや花は病気に効く特性を持ち、修道会が解散させられた後も、その栽培や治療法は長く人々の暮らしの中に浸透していったのです。

また、畑の悪臭を消すためにも、修道士や修道女が薬草として利用していたマドンナリリーは、この時代から植えられていたと言われています。

しかしながら、この時代には畑の中で最も良い状態の場所を野菜やハーブに与え、その残りで花を植えていたために、コテッジガーデンは乱雑なイメージがありました。

フルーツの樹木、そしてバラがコテッジガーデンに仲間入り

エリザベス一世の時代(1533~1603)には、イギリスは政治的に比較的安定し、戦にも勝ち、イギリスは裕福な時代となりました。

国の労働力であった農民もその例外ではなく、作業方法や家の造りの技術も発達し、得られる食料も豊かになったのです。農民は少しではありますが余暇を楽しむ余裕も出来、村々は改築されました。

裕福層の農民はフランスやベルギー、イタリアなどから料理人を雇い、料理の技術向上に伴い、多くの野菜やハーブは日常食として、ますますその存在が重要視されました。

16世紀には多くの村人が果物を育て、リンゴや洋ナシ、スモモやさくらんぼなどが見受けられ、またバラもこの時代に取り入れられました。
ロザ・ガリカはコテッジガーデンにおける最初のバラとして知られています。

この時代こそ、今日に続くイギリスの園芸芸術が始まったと言えるでしょう。

コテッジガーデンのスタイル確立

エリザベス朝にはヨーロッパ大陸の影響を受けた新しいガーデン・スタイルが流行し、これは農民たちにも広まります。

この時代にはフォーマルな形式が好まれたため、コテッジガーデンもそれに倣い長方形の花壇を作り、そこへ花や野菜、ハーブなどを一緒に植え、またアーチを配置しそこへバラやハニーサックルを伝わせるといったスタイルが確立されました。
この庭を区切るスタイルは今あるコテッジガーデンの原型になっています。

コテッジガーデンに咲く花は野生のものがメインとなっていましたが、裕福層の農民から分け与えられた種を用い、少しずつ花の種類が増えて行ったのです。

コテッジガーデンに欠かせない花の存在

17世紀~18世紀にかけては、他国からたくさんの植物が輸入され、イギリスで現在も愛され続けている植物の多くはこの時代から始まっています。

上流階級の人々が手に入れたその高価な植物の種を、マナーハウスなどで働く庭師たちによって僅かながらも村の人々の手に渡り、コテッジガーデンへ植えられました。

この時代に広められたのはジャスミン、アネモネ、タチアオイ、ラヴェンダー、クレマチス、ラナンキュラス、チューリップ、といった、今もコテッジガーデンには欠かせない花ばかり。
シュラブ型のバラも、この頃からコテッジガーデンに加えられていきます。

価値を見出され、世に広まったコテッジガーデン

19世紀の時代に、コテッジガーデンのスタイルは決定付けられたと言って良いでしょう。

タチアオイ、デルフォニウム、ルピナスは一般的になり、ナデシコ、アルメリア、マートルがボーダーに植えられ、今の時代にも続いていく、庭の美しい彩りとなりました。

この時代には上流階級では装飾的に刈り込んだ、形式ばったガーデンが流行しますが、イギリスの『ガーデンの父』とも呼ばれ、著名な造園家であり、著述家、雑誌『ガーデン』の編集者としても知られているウィリアム・ロビンソン(1838~1935)が新たな地位をコテッジガーデンに与えます。

ウィリアム・ロビンソンはイギリスでは一番最初の園芸家とも言われ、ガーデニングを世に広め、また最も影響を与えた人物です。

彼はこの時代における装飾的、人工的な庭を嫌い、コテッジガーデンが持つ質素な植物の乱雑さを愛し、その造園術を芸術として認め、その価値を多くの人々に伝えたのです。

また、彼と同時代の庭園デザイナーであり、その功績からバラにその名が付けられたガートルード・ジェキル(1843-1932)はコテッジガーデンのスタイルを彼女のデザインに取り入れ、色彩、材質感や高さを考慮した庭園を設計して行き、後世のガーデニングに大きな影響を与えました。

