イングリッシュガーデンを巡る旅 ~ サラ・レイヴンの庭 パーチ・ヒル Vol.2 ~

あざやかなカラーリングと大胆な植栽で、多くのガーデニング・ファンを持つイギリスのセレブリティ・ガーデナー、サラ・レイヴン。古びた農場を蘇らせた彼女のガーデン、パーチ・ヒルにはガーデニングのたくさんのヒントと喜びであふれています。今回はパーチ・ヒルのご紹介と、サラ・レイヴンの植栽テクニックをレポートします!

サラ・レイヴンの魅力を堪能できる庭、パーチ・ヒル

イギリスのセレブリティ・ガーデナーであり、オンライン・ガーデンショップ「sarah raven」のオーナーでもあるサラ・レイヴンのガーデン、パーチ・ヒルでは、彼女のお店で販売している植物が実際にこの場所で育てられています。

彼女のお店で苗や種を購入すると、毎シーズンとても素敵なカタログが届くのですが、その中で見かけた植物たちが、彼女の素晴らしい植栽やカラーリングで、あるいは個性豊かにアレンジされた姿を実際に見ることができたのは、とても大きな感動でした。

決められた日数しか一般公開されないパーチ・ヒルは、サラ・レイヴンのガーデニングの才能を身近で感じることができる場所。今回はVol.1 から引き続き、パーチ・ヒルの各エリアと彼女の植栽、カラーリングの魅力についてお届けします。

ザ・スロープ

トライアル・ガーデン、そしてダリア・ガーデンを通り過ぎると、「ザ・スロープ」と呼ばれる場所にたどり着きます。スロープ=傾斜を意味するとおり、ここは地面が温室前から通りにかけて、低く流れるような形状となっています。

あまりガーデンには向かないような難しい立地を用いて、ここではハーブや野菜が多く育てられていました。サラ・レイヴンはこのパーチ・ヒルでスクールを開催しており、ここで育った野菜たちはクッキングコースで使われているそうです。

みずみずしいハーブや野菜だけでなく、キッチンガーデンらしく花も一緒に植栽されています。ここでもサラ・レイヴンの特徴である、あざやかなカラーリングが目を惹きます。

「ザ・スロープ」のエリアは実際に歩いてみると道は狭く、傾斜もかなりキツく感じられるのですが、そんな条件をクリアしてとても魅力的なポタジェに仕上げていました。

ローズ&ハーブ・ガーデン

納屋の前方に造られたエリアが、ローズ&ハーブ・ガーデンです。
ここの面積はダリア・ガーデンやザ・スロープよりも大きいのですが、敷石を利用しシッティングエリアを設けたり、段差のある形状を活かして内部を細かくセクションごとに分けています。

ローズ&ハーブ・ガーデンはバラをメインとした庭づくりを考えている人にとっては、とても参考になる点が多いエリア。バラと他の花との組み合わせや、ハーブの植栽など、どれも見る人の視線を奪わずにいられない魅力にあふれています。

サラ・レイヴンのオンラインショップでは、バラの品種も数多く取り揃えているのですが、このローズ&ハーブ・ガーデンではそれらをふんだんに使い、とてもロマンティックな雰囲気に仕上げています。

くすんだレンガの小道と、ピンクやモーヴといったカラーのバラのフェミニンな印象、そしてエリゲロンなど高低差のある花を合わせてドラマティックなシーンを造り上げていました。

このエリアには幾つかのシッティングエリアがあるのですが、上の写真のようにベンチを高く作られた場所に配置していた個所があり、とても新鮮な風景に感じられました。

写真を見てもお分かりになるように、このエリアは敷石やレンガが敷き詰められている場所が大きく、植栽にあてられた面積はそこまで大きくはありません。

けれどここではインパクトのある植栽とカラーリング、そして個性豊かな寄せ植えをした大小さまざまな植木鉢を随所に置いて、植物で満ちあふれた印象に仕上げています。ガーデンがそこまで大きくないと悩んでいる方にも、参考にしたいポイントがいっぱい見つかるセクションです。

