春の訪れを感じよう! スク―ン・パレスでスノードロップ・ウォーキング

寒くて長い冬の終わりを告げてくれる花、スノードロップ。英国各地で行われているスノードロップ・ウォーキングを、スコットランドはパースに位置するスクーン・パレスで楽しみました!

まだまだ寒いスコットランドの3月。それでも蕾を膨らませている植物もちらほら見え、長い冬がようやく終わりを告げようとしています。

冬の終わり、そして春の訪れを告げてくれるのはスノードロップ。木々の根本や森の中で、ひっそりと静寂に咲くこの花を見ると、やっと春がやって来たんだと実感出来るのです。

雪の雫、という名前がぴったりなこの花。今年はこのスノードロップを堪能しようと、スコットランドはパースにあるスク―ン・パレスを訪ねました。

スコットランドの古都、パース

パースはスコットランドの中心部に位置し、エジンバラからは列車で1時間15分~30分ほど。
テイ川沿いにあるパースは、人口は約50,000人弱ほどと言われており、13世紀から15世紀にかけてはスコットランド王国の首都でもありました。

現在でも古くからの建築物が街中で多く見られ、ショップやカフェ、レストランも多く、エジンバラやグラスゴーとはまた違った景色と雰囲気を楽しめるでしょう。

スク―ン・パレスまでの行き方

パースを流れるテイ川はスコットランドの中では一番長い川と言われ、英国の中では7番目に長い川として知られています。

写真に写っている橋はテイ川にかかる1771年に完成したパース・ブリッジ、もしくはSmeaton's bridgeとも呼ばれ、パースの街中からスク―ン・パレスへと続く道にあります。

この橋のふもとは遊歩道になっており、すぐそばに公園もあるのでお散歩コースにはぴったり。パースに滞在した時は是非歩いてみたい場所です。

なお、パース駅からスク―ン・パレスまでは約6キロ。このパース・ブリッジからスク―ン・パレスまでは約3キロ。歩くのに自信が無い方は、街中からバスに乗るか、タクシーを利用されるのをおすすめします。

スク―ン・パレスに到着!

スク―ン・パレスに到着すると、立派な門が目に入ります。入場はしなくても、宮殿の姿だけを拝見、と門から眺めようとしても、まったく視界には入りませんのでご注意を。

ここからスク―ン・パレスの入り口までは約5分ほどかかります。

宮殿の入り口までゆっくりお散歩しながら歩きます。タクシーを利用する場合は、入り口まで送ってくれますが、お天気の良い日にはぜひ門で降りてみて下さい。
羊たちがお出迎えしてくれるでしょう。

ゆっくりと景色を楽しみながら歩いて宮殿の入り口に到着すると、クロッカスとスノードロップの可愛い姿を発見。

ロンドンに比べ気温が3~5度前後低いパースでは、花が咲くのも半月から1ヵ月ほど遅いと言われていますが、この愛らしい姿を見ると、長い冬がようやく終わりを告げたのが分かります。

スク―ン・パレスとは

ゲートから見たスク―ン・パレス。赤い砂岩で造られたこの建物は後期ジョージアン・ゴシック・スタイルの代表とも言われています。

スクーン・パレスは元々はスクーン小修道院として存在し、12世紀に修道院に昇格されたのを機に修道院長の住まいとして建築されました。

1600年に修道院は貴族の領地となり、持ち主であったマンスフィールド伯爵が維持し、現在の拡大された邸宅はマンスフィールド伯爵3世が有名建築家であるウィリアム・アトキンソンに設計を依頼し、1808年に完成しています。

また、宮殿のすぐ傍にある長老派教会、ムート・ヒルとスクーンの石は、シェイクスピアの戯曲『マクベス』としても知られるマクベタッド・マク・フィンレックや、バノック・バーンの戦いで知られるロバート・ザ・ブルースを含む、スコットランド王の戴冠式を行っていた場所としても知られています。

毎年4月~10月までパレス内の一部が一般公開されていますが、2月下旬から3月中旬にかけての週末は、このスノードロップ・ウォーキングのためガーデンのみが無料で公開されており、夏は観光客で賑わうスク―ン・パレスでも、この季節には静けさを楽しみながらゆっくりと散策する事が出来ます。

パレスからほど近い場所にある長老派教会を通り過ぎ、庭へと続くゲートからガーデンへと向かう事が出来ます。

16世紀に建てられたものだけあって、さすが風格を感じさせる…と思いきや、実はこのゲートは2010年にバンがぶつかり、上部が壊れてしまったそうです。

2012年に修復が完成したそうですが、壊れたあとも、修復の部分も全く分かりませんでした。

スク―ン・パレスでのスノードロップ・ウォーキング、スタート!

