イングリッシュガーデンから学ぶ、基本のテクニック ~ カラーリング編 Vol.2 ~

庭の花壇に迎える花を選ぶのは、ガーデナーにとって至福のひと時。でも花にはたくさんのカラーがあって、どの色を組み合わせたらバランスの良い庭になるのか、悩むこともありますよね。ガーデニングの必須科目であるカラーリング、イングリッシュガーデンの実例写真から、そのヒントをご紹介します。

カラフルな色をミックスさせたガーデンづくり

パッと目に入るあざやかな色彩、見ているだけで落ち込んだ日も元気になれるカラー。さまざまな色が楽しめることもあって、カラフルな色をミックスさせたガーデンはいつも人気です。

そんなカラフルな花々で花壇をつくる場合の最大の悩みは、どうしたらごちゃごちゃとした印象にならないよう植栽すればいいのか、ということではないでしょうか。

カラフルな色は視線を奪わずにはいられないパワーがありますが、庭の中でミックスさせると、色同士がぶつかり合ってしまうことも。

ここではイングリッシュガーデンの写真から、カラフルな色合いの花々を、上手に組み合わせるポイントについてご紹介します。

こちらの写真はハンプトンコート・パレス内にある、キッチンガーデンの周囲を取り囲んだ花壇です。
あざやかなカラーを持つ花を多く使っているのに、見ための印象はうるさくなく、スッキリとしています。

これは植えた場所に、適度なスペースがあることがポイントとなります。そのためにカラフルな色を多く使っても雑然とは見えません。

また、バラエティに富んだカラフルな花々を用いていますが、ひとつひとつの種類の量は、それほど多く植えられていないのが分かります。

このように、華やかな色彩の花が好きな方は、植物を植える際にはぎっしりとつめ込んで植えずに、ある程度の空間を確保するよう、植えていくのがおすすめです。

また、自分の庭の大きさをよく考慮し、カラフルな色彩を持つ花は、花壇のサイズに対して多すぎない分量となるようにしてみましょう。

もし庭や花壇の大きさによって、一定の空間を取ることが出来ない、という方は、花の色彩があまり強くないものを選ぶようにするのがおすすめ。

また、植木鉢をところどころに置く、棚やオベリスクなどを用いて高低差を出すなど、視線の行き場所を1か所に集中させないように注意してみましょう。

アクセントカラーを取り入れる

優れたカラーリングのセンスを持つ人は、アクセントカラーの使い方がとても上手です。ハッとする目立つカラーを、完璧な割合で、そして的確な場所に使う。

言葉にするととてもシンプルですが、実際に使いこなすのは高度なテクニックが必要となります。

インテリアやファッションの分野でも、人の視線を集めずにはいられないのは、このアクセントカラーを見事なバランスで使いこなしている人たちのはず。

もちろんそれは、ガーデンにおいても同じことになります。ここでは庭の中でアクセントカラーをどう使えばいいのか、実際のイングリッシュガーデンをもとにご紹介します。

同色系の濃淡を生かして、アクセントカラーに

非常にインパクトがあり、ガーデンの中に取り入れると全体のバランスが美しくまとまるのが、同色系の花々を選び、アクセントとして濃淡の異なるカラーを使う方法です。

たとえば上の写真はスコットランドのポートモア・ガーデンズのボーダーガーデンになります。赤~紫のカラーでまとめたボーダーの中に、ひと際目立つ赤いカラーの花を入れ、アクセントにしています。

こちらのポートモア・ガーデンズを見ても分かるように、美しいバランスにするためには、ベースとなるトーンをおさえた色彩の花はある程度のボリュームが出るように。そしてその中に、濃いカラーの色をアクセントとして少量、植えるのがおすすめです。

そしてベースカラーとなる淡い色合いの花のフォルムは花びらが小さめ、あるいは華奢で可憐なタイプを選び、アクセントに選ぶ花のかたちは大胆、あるいは個性的なものを選ぶと与えるインパクトは大きなものとなります。

