イングリッシュガーデンから学ぶ、基本のテクニック ~ カラーリング編 Vol.1 ~

庭の花壇に何を植えればいいのかと考えた時に、欠かせないテクニックであるカラーリング。お気に入りの花たちがもっと輝く庭になるように、カラーリングの基本をイングリッシュガーデンから学んでみませんか?

ガーデニング初心者の方、あるいはもう既にガーデナーとしてデビューした方でも、「どんな色の花を庭の花壇を植えたらいいんだろう?」と考えたことはありませんか?

雑誌や本、ネットなどの情報から吟味し、自宅の庭に迎えようと決めて花壇に植えた花は、自分好みの好きなものばかりなはず。

でも植えた植物が育ち、花が咲き始めてから庭全体を見渡すと、どうもバランスが悪いような気がする・・・。庭づくりをする方なら、一度はそんな悩みを持ったことがあるのではないでしょうか。

どんな色の花が庭に合うのか、どんなカラーの組み合わせが良いのか、多くの種類の花の中から選ぶのは難しい問題。

でもガーデニングの必須科目である、カラーリングのテクニックを知っておけば、調和のとれた美しい庭づくりが可能です。

カラーリングはトータルバランスの美しい庭を目指すための、大切な基本テクニック。
今回は今まで滞在したイングリッシュガーデンでは、どのような色を選び、どのように組み合わせているのかをご紹介します。

世界中に多くのファンを持つイングリッシュガーデンから、カラーリングのヒントをもらって、庭を華やかに彩ってくださいね。

自分らしい庭のカラーを知る

ご存知のように、花には数えきれないほどの種類があり、またその花が持つカラーもさまざまなものがあります。

花を選ぶときは、まずそのビジュアルに惹かれる場合が多いと思いますが、色彩も庭づくりの重要なポイント。

どんなカラーが自分の庭にぴったりなのかを知るには、まず最初にどんなイメージを持つ庭を目指したいのか、自分自身で分かっておくことが大切です。

ここでは実際のイングリッシュガーデンの写真をカラー別に庭をご紹介します。まだ目指す庭の雰囲気が決まっていない方や、今ひとつ庭の花のカラーリングがしっくりこない、という方は、どんな色が自分の庭に合うのか、探してみてはいかがでしょうか。

自分好みのカラーリングや、これからトライしてみたい色彩の組み合わせを見つけたら、ご紹介するポイントとともに、庭づくりに参考にしてくださいね。

ガーデンを、ひとつのカラーでまとめてみる

まずご紹介するのは、ひとつのカラーを決め、その色を持つ花を選び、庭づくりをするカラーリングです。

幾つものカラーが存在する花の中で、1色しか使わないなんて、つまらないのでは?と思う方もいるかもしれません。

けれどイングリッシュガーデンの中でも、ひとつの色を選び出し、そのカラーでまとめたガーデンは、いつの時代も人気の高いものであり、また単色だけでもドラマティックな庭を作り上げることが可能です。

また、ひとつのカラーを使った庭の中には、メインカラーとして1色を選び、さらにトーンの異なる同色系カラーでまとめる方法もあり、こちらも印象深い庭となること間違いなしのカラーリング。

ひとつのカラーに魅せられた方や、グラデーションカラーを使って、美しい調和を描いた庭を目指したい方にぴったりなひとつの色をメインとしたガーデン。

またはたくさんの色を入れ過ぎて、庭の印象が雑然としてしまった方、あるいは庭づくり初心者さんにもおすすめです。

ロマンティックなホワイトガーデン

数ある色の中でも、特に白い花の魅力のとりこになってしまった方も多くいらっしゃるかと思います。その清楚な雰囲気と、静けさを庭にもたらすホワイトカラーの花でまとめた庭、ホワイトガーデン。

