実は、想像以上に簡単!「枝豆」の栽培

「枝豆」、いわゆる大豆には、ある特性があり、土などの条件があまりよくないところ(=水耕栽培にした場合など)でも比較的育てやすいという特徴があります。これは「根粒(こんりゅう)」と呼ばれる大豆の仲間が持つ特有の器官、機能として知られています。その「簡単にできる」理由を実際の水耕栽培などを通して見ていきましょう。

枝豆が他の野菜類より育てやすい理由とは?

まずは「枝豆」の基礎知識、大豆を完熟前に、はやどりすると「枝豆」になります。つまり、枝豆と大豆は、そもそも同じものです。そして、植物が成長する場合には、大きく分けて3つの栄養素が必要だと言われています。特にもともとこれらを含む土を使用しない水耕栽培では、市販の「ハイポネックス」などを水に溶かして利用します。しかし、大豆は、これとは別に自らの根に根粒(こんりゅう)と呼ばれる器官をつくり、ここに根粒菌(こんりゅうきん)という菌を育てます。

<(参考)ミニトマトの水耕栽培>

根菜の最後、収穫時まで、水耕栽培で育てる方法・・・私は「完全水耕栽培」と呼んでいますが、写真はそのまず第一段階です。このような細長いコップ状のもので育てています。その理由は、まず、種の段階で、鳥などに食べられてしまうことを防ぐためです。そして、かつ透明であれば、日当たりがよく温度も上がり、成長が促進されます。最近は、この縦長のコップを多用しています。
「水耕栽培」のところで、後述しますが、ここで使うハイポネックス水溶液は、主に「根腐れ」対策のもので、「根粒菌」の作る「チッソ」は少な目となっています。
根粒菌(こんりゅうきん)とは
 大豆を始め、エンドウなどのマメ科の植物は、自らの根に根粒という器官をつくり、その種となる「豆」に大量に必要となるタンパク質を生成するのに欠かせないチッソをつくる根粒菌を培養します。この根粒菌により、窒素を土の中に大量生成し、その成分がたとえ、土に含まれていなくても、栄養(チッソ)を根から吸い上げ、タンパク質の多い大豆を作ることができるのです。

「枝豆」について

完全水耕栽培の枝豆

2015/6/15の画像
<えだまめの品種>

園芸店の種売り場に行くと、実に多くの栽培用のものが出回っていることに気づくと思います。調べてみたところ、品種改良などの結果、えだまめ専用の品種だけで、現在、400種類以上あるそうです。

それらは、大きく分類すると青豆、茶豆、黒豆の3つに分けられます。さらにその3つの掛け合わせからなる「第四の枝豆」も多くあります。もちろん、沢山の種類から選べるのはうれしいですが、自分で作るとなると作りやすいものがいいと思います。

私が考えた「(水耕栽培や、室内などでも)育てやすい」品種選定基準のひとつは、「収穫時期」です。ベランダガーデニングだと室内で育てる期間や、ベランダの日照等が結構気になるポイントとなります。一日中日当たりのよい畑で、地植えより条件的には不利だといえます。そこで、少しでも短い期間で収穫できるものが「ベランダガーデニング」には、いいという判断です。

そこで、今回は「極早生」と言われるタイプのもので、収穫までの日数は70~80日という条件から、店頭にあった「福だるま」という品種を選びました。

<参考:その他「完全水耕栽培例」>

左からとうもろこし、ねぎ、きゅうり、かぼちゃとなります
<極早生えだまめ発芽までの日数>
約7日。極早生でも発芽までの日数は、通常のものとあまり変わりがないようです。去年までは水耕栽培での育成を前提にしていて、ロックウールブロックで、他の野菜の種と一緒に発芽させていました。すると、枝豆は、他の野菜(プチトマトや小松菜など)よりも発芽は明らかに遅いようです。

さらに、このロックウールブロックの方法だと、水分が多すぎるためか、発芽せずに腐ってしまうことも多々ありました。ロックウールブロックの発芽促進方法は、万能だと思っていましたが、「枝豆」の場合は失敗がありえることを知りました。思わぬ落とし穴でした。

<地温の発芽適温>
20-30度。小松菜と同じ位です。冬場であれば、マルチング等で地面を温めないと発芽しないでしょう。当方はすべて室内で発芽させているので、暖房等あるためか、特に気にしていませんでしたが、上記述のとおり「ロックウールブロックの発芽促進方法」では、「豆を腐らせてしまう」といった、温度ではなく別の条件ですが、結果として、かなりの回数、失敗していて、今後の課題となっています。

<生育適温>
25-28度。あまり寒いと育ちにくく、寒い時期にも育てたいという室内派は、部屋の暖房等に頼るのもいいかと思います。また、夏場なら、野外の水耕派にとっても栽培しやすい温度だと思います。

地まき時の基本情報

<やっぱ「枝豆」にビールは最高!>

ビールと並べてみました。深い意味はありません。でも、結果的にいい「絵」になったのかな。
<種まき植え付け>
発芽温度(地温)20-30度が必要なため、低温期の場合、加温や過湿をし、ポットに種2-3粒を蒔き、本葉が2枚になる頃、成長の遅れているものを間引きし、苗木2本にします。定植は、本葉が3枚のころに、条間45cm、株間30cm間隔で植えつけます。

<栽培管理>
畑づくりは、1 平方メートルあたり、苦土石灰を施し、畝の中央に20-30cm位の溝を掘り、元肥を入れます(水耕の場合は不要)。幅90cm高さ10cmの畝を立てます。

<収穫>
莢(さや)が青く、8割位が充実してきたら、収穫時期です。


<地域別のまきどきと収穫期>
枝豆の場合、また、今回の極早生種の場合、蒔いてから約70-80日というのが基本になります。気候地ごとに見てみると、寒地、寒冷地で5月上旬-7月上旬が蒔き時で、収穫は7月中旬から9月中旬位です。温暖地では、4月中旬-7月上旬の2か月半の間が蒔き時で、収穫は6月末から9月中旬位までできます。暖地の場合、4月上旬-7月中旬で種まきが可能で、収穫は6月中旬から9月下旬頃まで行えます。

水耕栽培実践!