ガーデン内部のルートはさまざまで、どこから回っても良いのですが、ゲートをくぐるとすぐに目に入るのがスノードロップの花たち!
ひっそりと、しかし群れをなして咲くその姿にうっとりとしてしまいました。

ゲートの反対側から見た構図は、道の両脇に生息する圧巻なスノードロップの花々。とても小さい花ですが、これだけの数を見ると、太陽の光りを浴びて輝くその姿が眩しく、思わず目を細めます。

スノードロップのあれこれ

スノードロップはこの季節、英国内ではあちこちで見る事が出来る花ですが、元は英国には存在せず、ローマ人が持ち込んだものではないかという諸説があります。

スウェーデン人の植物学者、Carolus Linnaeusが1753年にこの花を『Galanthus Navalis』と命名。Gala はミルク、nthus は花、Nivalisはギリシャ語で雪の、という意味があるそうです。
雪のようなミルク色をした花 ー まさにスノードロップと訳すのが相応しいですね。

スノードロップは品種が多い事でも知られ、今でも品種改良が行われています。肥えた土、夏でも乾く事の無い土壌を好み、落葉性の木々や低木の下に見つける事が出来ます。

スク―ン・パレスに咲くスノードロップは、一般でも多く見られる品種、ガランサス・エルウェシー。
ここではこの品種しか見つける事が出来ませんでしたが、英国では数多くのスノードロップの品種が存在します。

イギリスでは『ミスター・スノードロップ・マン』と呼ばれるケンブリッジ州に住む養樹園主、ジョー・シャーマン氏は10年以上かけて品種改良を行い、Golden Fleece というスノードロップを作り出します。

この新種の球根は2015年、英国のオークション・サイト、ebay uk でなんと1390ポンド(現在のレートで約20万円)の値がついたのだとか。

スノードロップがこの国の人々を魅了してやまない事が分かるエピソードです。

こちらはスノードロップと間違われやすいスプリング・スノーフレーク。サマー・スノーフレークは20cm ほどのサイズにも育つそうです。

このベルのかたちをした花びらがとてもキュート。スノードロップと並ぶとどちらもあまりの可愛さに見とれてしまいます。

スク―ン・パレスのガーデン

スノードロップ・ウォーキングのついでに、スク―ン・パレスのキッチン・ガーデンにもお邪魔しました。

ハーブを育てている人なら、どんなキッチン・ガーデンがあるのか気になりますよね? でも残念ながら、今はまだがらんとした状態。

植えてあるのは英国の食卓に欠かせない芽キャベツだけでした。とても広いキッチン・ガーデンで、奥には温室もありました。夏に再訪するのが楽しみです!

1799年にスク―ンで生まれ、スク―ン・パレスの庭師として7年働き、のちに探検家、プラントハンターとして有名になったデイヴィッド・ダグラスは、スク―ン・パレスのガーデンに針葉樹を集めた区域を作りました。

それが『Pinetum』と呼ばれるエリア。こちらは圧倒されるほどの木々が生い茂り、広大なこの区域を歩けばマイナスイオンを胸いっぱい吸収出来そう!
今でも新しい木々が植えられているのを見る事が出来ます。

運命の石

ガーデンをぐるりと回って、またゲートから帰って来た場所の近くには、スコットランド王の戴冠式を行っていた小さな長老派教会が目に入ります。
こちらも宮殿と同じく、1804年前後にゴシック・スタイルに修復されました。

この教会のある小さな丘はムート・ヒルと呼ばれ、ピクト人の王であり、最初のスコットランドの王と知られるケネス・マカルピンが9世紀にこのムート・ヒルにある『運命の石』とも呼ばれるスクーンの石の上で戴冠式を行ったとされています。

『運命の石』と呼ばれるスクーンの石。スク―ン・パレスのムート・ヒルにあるこちらはレプリカになります。

本物はエドワード1世が1296年にこの石を奪い去り、ウェストミンスター寺院に移しています。
1950年のクリスマスにスコットランドの学生たちによる盗難事件が起こり、スクーンの石は移動の際にふたつに割れてしまいます。
のちに発見、そして修復されたスクーンの石は4か月後にウェストミンスター寺院に戻りますが、戻された石はオリジナルではなく、コピーであるという噂があり、現在でもまことしやかに言い継がれているのです。

なお、スクーンの石は1996年にスコットランドに返還され、現在ではエジンバラ城に保管されています。

ガーデンも、パレス内部も見応え充分!

スク―ン・パレスでのスノードロップ・ウォーキングは、寒い季節の中でも春の訪れを感じる事の出来た、素敵な一日となりました。
冬の長いスコットランドにも、ようやく待ちに待った春がやって来るようです。

今回訪ねたスク―ン・パレスですが、ガーデンだけでなく宮殿の内部もとても見ごたえ充分! ショップやカフェもありますので、見学が終わった後にお土産グッズを購入したり、たっぷり歩いた後のちょっとした休憩にもぴったり。
このスク―ン・パレス、こちらは何と泊まれることも出来るんです。ウェブサイトに詳しい情報が出ていますので、貴族の気分を味わいたい方は是非!

そしてスク―ン・パレスの持ち主であるマンスフィールド伯爵が登場する映画、『ベル ― ある伯爵令嬢の恋』をご覧になった方は、主人公ベルの肖像画を覚えていますか?
スク―ン・パレスに入場すると、この絵を見る事が出来ます。

また、スク―ン・パレスにはたくさんの孔雀がいて、華麗な求愛ダンスを見せてくれるかも!
スコットランドに来た際には、是非パース、そしてスク―ン・パレスまで足を運んでみてはいかがでしょう。