葉のグリーンカラーとの相性も抜群であり、白い花の種類も多いために単色のみでまとめた庭づくりの中でも、チャレンジしやすいとも言えるでしょう。

写真はシシングハースト・ガーデンの中でも、特に人気の高いホワイトガーデン。こちらから学ぶポイントは、花の高低差を生かす、またフォルムに個性を出すことと言えます。

白い花の中から庭に迎える花を選ぶときは、花の高さ、そして咲く花のかたちによく注意を払ってみましょう。

そして一度に開花してしまうと残りの季節が淋しくなってしまうため、季節によって咲く時期が異なる白い花も植えるのがポイント。

さらに庭のフォーカルポイントとも言える場所には、華やかで大胆なかたちの花や、たくさんの花が咲くタイプのものを。そしてリピートして咲いてくれる、または花期が長い花を選ぶのがおすすめです。

あざやかなカラーを使った、単色のガーデン

ひとつのカラーをメインとして花を選ぶ庭づくりですが、ホワイトカラー以外にももちろん他の色を主役とするのも素敵です。

たとえば下でご紹介している写真は同じくシシングハースト・カースル・ガーデンですが、こちらはパープルをメインとしています。

花のフォルム、高さが異なる種類をバランスよく植えて、浮きたつような華やかさが特徴的な庭となっています。庭にエレガントさや、ゴージャスな雰囲気を求める方には、ぴったりなカラーリングと言えるでしょう。

あざやかなカラーを単色で使って庭を統一するときは、まずメインとなる色を決め、次にグラデーションカラーの花を選びます。濃いトーンの花をアクセントとして植栽すると、庭のトータルバランスはとても美しいものに。

ただし選んだ色彩のインパクトが強い場合、ガーデンの大きさによっては、庭全体をそのカラーで単色にまとめると、少々圧迫感を感じることも。

あざやかな印象のカラーを単色で使い、色彩が強すぎると感じた場合には、庭をエリアごとに分け、ひとつの場所でその色を使うことがおすすめです。

グリーンとのバランスを考慮して

あざやかなカラーをメインとし、単色で庭をつくり上げる場合には、その色の発する力はかなりパワフルなものとなります。

そんな時にはグリーンの力を借りましょう。上下の写真は、スコットランドのポートモア・ガーデンズのロングウォークにつくられた、赤をメインとしたエリアです。

植えられているインパクトの強い赤い花の量は、全体で見るとあまり多くはありませんが、グリーンとのコントラストが素晴らしく、この対比が赤い色が持つ力強さを、際立たせているカラーリングとなっています。

まるで自然界の神様が、花の美しさを印象づけるために作ったかのような、葉が持つみずみずしいグリーンカラー。

このグリーンを上手く利用すれば、あざやかなカラーを使った単色の庭も、驚くようなセンスを感じさせる庭づくりが可能です。

選んだメインカラーの色が濃く、また、一緒に植える花の中に、そのグラデーションカラーを使わない場合には、引きのデザインを考え、できるだけ植える量は控えめに。
グリーンとのコンビネーションを考慮しつつ植栽すると、美しい調和がとれた庭となるでしょう。

いろいろなカラーをミックスした庭づくり

ガーデナーの方にとって興味を惹かれる花の種類は数多く、出来れば色々な花を育ててみたいと思うのではないでしょうか。

花の色彩もまた、さまざまなカラーに挑戦してみたいと思うはず。でも世界で一番大好きな自分の庭だから、やっぱり色の調和も美しいものであって欲しい。

ここではいろいろなカラーをミックスしても、バランスの取れた庭にするにはどうすれば良いのか、イングリッシュガーデンの実例写真をもとにご紹介します。

気持ちが明るくなれるホットカラー

イギリスではカラーリングのひとつのジャンルとも言えるのが、ホットカラーを使ったガーデンです。

上の写真はシシングハースト・カースル・ガーデンのもの、下の写真はスコットランドのフロアーズ・カースルのホットカラー・ガーデンになります。

あまり天候に恵まれない英国では、日差しの強い国に大きな憧れがあります。それ故に、気候の良い、暖かな国を連想させるようなホットな色彩を持つ花を選び、庭も気持ちも明るくなれるようにと願って植えているのかもしれません。