サラ・レイヴンのカラーリングの魅力

サラ・レイヴンのガーデニングの中で、特色のひとつとして挙げられるのが、その華やかな色彩です。カラフルであざやかな色合いを組み合わせ、他ではあまり見られないシーンを造り上げる独創的なカラーマジック。

サラは普通ではちょっと思いつかない、あるいは組み合わせると、くどく感じてしまいそうな色を大胆にミックスさせて、個性あふれる新鮮な光景を造り上げるテクニックを持っています。

ひと目見た瞬間、「あ、サラ・レイヴンのカラーだ!」とすぐに感じられる、彼女ならではの個性と言えるでしょう。

もちろん、ただあざやかな色彩を組み合わせただけでなく、パーチ・ヒルで実際にそのカラーリングを見てみると、そこにはリーフとのバランス、高低差を考慮した植栽、周囲とのコントラストなどがきちんと考えられているのが分かります。

花壇にどの花を植えれば良いのか、どんなカラーリングでまとめれば良いのかというのは、ガーデナーの永遠の課題であるのかもしれません。

でもいつも、何だか同じようなテイストの色彩ばかり選んでしまい、花の品種は変わっても、どれも同じ印象になってしまう……なんてことはありませんか?

なかなか自分の好みのカラーリングを大胆に変えることは難しいかもしれませんが、挑戦してみなくては、どんな色が自分の庭に合うのか分からない事も。

サラ・レイヴンのように、発想を自由に広げ、新たな色の組み合わせに挑戦してみると、庭の中にまた違った景色が生まれ、自分の好みも大きく変わるかもしれません。

ちょっぴり自分の庭に変化が欲しいと思ったとき、今までの色彩の殻を破ってみたいと思ったときは、パーチ・ヒルのカラーリングはきっと良い刺激を与えてくれると思います。

サラ・レイヴンの植栽の魅力

パーチ・ヒルでは、サラ・レイヴンの個性あふれるカラーリング以外でも、植栽においても彼女の魅力がいっぱいあふれています。

上の写真はトライアル・ガーデンにある、小さな入り口へ通じる道のサイドなのですが、ここは短い小道であるにも関わらず、彼女のオリジナルな植栽でとても印象的な風景になっていました。

いま流行りのオーナメンタル・グラスを取り入れ、思い切り高低差を出し、かつあざやかな色彩でひと目見たら忘れられないほどインパクトのある植栽でした。奥行きのない花壇にも、取り入れることができるアイデアです。

世の中にはたくさんのガーデニングに関する本があり、そこにはレイアウトや植栽について、さまざまなセオリーが記述されています。たとえば花壇の植栽は、一番奥に背丈の高い植物を、そして徐々に低くなる品種を選び、一番手前には背丈の低い植物を植える、など。

しかしサラ・レイヴンの植栽を見ていると、植物が元気に育ってくれるのなら、どのように植えるかはガーデナーのセンスとアイデアしだい、すべてガーデナーの自由であるということに気づかされます。

自分の庭は他の誰のものでもない、自分だけの庭。たとえ1年目はあまり良いバランスで植えられなくても、庭は何年も、何十年もかけて自分らしさを出していく場所なのだから、色々なアイデアにトライすべきだと、パーチ・ヒルを見て理解できたように感じます。

サラ・レイヴンの寄せ植えの魅力

今まで述べたサラ・レイヴンのカラーリング、そして植栽の魅力をふたつ一緒に感じられるのが、パーチ・ヒルの随所に置かれた寄せ植えです。

パーチ・ヒルでは多くの寄せ植えを見ることができるのですが、大きさはさまざまでありながら、どれもが大胆で個性的、インパクトがあり見応え充分なものばかりでした。

パーチ・ヒルで見かけたものは、どの寄せ植えもハッとするような意外な組み合わせで、記憶に残るものばかり。あまり花壇が広くない庭やベランダ、パティオなどにもぴったりな寄せ植えをたくさん見ることができました。

植木鉢も小さなサイズのものから、普通の家庭ではちょっと購入は難しく感じる大きなもの、あるいはシャビーシックなバケツを利用したものまでさまざま。寄せ植えがこんなに楽しいものなのかと開眼させられた思いです。