現代のコテッジガーデン造り

注意深く綿密に計算され、華美な装飾を施したガーデンではなく、自然と調和し、植物たちのありのままの姿を生かしたコテッジガーデン。
そのナチュラルな美しさは世界中に多くのファンを持ち続けています。

自分の庭もコテッジガーデン・スタイルにしたいと考えた時、自然を受け入れ、そして共存しているコテッジガーデンは、イギリスの田舎にあるような時代を経た石造りの家にしか似合わないのでは? と不安になる方がいるかもしれません。

しかし長い歴史の中で受け継がれて来た、コテッジガーデンを造った人々と同じ想いを感じているのなら、都会であろうとも、モダンな現代の住居であろうとも、自分だけの個性を感じさせるコテッジガーデンを、きっと造り上げることが出来るはず。

どんな時代でも人を魅了してやまない、愛され続けて来たコテッジガーデン造りに早速チャレンジしてみませんか?

コテッジガーデンのレイアウト

実はコテッジガーデンには、これが正しいデザイン、というものは存在しません。
もともとのコテッジガーデンは前に述べたように、庭を区切り長方形の花壇を作ったものが始まりでした。

花壇の大きさや、庭に続く小道のラインなど決まったものはなく、どのように配置するのかは自分の好みで決めて行きます。一番シンプルなレイアウトをご紹介しますので、参考にして下さいね。

小道を作る

まずコテッジガーデンでは、小道の場所を最初に決めて行きます。これは家から反対側まで真っすぐな小道をデザインしたもの。

もちろん曲線を描いたものでも良いですね。この小道にはレンガを敷いたり、枕木を置いたり、小石を敷いたりとお好みに合わせて選んでみましょう。

フリーエリアを作る

次にフリーエリアを作ります。
このフリーエリアにはテーブルセットを置いたり、庭仕事に必要な道具を収める収納庫を配置したりします。

こちらは家に近い場所にフリーエリアを作ったレイアウト。家に近い場所に作業場がある方が庭仕事には便利です。

フリーエリアの中央に小道が家まで続いてふたつのエリアに区切っていますが、小道はフリーエリアから始まるように配置するのもOK。フリーエリアをひとつに繋げると広く有効に使え、メリハリのある庭になるでしょう。

このフリーエリアは芝生を植えても良いですが、パティオにして、ここに植木鉢で育てる植物などを置いても素敵です。ウッドデッキを配置するのもきっと似合うはず!

長方形の花壇を作る

庭に長方形に区切った花壇を作るため、小道に交差する道を新たに作ります。

こちらも真っすぐなラインですが、やはりカーブした道も素敵ですね。
どの小道も庭を散策するだけでなく、花壇の花を手入れする場所にもなりますので、動作のしやすいサイズにする事をお忘れなく。

両サイド、奥に花壇を作る

最後に両サイド、奥手に花壇を作ります。

by H.Akiyoshi
こちらも脇の花壇の前に小道を作り、長方形の花壇の完成です。両脇や奥手の花壇の背後にフェンスがあれば、クライマー系の植物を育てるのにはぴったり。
また、小道の途中にアーチを配置するのも、コテッジガーデンらしい庭となるでしょう。


今回ご紹介したものは、非常にシンプルなコテッジガーデンの基本のレイアウト。そのシンプルさゆえ、あまりに単純ではないか?と思うかもしれませんね。

また、このレイアウトですと真っすぐなラインでコテッジガーデンには直線過ぎないか?と感じるかもしれませんが、植物は育つと決して直線的にはならないもの。
植物が生み出した新たな自然のラインがきっと生まれて来るはずです。

歴史あるコテッジガーデンのスタイルを自分の庭に

古くからイギリスの生活の中で息づいて来たコテッジガーデン。始まりは生活の手段として、そして人生の喜びとして、長い年月に渡り人々に愛され続けたスタイルです。

花の成長を見守り、季節の移り変わりを庭を通して感じ、またハーブや野菜など食事に取り入れる事も出来るガーデンスタイルは、時間をかけて作っていくもの。
それだけにとても愛おしい庭になるに違いありません。

今回はコテッジガーデンの歴史、そして庭造りのレイアウトをご紹介しましたが、次回はコテッジガーデンにぴったりの植物をご紹介します。今回の記事と合わせて、コテッジガーデン造りの参考にして下さいね。