ホットカラーで使われる花は黄色・赤・オレンジをメインとした花々。これらの色を持つ花を、どの種類もある程度まとまって植えると、パッと目を引く色あざやかな、インパクトの強いガーデンが完成します。

また、ホットカラーで使われる花の種類の中には、個性的なかたちをした花が多いので、それらを組み合わせると、ひと味違う、オリジナリティを感じさせるガーデンをつくることが出来るでしょう。

淡い色の花を植えて、フェミニンなガーデンを

優しげで儚いイメージを持つ、淡い色彩の花々は、見ているだけで心を癒してくれるもの。

フェミニンなムードを持っている花は、そのフォルムも穏やかなものが多く、また、多くの種類があるので、たくさんのチョイスから好みのものを探す楽しみもありますよね。

そんな優しいカラーの花々のファンの方は、庭は淡い色合いの花でまとめたい、と思うのではないでしょうか。

ここでご紹介する繊細な色調のカラーを使ったイングリッシュガーデンから、色の組み合わせのヒントをもらってみましょう。

上の写真はフロアーズ・カースルのボーダーガーデンになります。

ピンクやクリーム色の花を中心に、紫や黄色といった色に、ほんのりホワイトカラーを足した淡い色を持つ花々を組み合わせており、ソフトなトーンのカラーリングがとても柔らかな印象を与えています。

淡い色を使った庭は、花の持つ色の印象が優しいものとなるので、樹木や低木など、大きめサイズのものを植えてもガーデンに圧迫感を感じさせないところが大きなポイントとなります。

色のトーンが優しい庭では、アクセントを入れて引きしめる

上の写真はスコットランドのアボッツフォード・ハウスのガーデンです。こちらも優し気なピンクと紫、そしてイエローカラーがほどよくミックスされ、ナチュラルな雰囲気に満ちあふれています。

女性らしい穏やかな雰囲気の庭をつくり上げることが出来る淡いカラーですが、注意したい点は植栽法や庭の大きさによっては、そのほのかな色彩のためにガーデン全体の印象がぼやけてしまうこと。

そんな時はアクセントとして少し濃いトーンの花を使うと良いでしょう。あるいはアボッツフォード・ハウスのガーデンのように庭にアーチを設置したり、オベリスクなどを置いて、高低差を出し、庭にメリハリを利かせるのもおすすめです。

このように、淡いカラーを使って庭がぼんやりとしたイメージになるのを避けるには、アクセントとなるものを取り入れること。キーポイントとなるアイテムやカラーを入れると、庭に引きしまった印象を与えてくれるでしょう。

イングリッシュガーデンから、カラーリングのヒントをもらおう!

イングリッシュガーデンに滞在すると、どの庭園でもその美しい植栽とカラーリングに驚かされます。

トータルバランスを意識してバランス良く植えられた花々は、その庭の中でお互いの個性を尊重し合いながら、誇らしげに咲き誇っているのです。

広大な土地を持つマナーハウスなどのイングリッシュガーデンと、個人の庭の規模はもちろん異なりますが、ガーデニングを愛する気持ちに違いはないはず。そしてカラーリングのテクニックは、どのようなサイズの庭でも生かすことが出来るのです。


今回は実際のイングリッシュガーデンから、単色を使った庭づくりや、あざやかな色、淡いカラーをメインとしたカラーリングのヒントをご紹介しました。

次回はカラフルな花を使う場合や、アクセントカラーの取り入れ方、バックグラウンドについてご紹介します。

自宅の庭の色づかいに悩むことがあったら、イングリッシュガーデンのカラーリングを参考に、ガーデンを美しく彩ってくださいね。