イングリッシュガーデンから学ぶ、基本テクニック ~ おすすめの花 Vol.3 ~

花を選ぶ時に重要なポイントとなるのは、その花の育つ環境が自身の庭に合っているかどうか。さらに気にして欲しいポイントは、その花の持つ特色です。花には他の花との相性が良いものや、個性豊かなタイプなど、どれもさまざまな個性を持っています。ここではそれぞれの役割をこなしてくれるおすすめの花を、イングリッシュガーデンの実例からご紹介します。

花の特色を知って、花選びに生かそう

花には本当にたくさんの種類があって、見た目から与える印象もそれぞれ異なります。自分の庭に植えたときに、他の花をよりいっそう美しく見せてくれたり、あるいはガーデンに強烈なインパクトを与えたり。

そんなたくさんの表情を持つ花を選ぶのは本当に楽しいこと。もちろん、購入前は育て方を確認したり、植えてからは日々のケアとたくさんの庭仕事が待っていますが、その前の作業である花選びはとことん時間をかけて、とっておきの花を見つけたいですよね。

今回はイングリッシュガーデンの実例の写真から、どの色の花にも合わせやすい品種や個性的な花、または主役級となるインパクトのあるおすすめの花をご紹介します。

自身の庭にまだスペースがある方や、今ある庭をもっと華やかに彩りたい方は、ぜひ花選びの際に参考にしてくださいね。

1.カンパニュラ・ラクティフローラ ロドンアンナ&プリチャード・バラエティ

スコットランドのガーデンで多く見かけたカンパニュラ・ラクティフローラの、ロドンアンナとプリチャード・バラエティ。プリチャード・バラエティは薄い紫色の花が咲き、ロドンアンナは淡いピンク色をした可憐な花となります。

カンパニュラはキキョウ科に属し、その名を聞くと多くのガーデナーの方は可愛らしい鈴のかたちをした品種を思い浮かべるのではないでしょうか。

フウリンソウという和名を持つベル型のカンパニュラは、カンパニュラ・メディウムやカンタベリー・ベルという名を持ち、ファンの方も多いはず。

そして今回ご紹介するカンパニュラ・ラクティフローラは背の高い茎の先端に、たくさんの可愛らしい星形の小さな花を咲かせる種類になります。

カンパニュラ・ラクティフローラの魅力は何と言ってもそのロマンティックな風情です。淡く優しい色彩が他の花との相性もぴったり。穂先に小さな花を多く咲かせる姿が庭にやわらかな印象を与えてくれるのです。

そのフェミニンで華やかな様子は、庭を女性らしい優雅なものに、あるいはナチュラルな雰囲気にまとめたい方におすすめの花となります。

上の写真はスコットランドのボーダーズエリアに位置するフロアーズ・カースルのガーデンになりますが、こちらはつる型のミニローズの下に植えて、上部のバラのあざやかさを引き立てる、とても美しい姿が印象的でした。

花の色彩が主張しすぎないので、濃いトーンのカラーの花と合わせると素晴らしい引き立て役となる花です。また、グラデーションカラーでカラーをまとめるのもおすすめの植栽法ですね。

またカンパニュラ・ラクティフローラの素晴らしいところは、その花の抑えた色調のためにグラデーションカラーの花だけでなく、他の色とも美しいコンビネーションを描いてくれるところです。

上の写真はスコットランドにあるケールジー・ガーデンズのものとなりますが、これを見ても黄色の花とも相性はバッチリ。優しい色合いで自身の個性も発揮しながら、他の花をより輝いて見せてくれる存在になるでしょう。

注意して頂きたい点は、背丈がとても高いこと。通常1メートルほどの高さから、1.8メートルほどまで成長することもあり、先端に花を咲かすためにその重さで倒れてしまうことも。

ボーダーガーデンの後方に植えるととても素敵なシーンを演出してくれる花ですが、倒れないように支柱やひもなど、支えを用意してあげてくださいね。

2.セリンセ・マヨール プルプレッセンス

個性的な花びらのかたち、エレガントなダークパープルの色彩で圧倒的な存在感を放っていた花がセリンセ・マヨール プルプレッセンスです。

ハンプトンコート・パレスのガーデンで初めてその花を見かけたときは、そのあでやかな姿にひと目惚れしてしまい、さっそく種を購入したのは言うまでもありません。

大きさは40センチから60センチぐらいと、庭に植えるのにぴったりな花であり、また蝶々やミツバチから好まれる花のため、ハニーワートという別名を持っています。

鈴のようなかたちの花びらがまとまって咲く姿は、中世の貴婦人の耳飾りのようにも見えてとてもエレガント。葉のかたちも個性的で、グリーンにシルバーが混じった光るような色合いです。

セリンセ・マヨールは人目を奪わずにはいられない個性ある姿ですが、濃い紫色のプルプレッセンスは花のカラーが落ち着いているせいもあって、どんな庭にも合わせやすいと言えるでしょう。

同じ紫や赤い花をグラデーションで揃え、薄いトーンの花を周囲に植えるとバランスの良い調和のとれたカラーリングになります。

単体で花そのものを楽しみたいときは、植木鉢を利用するのもおすすめ。また切り花としても楽しむことができる、ガーデナーにはたくさんの活用法がある花です。

このようにセリンセ・マヨールは単品で楽しんだり、花が目立つように白い花と合わせたり、背丈のある品種とミックスさせたりと、さまざまな植栽法を楽しめるので、ガーデナーのセンスを生かして庭に植えてみてはいかがでしょうか。

