イングリッシュガーデンを巡る旅~ケント地方おすすめのB&B Vol.1~

英国の庭とも呼ばれるケント地方。シシングハースト・カースル・ガーデンを始め、著名なガーデンも多いエリアですが、今回は取材で訪れた素敵なB&Bをご紹介します。ケント地方の旅行での参考にして下さいね。

本当のナチュラルガーデンって? その答えが分かるB&B、Pendana Beech House

イギリスでの宿泊先として、ベッド&ブレックファースト、略してB&Bと呼ばれる宿泊施設が有名なのはご承知のとおり。

住まいの中の空いているひと部屋を提供し、さらにブレックファーストを付けてくれる宿泊施設ですが、近年では住居内にあるコテッジなどを丸々借りる事の出来るタイプも増えています。

イギリス人の暮らしが垣間見えるB&Bも捨てがたいけれど、オーナーご家族と一緒のバスルームはちょっと苦手、と言う方や、気を遣う事なく、のんびりと心置きなく利用したいという方に、貸し切りタイプが人気を集めています。

今回ご紹介するケント地方に位置する『Pendana Beech House』 も貸し切りタイプのB&Bで、オーナーのケイティーさんとブライアンさんの住む敷地内に造られたロッジに宿泊する事が出来ます。

出迎えてくれたブライアンさんに聞いてびっくりしたのは、このロッジは全てオーナーであるケイティーさん、ブライアンさんのお二人が建てられたものだという事。

元々はガレージとして造られたものを、次にお子さんたちのプレイルームに改装し、お子さんたちが独立してからは、宿泊用に造り変えたのだとか。

さらに驚いたのは、造り上げたのはこのロッジだけでなく、ご家族で住む住居そのものも、ご自身たちで造ってしまったという事です。

センスあふれるB&Bの室内

まず、その日の宿泊施設であるロッジ内を案内して頂きました。

外観からは想像できないほど、広くて明るい室内に感動!

入ってすぐに目に入る、キッチン付きのリビング・ダイニングルームは、天窓から差し込む眩しい光が。

解放感にあふれ、清潔そのものと言ったキッチン、そして可愛らしいインテリアにテンションがアップします。

くつろぎのエリアにはソファがふたつ。このソファうち、ひとつがソファベッドとなり、こちらのロッジには計4人まで泊まる事が出来ます。

写真には写っていないのですが、室内にはTVもあり、wifi も使えて決して退屈する事はありません。

春や秋には肌寒いことも多いイギリスでは、室内に暖炉があるのも嬉しいポイントですよね。寒い日には暖炉で温まるのも素敵です。ちなみに薪は5ポンドで購入する事が出来ます。

宿泊した日はイギリスとしては珍しく(?)真夏のように暑い日だったので、逆に暖炉が使えなくて残念だったかも。

バスルームにも天窓があり、清潔感にあふれ、とても綺麗で明るいのが印象的。
バスタブはありませんが、快適なシャワーで汗を流す事が出来ます。

タオル、シャンプー、ドライヤーも常備。何故かボディシャンプーと石鹸がなかったので、携帯用のものを持ってくるのがおすすめです。

寝室はコージーでとっても居心地の良い雰囲気。ふかふかのお布団は暖かく、固めのマットレスと合わせて寝心地も抜群でした。

こちらのベッドルームにも天窓があり、眩しい時にはロールカーテンを閉める事が出来ます。

朝食にはこちらも手作りのパンとジャム。ジャムは庭で採れる西洋スモモの一種であるダムソンを使ったもので、パンも食べ応えのある優しい味わいです。

コーヒーや紅茶、ハーブティーなどもあり、好みに合わせてゆったりとした朝食が取れそうです。また、卵が欲しい方にはお二人の庭にいるチキンが産んだ、フレッシュな卵が半ダース1.20ポンドで購入できます。