水耕栽培専用アイテム

・今回の枝豆の場合、手順は下記のとおりになります。

1.種まきポット(ロックウールブロック)に種を蒔き、ケースに入れ水に浸し、クローゼットなどの真っ暗なところに置き、発芽促進

2.芽(根)が出てきたら、スチルウールごとコップ状の器(鉢の代わり)に移植。水やりをハイポネックスの養液に変更

3.大きくなってきたら、鉢上げ(サイズの大きい器に移植)。必要に応じて支柱等を実施

まず、1.で使用するのが、写真の黄色いプラスチックケースと、その中に入っている「ロックウールブロック」です。この「ロックウールブロック」は「高炉スラグと数種の岩石を高温で焼き、綿状にしたもの(大和プラスチック(株)製)」で、大型の園芸店等で見つけることができます。サイズが何種類かありますが、私がベランダガ-デンとして愛用しているのは、3X3X3の一番小さいサイズのものです。

<写真:なぜか蔓状になってしまった、不思議な、えだまめ>

このサイズを使う理由は、写真のとおり、黄色いプラスチックケースの一枠にサイズがピッタリなためです。ここが一つのポイントで、この状態で容器の蓋をすると、箱の中の状態をかなりの高湿度状態で保つことができます。ちなみに、この黄色いプラスチックケースは100円ショップ(ダイソー)で見つけたものです。

また、写真左側に写っているのがハイポネックスです。一般的なハイポネックスは「チッソ」「リンサン」「カリ」がバランスよく含まれているのですが、水耕栽培の場合、「カリ」の含有率が多い、6.5-6-19(チッソーリンサンーカリ)の配合のものを使います。これは水耕栽培は水に根を浸し切った状態にするので、根腐れを防ぐのが最大のポイントとなるためで、根の促進を促すと言われているカリの配合比率が極端に多いハイポネックスを1000倍に薄めて使います。

こちらもハイポネックスとはいえ、輸入品がベースらしく、大型の園芸店でないとなかなか置いていないようです。がんばって探してみてください。

鉢上げの様子・・・上記写真は、鉢上げ(サイズアップ)に伴い、より大きなガラスの器に移したものです。これも100円ショップで手に入れたもので、さほど高価なものではありません(と、いうよりも、一個100円です)。しかし、この大きさになると、倒れてしまうので、針金で支えてあります。完全水耕でやろうとすると、こんな日曜大工的な手間暇も掛かります。

反省と今後の展開

<2017/5/7 最新型「えだまめ栽培」>

何年かに渡り、栽培してきた枝豆ですが、今までの記述の通り、この「完全水耕栽培」、いくつかの欠点もあります。今年になって新アイテム「(ココヤシ原料の)6倍に膨らむ土」を手に入れ、視野が広がっています(写真は、縦長のコップに、その「6倍に膨らむ土」を入れ、枝豆の種をまいたもの)。

完全水耕栽培は、芽が出るまでは、水、芽が出てからは、水耕栽培で使用していた「カリ」の含有率が多い、6.5-6-19(チッソーリンサンーカリ)の配合の1000倍水溶液となります。いずれにしても、生涯、水分ひたひたな状態で育てます。

しかし、これは
・発芽時までの水分調整が難しく、発芽促進が難しい
・根粒菌のため、水溶液が濁り、見た目もよくない。かつ、その菌をなくしてしまうのは、明らかにマイナスなので、水溶液の入れ替えはやりたくない(やらない)
・大きくなってくると茎が支えられないので、針金等で特殊な支えを作る必要がある
などの欠点があります。

それを踏まえ、2017/5/7 最新型「えだまめ栽培」を思いつきました。写真のとおり、まだ、実験段階ですが、もし、これから「ベランダガ-デニング」として、「枝豆」を育てたいのいう方には、こちらの方法(「6倍に膨らむ土」)をお勧めします。

利点
1.発芽の確率UP・・・冒頭で書いたとおり、あまり過湿すぎると、枝豆(大きな粒の豆一般かも知れません)は、発芽前にカビ等が発生して、発芽に至らないケースが多々あるようです。しかし、今年5月に入ってからの実験で、この「6倍に膨らむ土」で試したところ、ほぼ着実に発芽しています。
2.コップ内の養液がなくなる・・・上記、2015/6/15の画像をよく見ると分かりますが、コップ内の液はかなりドロドロした感じになっています。これは、この記事のテーマでもある「根粒菌(こんりゅうきん)」が多くあるためで、逆の言い方をすると、安易に洗浄できないというジレンマがあります。

正直、見た目にあまり衛生的とはいえないので、当時、かなりのジレンマがありました。今回の「6倍に膨らむ土」は通常の畑の栽培とかわりませんので、これも解消されるはずです。