サラ・レイヴンはパーチ・ヒルで、あるいはイギリス各地でスクールを開催し、その講師を務めています。コースにはさまざまな種類があり、フラワーアレンジメントやクッキング、カッティングガーデン、ベジタブルガーデンなど、たくさんのコースの中から選ぶことができます。

その中には寄せ植えのコースもあり、パーチ・ヒルで実際に彼女の寄せ植えを見て衝撃を受けたあとは、ぜひ一度、このコースに参加してみたい!と強く思わされました。

英国にお住まいの方や、あるいは旅行でイギリスに来られる方で、日程が合ったら彼女のコースに参加してみるのはいかがでしょうか。

きっと忘れられない思い出になると同時に、ガーデニングの大きなヒントになると思います。下記でサラ・レイヴンの公式サイトをご紹介しますので、興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。

パーチ・ヒルへ行ってみよう!

サラ・レイヴンと夫、アダム・ニコルソンがロンドンから移り住んだイースト・サセックスにあるパーチ・ヒル。そこはセレブリティ・ガーデナーであるサラの才能をたっぷりと感じられる場所でした。

パーチ・ヒルは広大な敷地の中に、いくつもの表情を持つエリアに分かれ、それぞれが自身の庭に取り入れることのできるアイデアとインスピレーションに満ちています。

今回ここでご紹介しきれなかったエリアも数多くあり、そして翌年はまたきっと違ったアイデアが盛り込まれ、風景は変わっているはず。

滞在された方はきっと、多くのガーデニングファンを持つサラ・レイヴンの魅力に感動させられるに違いありません。年に決められた日数しか一般公開されないパーチ・ヒルは、日程が合えばぜひ滞在して欲しいガーデンのひとつです。

サラ・レイヴンのガーデンではここ数年、ダリアが大きくフィーチャーされています。そのため、ダリアが咲く季節、そして他の花も一緒に楽しめる7月後半から8月末にかけてがおすすめの時期と言えるでしょう。

それからパーチ・ヒルはオープンする日が限られているため、当日は多くの来場者でとても混み合います。私が滞在したのは8月後半、ダリア真っ盛りのシーズンでしたが、これほど混んでいる庭園は初めてでした。できればオープンと同時に入園されることをおすすめします!

パーチ・ヒルへの行き方

パーチ・ヒルへ交通公共機関を利用して行く場合、最寄り駅は Etchingham 駅となります。ロンドンからは、キャノン・ストリート駅、もしくはチャリング・クロス駅から直通で約1時間20分前後かかります。

パーチ・ヒルまでは Etchingham 駅からタクシーでおよそ15分ほど。しかし駅にはタクシー乗り場はありませんので、往復の予約を必ずしておきましょう。

下記のウェブサイトの OPEN DAYS 情報のところで、Map & Direction と書かれた場所に、おすすめのタクシー会社の電話番号が出ていますので、参考にしてくださいね。

カップリングでおすすめ!King John's Nursery & Garden

パーチ・ヒルより約12キロほど離れた場所にある、キング・ジョンズ・ナーサリー&ガーデンはカップリングとしておすすめの場所です。

1650年代の屋敷と幾つかの魅力的なエリアに分かれた8エーカーある庭園、そして植物とガーデングッズを売っているショップ、そしてカフェが併設されています。


ショップはセンスの良いものが飾られて見ているだけでも楽しく、静かな時間を過ごせるガーデンやカフェでのんびりするのもおすすめです。

キング・ジョンズ・ナーサリー&ガーデンへの行き方

キング・ジョンズ・ナーサリー&ガーデンの最寄り駅はパーチ・ヒルと同じく、Etchingham 駅。こちらの方が駅に近く、距離は約3.3キロ、タクシーで10分弱で到着します。

キング・ジョンズ・ナーサリー&ガーデンはホテルも経営していますので、日程が合えば宿泊してゆっくりするのも良いですね。

営業時間の詳しい情報は下記のウェブサイトをご確認ください。また、宿泊希望の方は下記のウェブサイトにあるメールアドレスへ、もしくは電話で問い合わせしてみてくださいね。