イングリッシュガーデンから学ぶ、基本テクニック ~ おすすめの花 Vol.2 ~

ガーデナーにとっては自分の庭で花を楽しむのはもちろん、一般公開されているガーデンに滞在するのも心躍る体験です。そしてガーデン滞在はその庭の雰囲気を楽しむだけでなく、花選びにも大いに役立ってくれるのです。ここでは実際のイングリッシュ・ガーデンの実例からおすすめの花、そして植栽法のヒントをご紹介します。

ガーデン訪問は花選びのヒントがいっぱい!

花を選ぶ作業は庭づくりに欠かせないものですが、数ある庭仕事の中でもきっと一番楽しみなことですよね。そんな花のチョイスですが、ガーデナーの方たちは花を購入する際、どのように選んでいるのでしょう?

ガーデニングの雑誌やガイドブックから探してみる、あるいはいつもフォローしている大好きなブロガーさんの紹介したものをピックアップ。またはお気に入りのガーデンショップに出向いて決める……。

花を選ぶ方法はたくさんありますが、一番のおすすめはやはり実際のガーデンに行ってみて決めることではないでしょうか。花が成長するとどのような姿になるのか、他の花との相性はどんなものかが良く分かります。

一般公開されているガーデンに滞在すると、その大きさや華やかな景色に圧倒されてしまいがち。写真に撮る際も全体の構図を収めたり、庭の雰囲気を写すことに気を取られてしまうかもしれませんが、もしお気に入りの花を見つけたら、花そのもの、そしてその周囲を写真に収めておくことをおすすめします。

好みの花の高さ、横幅のボリューム、そして根元の付近も忘れずに記録として写真で残しておくと、花選びの際にとても役立ちます。

また花が植えられているエリアの環境も大切なポイントに。壁が周りにある日陰なのか、あるいは日差しをたっぷりと浴びることができるのか。

さらに隣の花はどのようなものが植えられているかも確認すると良いでしょう。カラーはどんなものが合うのか、隣の花との間隔はどれぐらいあれば良いのかが分かっていると、自宅に迎える花選びの作業はぐっと楽になります。

このように、実際のガーデンに滞在するほど参考になる場所はありません。でもなかなかガーデン滞在に行くことができない、という方のために、ここでは実際のイングリッシュガーデンから見つけた、おすすめの花をご紹介します。

他の花と組み合わせや植栽法、また完成されたガーデンの雰囲気とともに、自宅のガーデンの花選びの参考にしてくださいね。

1.アイリス

ギリシャ神話に出て来る虹の女神、イーリスがその名の由来となっているアイリス。アヤメ科アヤメ属の植物で、すっと伸びた凛々しい茎、シャープな形状の葉、そしてあでやかな花びらが特徴の植物です。

種類も豊富で花びらのかたちや花の色も、庭の雰囲気に合わせて選べることができ、イギリスでは初夏からガーデンを美しく彩る花として人気の高いものになります。

上の写真はイギリスはケント州にあるシシングハースト・カースル・ガーデンのものになりますが、こちらは潔さを感じさせるキリリとしたブルーのアイリスを、パープル~赤がメインカラーの花壇に植えています。

アイリスは同じアヤメ科のハナショウブやカキツバタにもよく似ていますので、どこか和の印象を与えがちですが、イングリッシュガーデンに咲いているアイリスを見ると、その華やかな雰囲気はヨーロッパテイストのガーデンにぴったりです。

アイリスの花は5月ごろからその美しい姿を見せてくれます。それはイギリスのガーデンの花が真っ盛りとなる6月、シーズン本番の直前となります。まさにこれから始まる花々の最盛期を告げる役目も担っている雰囲気ですね。

上の写真はハンプトンコート・パレスにあるボーダー・ガーデンになります。黄色と紫の個性的なコンビネーションを描いたアイリスですが、グリーンとの相性もぴったりで、まだ周囲の花が咲ききらないときでも庭を明るくしてくれる植物です。

アイリスはそのユニークな花びらのかたちや、真っ直ぐに伸びた茎とのコントラストで庭の中では目立ちやすい植物ですが、他の花の引き立て役として植えたいのであれば、薄く淡い色調の花を選ぶのがおすすめ。

上の写真はハンプトンコート・パレスにあるキッチン・ガーデンの周囲を取り囲んだ花壇になりますが、アイリスは白と水色の可憐な印象のものを選び、周りにあざやかでカラフルな花を植えています。

これはアイリスの可憐さが良く引き立ち、さらに周りの花を際立たせてくれる方法です。気持ちを明るくさせてくれるような、多くの色彩をガーデンに入れたい方におすすめの植栽法となります。

2.ポピー

するりと伸びた茎のトップに、淡く薄い花びらを持つポピーはケシ科の植物です。特に数多くの品種を持つヒナゲシは一年草ではありますが、花が咲き終わったあとに切り戻しをすると次々に花を咲かし、さらにたくさんの種を収穫できます。

ポピーは花びらの色も大きさもさまざまなものがあり、儚げで風に吹かれて揺れ動く姿はなんともロマンティック。しかしそのたおやかな花びらは風によって散りやすく、また茎も倒れやすいので注意が必要です。