このロッジのキッチンには、IHやコンロなどはないのですが、簡単な料理が出来るホットプレートの調理器具、電子レンジ、ケトルや、ポットやフライパン、お皿やカトラリーなど全て常備。

オーブンなどを使いたい場合には、お二人の住まいにあるキッチンを貸してくれるそうです。
周囲にあるレストランやスーパー等は車で行くしかないので、ロッジ内で料理する方は予め材料を買って来ておきましょう。

自然の力を生かした、環境に優しいポタジェとガーデン

ひと通り宿泊施設の説明が終わると、ブライアンさんが庭を案内してくれました。

まずロッジのお隣にある、お二人の住居です。これを本当に自分たちで建てられた!?と驚愕と感嘆の眼差しです!

元々の出身はアフリカ、ケニアの生まれというブライアンさんはこちらの宿泊施設の最寄りの駅のひとつでもあるWye 近辺にある、農業関係のカレッジを卒業。

この付近に住む友達が多かった事もあり、またケント地方をこよなく愛するブライアンさんと、ケンブリッジ出身の奥様であるケイティーさんは、この辺りに家が欲しかったそうですが、価格はとても高く、手が出せる値段ではなかったそう。

笑顔が素敵なブライアンさん。残念ながらこの日ケイティーさんは不在でお会い出来ませんでしたが、ブライアンさんがガーデンを案内してくれました。
(写真は許可を得て掲載しています)
「自分たちで家を建てたのは、お金がなかったからだよ」と明るく笑うブライアンさんでしたが、そうは言ってもこんな本格的な家を建てる事が出来るものなの!?と驚きを隠せませんでした。

ブライアンさん曰く、お二人に全く建築の知識はなく、何度も失敗を重ね、試行錯誤の末にここまで来たのだとか。

ちなみにこの土地に最初にあった建物は小屋のようなもので、あるのはふた部屋だけでトイレは外、水はパイプのみだったそうです。

何度も増築を重ね、35年という年月をかけてここまでたどり着いたそうで、確かに家をよく見ると、建て増しされているのが分かります。

ご自宅から後方へと広がる広い庭は、奥に向かってゆるやかな傾斜になっています。

庭の奥手に野菜と果物が植えられたポタジェがあるのですが、ちょうどポタジェの入り口とも言える部分、庭とポタジェを区切る壁のようになったエリアに、ふさふさと茂る植物がありました。

この植物、学名はPhragmites austrails、日本語ではヨシ、またはアシと呼ばれています。

葦、と言われると川辺に茂るあの植物か、と思い出す方も多いのではないでしょうか。実はこの植物、葦には自然浄化作用があり、汚れた水を綺麗にしてくれるのだとか。

実はブライアンさんご夫婦のご自宅と、宿泊施設のB&Bであるロッジの汚水は、庭の芝生の下に埋められたパイプを通り、この葦まで辿って浄化され、グリーンハウスまで流れているそうです。

聞けばこの近隣に住むブライアンさんご夫婦の友人たちも、30人ほどが同じように、葦を使って浄化作用を行っているそうです。

自然の力を最大限に利用した、エコロジカルなシステムです!

また、ポタジェ内には雨水を溜めるタンクがあり、こちらがポタジェ用の野菜や果物にあげる水として使うそうです。

コンポストは近くのマッシュルーム農場からもらって来た、使用済みのものを利用。マッシュルームを栽培した土は、野菜作りにとても良いのだそう。

ポタジェの奥にグリーンハウスがありますが、こちらも全て廃材を集めて自ら造り上げたもの。
内部の絵は今はアーティストとして活躍されているお子さんが描かれたそうです。

全ての資源を無駄なく使い、自然の恵みを利用する、まさに本物のナチュラルガーデンです。

円形のかたちをしたポタジェでは、たくさんの野菜と果物を栽培されていました。

取れたての野菜やフルーツ、きっと味は格別に違いありません!