異なる色彩の花をアクセントに使う

こちらはシシングハースト・カースル・ガーデンにある、赤~紫という華やかな色彩を持つ花の中に、静寂なイメージの青を取り入れたエリアです。
異なる色をミックスさせてメリハリの利かせ、ガーデンにあざやかな印象を与えてくれています。

このように、ガーデンの中でベースカラーの花の中に、違う色調の花をアクセントカラーにする場合は、花を植える場所に要注意。これを間違えると、アクセントとなる花の色と、ベースカラーの花々が喧嘩してしまうこともありえます。

アクセントカラーの花を、ベースカラーの花々が咲いているエリアの中央や、あるいはあちこちに散らばせてしまうと、少々乱雑な雰囲気になりがちです。

異なるカラーの花をアクセントに使う場合は、シシングハースト・カースル・ガーデンのように、ガーデンの後方など、控えめな印象を与える場所に植えるのがおすすめ。

また、アクセントカラーとする花のかたちは、可愛らしくフェミニンなものの方が、庭の印象をやわらげてくれるでしょう。

リーフを取り入れ、花をさらに際立たせる

庭や花壇のカラーリングを考えるとき、最初に思い浮かぶのは花の存在ですが、その花をさらに引き立ててくれるリーフも忘れてはなりません。

リーフは大きさやフォルム、カラーまでさまざまな種類があり、庭のどこに植えるかによって、ガーデンの大きく印象を変えてくれるもの。また、花の咲かない時期でも庭をみずみずしく見せてくれる力を持っています。

イングリッシュガーデンでも花だけを植栽している、というガーデンはなく、リーフと花とのコンビネーションが美しい庭を造っているのです。

一般公開されているイングリッシュガーデンは、マナーハウスなどの大きな敷地の中に造られていることもあり、普通の家とはサイズが大きく異なります。

そのためイングリッシュガーデンで使われているリーフはサイズが大きく、インパクトもあるものが多いのですが、普通の庭には似合わない場合もありますよね。

リーフと花を組み合わせる場合には、まず庭の中で、リーフにどれぐらいのスペースを取ることができるのかを明確にしておくことが大切です。

大きさが分かったら、リーフを植える周囲の花のフォルムをよく考慮して、その花と美しく調和がとれるものを選びましょう。

リーフの選び方は、庭をどのような雰囲気にしたいかで変わってきます。淡い印象をもたらすフェミニンなムードを大切にしている方は、葉先の柔らかなフォルムのもの、背丈が周囲の花とつり合いのとれるものを。

ダイナミックな景観や、花壇に奥行きを出したいと思う方は、周囲の花よりも背の高いものや、葉のかたちがシャープなものを選ぶと、庭にインパクトを与えてくれます。

また、リーフは花を美しく演出してくれるので、花壇の後方に植えて花の存在をさらに際立たせるように使うのもおすすめです。

花のバックグラウンドを意識した庭づくり


花を選ぶ際の必須科目とも言えるカラーリングですが、それにプラスして重要なポイントとなるのが、植えた植物のバックグラウンドのカラーです。

ナチュラルな花の色合いはどれも美しいものですが、背後のカラーと合わない場合や、あるいは保護色となって目立たない場合などがあるので注意が必要です。

自分で選んだ花がさらに輝く庭づくりのためにも、バックグラウンドのカラーを意識して花を植えるように心がけましょう。

白いバックグラウンドに要注意


花の後ろにあるものと言えば、家の壁、あるいは庭の周囲を取り囲む塀になるでしょう。これから新築の家を建てる、あるいは塗装が可能など、家の壁や塀を好きなカラーにできる方はきっと少数派。

実際には、すでに建てられている家の壁や塀といったバックグラウンドの色彩と、花の色との相性を考えなくてはならないガーデナーさんの方が多いのではないでしょうか。


特に家の壁の色は白い色を使っているケースが多く、白い壁の前に白い花を植えると保護色で目立たなくなってしまうのでご注意を。

バックグラウンドが白い場合には、華やかな、パッと目立つ明るい色彩を持つ花を合わせるのがおすすめです。白い壁をバックに、花の持つあざやかなカラーが、いきいきとしたコントラストを描いてくれますよ。

背景が白い壁でも、白い花を植えたい場合は?