上の写真はシシングハースト・カースル・ガーデンのものですが、白の花びらの大きなタイプをまとめて植栽しています。淡く優し気な雰囲気を持っているのが特徴のケシ科の植物を、このように一か所にまとめて植えると印象は強くなるので、個性を発揮してくれる植栽法と言えるでしょう。

そのやわらかで繊細な姿からは想像しにくいのですが、実はポピーはなかなか丈夫な植物。たくさんの種を付けるために、イギリスでは植えた記憶もないのにポピーが咲いていることも多いのです。

下手をすると雑草扱いされることもあるポピーですが、色とフォルムを注意深く選んでみると、ガーデンの素敵なアクセントとして大活躍してくれます。

上の写真はスコットランドのボーダーズエリアに位置するポートモア・ガーデンズのボーダーガーデンですが、ここでは赤いポピーがとても効果的に植えられていました。

ポピーは種類によって1メートルほどの高さになるものもあるのですが、その高さと主張の強い色彩を生かし、赤をメインカラーとしたガーデンの中にポイントごとに植えられ、なんともドラマティックな景観を生み出していました。

上の写真も同じくポートモア・ガーデンズになりますが、こちらはポタジェ、いわゆるキッチンガーデンの周囲を囲む花壇の写真です。

ここでは紫色のエレガントなポピーが、あざやかな赤いダリアと美しいグラデーションを描き、フロントに植えられた背丈の低い花と見事なコントラストを生み出しています。

このようにポピーは色や植栽法、また花びらの大きさやフォルムなどによって、与える印象が大きく変わってきます。

庭を優しい印象にしたい場合は小さな花びらと淡い色彩のものを選んでみましょう。小さめのポピーでしたら、まとめて植えても印象は派手過ぎず、ナチュラルなガーデンにもぴったりです。

また、ガーデンの中でインパクトのあるアクセントにするなら強いカラーで大きめの花びらを持つ種類を選ぶのがおすすめ。ポイントごとに植えると、庭の中でよりポピーの存在が際立ってくれるでしょう。

3.アスチルベ

みずみずしく茂る葉の形状、すっと伸びる茎の先にはふわふわとした愛らしい花をつけているのがアスチルベです。

とても可憐で柔らかなイメージを持つこの植物は、スコットランドのガーデンで多く見かけたものになります。アスチルベはピンク、赤、白、紫などのカラーがあり、色彩によってガーデンの雰囲気が変わります。

降水量が多く、また天候があまり良くないスコットランドでも美しい花を咲かせてくれるアスチルベ。日本では半日陰やシェードガーデンに向いていると言われ、色鮮やかなアスチルベはガーデン内のちょっぴり淋しい日陰のエリアでも、華やかさに満ちた場所にしてくれるでしょう。

上の写真はスコットランドのメルローズにあるハーモニー・ガーデンズで咲いていたアスチルベです。淡いピンク色がナチュラルさあふれるガーデンにぴったり似合っていました。

あざやかなピンク色をした花は多くありますが、ふわふわとした花を咲かせ、綿菓子のような甘く儚げな雰囲気はアスチルベならではと感じます。

自宅のガーデンをやわらかくフェミニン、そしてナチュラルな雰囲気にしたい方にはぴったりなカラーと言えるでしょう。

また、アスチルベの魅力は色によって雰囲気が大きく変わり、組み合わせる花によっても庭の印象がぐんと異なるところです。

上の写真はスコットランドのポートモア・ガーデンズにあるロングボーダーにある花壇になりますが、このエリアは赤とグリーンのコンビネーションが美しいエレガントなカラーリングでまとめています。

やわらかい雰囲気が特徴のアスチルベも赤い色を選び、そこへ濃いトーンのグラデーションカラーと合わせると大人っぽいシックな印象に。

このようにさまざまなシーンを演出してくれるアスチルベは、ガーデンの心強い名脇役としてきっと活躍してくれるおすすめの花となります。

イングリッシュガーデンから、お気に入りの花を見つけよう

ガーデン訪問は観光として楽しむことだけでなく、ガーデナーにとってはたくさん勉強できる場所でもあります。庭のレイアウトやエクステリアの使い方、カラーリングのテクニックなど、本やネット上からの知識だけでは気付かなかった点を知ることができる場所。

もちろんそれは花選びにも同じことが言えます。一般公開されているガーデンの規模はもちろん個人の庭と比べることは難しい大きさですが、植えてある植物は決して特別なものばかりではなく、すぐに手に入れることができる、身近な花がたくさん咲いています。

今まではあまり好みではなかった色やかたちを持つ花を、ガーデンで実際咲いているのを見ると、また違った印象を持つことも。さらには成長した際の高さやボリューム、他の花との相性まで確認することができるのです。

公開されているガーデンは、その持ち主の方の好みやセンス、ガーデナーたちの努力の結晶を堪能できる場所でもありますが、ぜひ自身の庭に新たな花を迎える絶好の機会としても活用してみてはいかがでしょうか。