ポタジェの奥には養蜂のための巣箱が。
「悪さはしないけど、近付かない方が良いかも」というブライアンさんのお言葉に従って、遠くから写真を撮りました。

こちらで収穫したものから造った、お二人の手作りの蜂蜜も、ブライアンさんとケイティーさんから直接購入する事が出来ます。

ポタジェの終わりからは森へ続いており、「うちの土地じゃないけど、好きに歩いて良いからね」と言うブライアンさんのお言葉に甘えさせて頂いて、森林浴へ。

ブルーベルの季節には、青い可憐な花が森の中一面に咲き乱れるのだそう。是非、またその季節に訪れたいと思いました。

木漏れ日が差し込み、心地の良い風が吹く森の中をゆっくり散歩して、マイナスイオンをいっぱい吸収する事が出来ました。

イギリスは春から秋にかけて陽が沈むまでにたっぷりと時間があり、のんびりとした夕焼けを楽しむ事が出来ます。

森の終わりにたどり着いた場所は、花が咲き乱れるメドウが。

どこまでも続く草原と、遠くに見える森が、心を穏やかにしてくれました。

イングリッシュガーデンを訪れるのが好きだと話すと、「僕らの家は決してガーデンに手をかけているわけじゃないから」と微笑むブライアンさんでしたが、本当の意味のナチュラルガーデンというものを教えてもらった気がしました。

また違う季節にも是非滞在したいと思わせてくれる、とっても素敵なB&B。リピート間違いなしの場所となりました。

ケント地方には、シシングハースト・カースル・ガーデンなど著名なイングリッシュ・ガーデンがたくさんありますが、ガーデニング愛好家の方が、イギリスのガーデンを訪れる際の宿泊先として、是非おすすめしたいB&Bです!

Pendana Beech House への行き方

最寄りの駅はWye またはAshfordになります。
ロンドンから電車で来るのであれば、Ashford 駅の方が近く、また電車も多くありますのでおすすめです。

ロンドンからは、ロンドン・セント・パンクラス駅からAshford 駅まで電車で約40分。
Ashford 駅にはタクシーも多く停まっているので、下記に明記した住所を運転手さんに見せてあげて下さい。

Ashford の駅からB&Bまでタクシーで、所要時間は約15分、料金は15~18ポンド前後です。
また、こちらのB&Bの付近はお店やレストランなどはないので、夕食の準備をお忘れなく。

出発の際には、宿から駅まではタクシーを呼んでもらうのが無難です。

Pendana Beech House の料金、予約方法

シングルもしくはツインの1泊1室の宿泊料金は78ポンド。こちらは2017年の料金となります。

こちらの宿では4名まで宿泊が可能なので、3~4名での宿泊を希望の場合にはブライアンさん、ケイティーさんに、料金を聞いて下さいね。

予約方法はメールで。宿泊したい日にちと日数、人数など、簡単な英語で訪ねてくれれば大丈夫!との事です。

メールで予約した場合、宿泊料金のお支払いは現地にて現金のみとなります。
クレジットカード払いを希望の方は、airbnb からでも予約が可能。ただしこちらからの予約の場合は、上記の宿泊料金の他に、手数料がかかるかたちになります。

Pendana Beech House 問い合わせ先

宿の名前・・・Pendana Beech House

問い合わせ先・・・Katy & Bryan

メールアドレス・・・kdewaal@gmail.com

住所・・・ Brook, TN25 5PN, United Kingdom

イギリスの庭、ケント地方の素敵なB&Bで、穏やかな時間を過ごしてみませんか?

どんな場所に滞在するのか、あるいは誰と一緒に旅をするかは、旅行の目的とも言えるものですが、どこに泊まるかも、その旅の印象を大きく変える重要事項のはず。

ホテルでの優雅な宿泊も魅力的ですが、このPendana Beech House は、イギリスで、本物のナチュラルガーデンを味わいたい方におすすめのB&Bです。

静かで優しい景色の中で、きっと素敵な時間を過ごす事が出来るに違いありません。