ホワイトカラーを持つ花は、他のどの色の花とも合わせやすく、また種類も多いために選ぶ楽しみもありますよね。そして白い花には繊細なイメージがあり、ファンの方も多いはず。

そして白いバックグラウンドにも大きな利点が。たとえば庭が周囲の環境によって少し暗く感じる場合でも、白い壁や柵を配置すれば、その場をパッと明るくしてくれるパワーを持っています。

自宅の庭のバックグラウンドは白だから、ホワイトカラーの花は植えない方がいいの?と心配されている方でも、コツさえつかめば問題ありません。

ポイントは、背景の白と、ホワイトカラーの花の色がぶつからないように植える場所を決めること。

ホワイトカラーの花を花壇の後方、つまり白い壁のすぐ前には植えずに、花壇の前方に植え、背後に違うカラーの花を植えてみるのがおすすめです。

もし白い壁のすぐ手前にホワイトカラーの花を植えたい場合には、葉がどのように生えているか、吟味してから選びましょう。葉が持つグリーンの色彩は、白い花を生かしてくれる最強カラー。

ホワイトカラーの花であっても、葉が花の周囲、あるいは背後にあるタイプであれば、たとえバックグラウンドが白の場合でも、葉のグリーンが花の存在感を際立たせてくれるでしょう。

植物のバックグラウンドに適した色は?

多くのイングリッシュガーデンで見られるウォールド・ガーデン。庭の周囲を取り囲む壁が特徴ですが、その壁にはレンガ、または石を使っており、これらの素材は植物の色彩が映えるカラーとなります。

しかしもともとの家のつくりがそうでない限り、これからレンガや石をバックグラウンドとするのはかなり難しい問題ですよね。

イングリッシュガーデンのように、レンガや石を使えないのだとしたら、花がさらに輝く背景にするには、どんなカラーを用いれば良いのでしょうか。


この上の写真はスコットランドのケールジー・ガーデンズのものになります。こちらのボーダーガーデンでは、背後の垣根に銅色をしたブナを使っているため、手前の植物をより美しく見せています。

これを見ても分かるように、植物のバックグラウンドとして映える色はブラウンです。家の壁を塗り替えるのは無理だとしても、これから塀や柵の色を変えたい、という方にブラウンはおすすめのカラー。

塀や柵など、背景の色を選ぶときは、ブラウン、もしくは落ち着いたダークな色彩にすると、きっと植物を色あざやかに見せてくれるはず。

ブラウンはもちろん土の色であり、花の持つその天然の色彩を目立たせるカラーとなり、また花期でない場合にも、リーフの持ついきいきとしたグリーンが、よりあざやかに生きる色となります。

また、ケールジー・ガーデンズと同じように、銅色系の垣根や植物を張り巡らせて、花壇のバックグラウンドにするのも素敵ですね。

カラーリングのコツを知って、美しい庭づくりをスタート

ガーデニングの最も楽しい時間と言えば、きっと花を選ぶときなのではないでしょうか。それぞれが異なる個性豊かな花のかたち、みずみずしい葉とのコンビネーション、自然が作り出した美しい色彩。

時間をかけてリサーチし、たくさんの種類の中から厳選した、自宅の庭に迎えた花が咲いたときこそ、ガーデナーにとって心躍る瞬間を言えるでしょう。

そしてカラーリングのテクニックは、どんなに熟練したガーデナーでも、花壇の寄せ植えのために花を選ぶとき、あるいは庭づくりのトータルバランスを考えたときに必要となるものです。

世界中から愛される庭を、長い年月をかけてつくり上げてきたイングリッシュガーデンから、カラーリングのヒントをもらって、ぜひ自宅のガーデンに役立ててくださいね。