なお、こちらの花は一年草ですが種を毎年収穫できるために、一度種を購入し育てるのに成功すれば、その後は種を保存し、何度も植えることができると言われています。

庭に個性を出したい方や、新しい花をお探しの方、またはガーデンにエレガントな雰囲気を出したい方におすすめの花と言えるでしょう。

3.トリトマ

そのユニークな形状はガーデンのどこに咲いていてもパッと目につき、またひと目見たら忘れられないほどの強い印象を残す花がトリトマです。

現在ではクニフォフィア(シャグマユリ)属に分類されていますが、まだまだ旧名である「トリトマ」で呼ばれることが多い花です。イギリスでは「Red Hot Poker」、「赤く熱い火消し」というニックネームで親しまれています。

大きいトリトマはオオトリトマと呼ばれ、背丈は1.2メートルほどにもなり、小さいものはヒメトリトマと呼ばれており、こちらは80センチほどの小ぶりなサイズになります。

一般公開されているガーデンでは大きなサイズのものが植えられていることが多いのですが、普通の家庭のガーデンでも、庭にあざやかなメリハリを与えてくれるため、庭の後方に植えるのに適していると、大きめの品種が人気が高いようです。

庭に個性を出したいのなら、これほど向いている植物は他にあまりないほどのカラーと存在感で、周囲を薄いカラーや白などの花を植えると、いっそう迫力を増してくれるでしょう。

また非常に丈夫な花と言われており、耐寒性にも優れているので、天候のあまり良くないイギリスやスコットランドのガーデンで広く愛されているのが分かります。

ガーデンの後ろに植えると注目を集めてくれること間違いなしの花になりますが、中央に持ってくるのもおすすめです。その際は後方にもっと背丈のある植物を植えると、どちらの花も引きたつレイアウトとなるでしょう。

周囲に淡いカラーの花を用いてトリトマを主役にする植栽法もあれば、同じ色彩の植物と一緒に植える方法もあります。

イングリッシュガーデンで多く見られる、オレンジや黄色、赤い花などを集めて植えたホットガーデンでは、トリトマは個性を主張しつつも他の花とも良く馴染んでくれます。

もしトリトマを主役ではなく、他の花とバランスの良い存在として取り扱いたいのであれば、ホットガーデンのように似たカラーの中に植えるのがおすすめです。

また、大きさも手ごろなヒメトリトマでしたらガーデンで目立ちすぎることもなく、その一風変わった花のフォルムを楽しむことができるでしょう。

4.ペルシカリア ビストルタ

一見地味に見えることもあるけれど、一度目にすると忘れられない花があります。イングリッシュガーデンで目にした花で、まさにその存在であるのがペルシカリア ビストルタ。タデ科に属している植物です。

葉は先端がシュッと尖った形状になっており、笹の葉のようなかたちをしています。茎は細く、すっと伸びており、穂先に薄いピンク色のユニークな花を咲かせます。そのフォルムは猫じゃらしを連想させる素朴な風合い。

野草のような印象で、繊細な花の色を持っているのでどの色の花とも合わせやすく、またグリーンにも映える花となります。

上の写真はシシングハースト・カースル・ガーデン内にあるハーブガーデンのものになりますが、その野趣あふれた風情はハーブガーデンにはぴったりでした。

上の写真はハンプトンコート・パレスのガーデンのものになります。こちらは周囲に同じピンク系統の花を植えてグラデーションで色を楽しんでいました。

ペルシカリア ビストルタの大きさは40~50センチほどなので、花壇のフロントや小さめのガーデンにもピッタリの花となります。また、ペルシカリアには多くの品種があり、花の色によって印象が大きく変わります。

ペルシカリアの品種のひとつ、赤い花を持つブラックフィールドもおすすめ。ガーデン内のアクセントにしてみたり、ビストルタと一緒に植えてコントラストを楽しんでみるのも素敵です。庭をナチュラルな空間にしたい方に、ペルシカリアはぴったりの花と言えるでしょう。

花が作り出す雰囲気を意識してみよう

花を選ぶ必要性があるのはどんなときでしょうか?庭にちょっとしたスペースを見つけたから、咲き終わった一年草のあとに植える花を探している、あるいは庭全体をつくり変えたい……。

花を選ぶ理由はガーデナーによってさまざまですが、花にはガーデンの印象を大きく変える力、そしてそれぞれの特色を持っています。

メインの花を引き立ててくれたり、その花が庭の主役となったり、どの花とも相性の良い調和性に優れていたり。もし新しい花を迎える庭のイメージが明確であったら、どんな特性を持つ花を選べば良いのか、自然に分かって来るでしょう。

ガーデナーはいつも、自身の庭をもっと美しく彩りたいと思うはず。花を選ぶ際に花の特色をよく理解していれば、新しい花はきっと庭づくりの大きな助けになってくれるに違いありません。

たくさんの種類の中からひとつの花を選ぶのは大変なことでもありますが、花を愛するガーデナーだけの特権でもあります。そんな心躍る大切な作業の花選び。迷ったときにはイングリッシュガーデンから花選びのヒントをもらってくださいね。